中学受験の現場で保護者の方と懇談するとき、「お子さんは毎日塾でプレッシャーを感じて生活しています。お家ではほめて下さいね。」、とお話しすることがあります。また、「ほめることは、子供たちが前向きに取り組むエネルギーを生み出す大きな力です。」とも、申し上げます。すると10人中7~8人の方は「ほめてないですねぇー」「ほめるとこがなくて」とおっしゃいます。そこであるお話を一つ。小学生のご姉弟とお母様(仮にNさんとしましょう)のお話です。
『丁度今ぐらいの季節。暑い夏が終わり、過ごしやすくなり始めた頃、Nさんのお子さんの学校では「鉄棒」の季節がやってきます。毎年鉄棒カードなるものが配られ、日々練習をしてゴールを目指します。お姉さんは一つ一つクリアしていくことが大好き。今年も「あと一つ、連続空中逆上がりが5回できればクリアできるのになあ。」などと楽しそうに話されていたとのこと。ところが、横を見ると、いつもは話に入ってくる弟さんがだんまり。「ん?おかしいな~」ということで、わけを聞いてみると逆上がりができないことが判明。「ええ~!できないの?!」と驚かれたのでした。
弟さんは運動ができない方ではなく、どちらかと言えばそつなくこなすタイプ。けれど小学2年生のときに腕を骨折して以来、恐怖心が先行し鉄棒から逃げていたようです。そうはいっても鉄棒は練習しないとできないもの。一念発起、「じゃあ、明日から練習しよう!」というわけで弟さんの鉄棒訓練が開始されました。
Nさん曰く、「弟さんの逆上がりを見ていると注意したいことが山ほど。『手が伸びすぎ』『頭が後ろを向きすぎ』『踏み込みがあまい』等々……。」見るに見かねて「ちょっと!」と言おうと思った瞬間、お姉さんの 「惜しい! あと少しだよ。」の一声。喉元まで上がってきていたNさんの言葉は胸の中へ逆戻りしたということです。仕方が無いのでただ笑って見ていると、さっきまでやる気をなくしていた弟さんの表情が明るくなり始め、何度も何度も挑戦します。ずる~っと地面に足が付くことの繰り返しでしたが、そのたびのお姉さんの 一言!「惜しい」に後押しされて、頬を上気させながら練習を続けます。
結局弟さんの逆上がりが成功したのは練習開始から3日目。その間を支えたのはNさんの指導ではなく、お姉さんの「惜しい」だったのでした。Nさんはおっしゃいました。「もし、あの時たくさんの指導をしていたら、あの子のうれしい笑顔を見ることはできなかったかも」と。』
逆上がりの成功は、お姉さんの前向きな言葉とそれに支えられた弟さんの意欲によって初めてなされました。子供たちへの関わりの基本は「ほめること」から始まります。大切なことは、たくさんの「指導」よりもやる気を支えていく言葉かけです。「あごを引いて」なんていう「指導」は、どれほど適切な指示であろうとも無駄なもののようです。そんな「指導」より「惜しい」という一言の方が、はるかに子供たちの成長を助けます。
「ほめること」だけだと、不安になるのは保護者の方も講師も同じ。「指導」というものは教えることだと思いがちです。しかし、字から想像できるように、未来を指し示し導くことが「指導」であるとするならば、未来に羽ばたく芽を伸ばすことこそが「指導」の本質です。まず、「○○したい」という気持ちを引き出すこと。やる気があれば、その後伸びていくのは自然の摂理となります。
「ほめるとこがなくて」「ほめることが苦手」とおっしゃるお母さん。あなたの元にお子さんが初めて来た日を思い出してみましょう。なにものにも代え難い至福の時を迎えられたはずです。だからこそ、言えますよね。「今日も一日無事に終わりました。お疲れさま。偉いね。」「よーく一日頑張りました。明日も元気でね。」と。
『丁度今ぐらいの季節。暑い夏が終わり、過ごしやすくなり始めた頃、Nさんのお子さんの学校では「鉄棒」の季節がやってきます。毎年鉄棒カードなるものが配られ、日々練習をしてゴールを目指します。お姉さんは一つ一つクリアしていくことが大好き。今年も「あと一つ、連続空中逆上がりが5回できればクリアできるのになあ。」などと楽しそうに話されていたとのこと。ところが、横を見ると、いつもは話に入ってくる弟さんがだんまり。「ん?おかしいな~」ということで、わけを聞いてみると逆上がりができないことが判明。「ええ~!できないの?!」と驚かれたのでした。
弟さんは運動ができない方ではなく、どちらかと言えばそつなくこなすタイプ。けれど小学2年生のときに腕を骨折して以来、恐怖心が先行し鉄棒から逃げていたようです。そうはいっても鉄棒は練習しないとできないもの。一念発起、「じゃあ、明日から練習しよう!」というわけで弟さんの鉄棒訓練が開始されました。
Nさん曰く、「弟さんの逆上がりを見ていると注意したいことが山ほど。『手が伸びすぎ』『頭が後ろを向きすぎ』『踏み込みがあまい』等々……。」見るに見かねて「ちょっと!」と言おうと思った瞬間、お姉さんの 「惜しい! あと少しだよ。」の一声。喉元まで上がってきていたNさんの言葉は胸の中へ逆戻りしたということです。仕方が無いのでただ笑って見ていると、さっきまでやる気をなくしていた弟さんの表情が明るくなり始め、何度も何度も挑戦します。ずる~っと地面に足が付くことの繰り返しでしたが、そのたびのお姉さんの 一言!「惜しい」に後押しされて、頬を上気させながら練習を続けます。
結局弟さんの逆上がりが成功したのは練習開始から3日目。その間を支えたのはNさんの指導ではなく、お姉さんの「惜しい」だったのでした。Nさんはおっしゃいました。「もし、あの時たくさんの指導をしていたら、あの子のうれしい笑顔を見ることはできなかったかも」と。』
逆上がりの成功は、お姉さんの前向きな言葉とそれに支えられた弟さんの意欲によって初めてなされました。子供たちへの関わりの基本は「ほめること」から始まります。大切なことは、たくさんの「指導」よりもやる気を支えていく言葉かけです。「あごを引いて」なんていう「指導」は、どれほど適切な指示であろうとも無駄なもののようです。そんな「指導」より「惜しい」という一言の方が、はるかに子供たちの成長を助けます。
「ほめること」だけだと、不安になるのは保護者の方も講師も同じ。「指導」というものは教えることだと思いがちです。しかし、字から想像できるように、未来を指し示し導くことが「指導」であるとするならば、未来に羽ばたく芽を伸ばすことこそが「指導」の本質です。まず、「○○したい」という気持ちを引き出すこと。やる気があれば、その後伸びていくのは自然の摂理となります。
「ほめるとこがなくて」「ほめることが苦手」とおっしゃるお母さん。あなたの元にお子さんが初めて来た日を思い出してみましょう。なにものにも代え難い至福の時を迎えられたはずです。だからこそ、言えますよね。「今日も一日無事に終わりました。お疲れさま。偉いね。」「よーく一日頑張りました。明日も元気でね。」と。