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ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

記憶力と記憶術

2011年01月15日 | 中学受験 合格力随想

学習の第一過程は暗記です。暗記するためには記憶する力が必要となります。したがって、記憶力の養成を目的として暗唱などの作業に取り組むわけですが、ここに問題点があります。この作業を記憶術を使って処理してしまうことがあるということです。記憶術というのは、記憶することがらをイメージ化したり語呂合わせにしたりして自分のよく知っているものに関連づけて覚える技術です。

記憶術を使うということは、真の記憶力を育てることとはむしろ正反対のテクニックになります。幼児期や小学校低学年の時期は、単純な記憶力を育てる時期で、記憶の土台を作っていく時期にあたります。この土台を作る時期に単純な記憶力をつけるのではなく、技術的に工夫した記憶の結果を身につける学習をすると、かえって記憶力の土台を作るという練習がおろそかになるのではないかと思います。

しかし、普通は幼児期や小学生時代に何かたくさんのことがらを覚える必要には迫られていません。そういう普通の子に比べると、記憶力開発の学習をする子は、覚えるための練習量が、記憶術を使いテクニック化されていたとしても普通の子よりも多くなります。よって、必然的に記憶力がついていきます。言い換えれば、記憶術を使っているにもかかわらず、練習量が多いがために記憶力がつくということです。

記憶術を使って記憶する作業は、中学生や高校生になって何かを記憶する必要に迫られてから始めればよいものです。ある記憶術の著者は、高校3年生の夏休みまでに記憶術をマスターすれば、大学入試は間に合うと述べています。つまり、記憶術を使うノウハウは、学年が上がって必要に迫られてからやれば十分なのです。

同様なことは、国語の読解問題の解き方のノウハウについても当てはまります。受験直前の1、2時間もあれば、解き方のノウハウはすぐに理解できます。むしろそれまでは、読解力の土台を作る時期で、ノウハウやテクニックを身につける時期ではないと考えておく方が学習が充実します。

先日、センター試験対策として高3生何人かにその現代文を解いてもらいました。1回目は平均点と同じ60点ぐらいの人が多くいました。そのあと数十分間、解法の説明をしました。翌週、別の年度のセンター試験を解いてもらうと、今度はすぐに80点から90点になりました。間違えたところも、なぜ間違えたかがわかるので、もうほとんどの子は満点を取ることも可能だと考えていると思います。記憶術を使って記憶する作業することは、まさにこのことと一なのです。

ただし、記憶術のノウハウをマスターするということは、子供たちの場合でも日常生活上大いに役立ちます。例えば、1から100までの数字を語呂とイメージで覚えるような方法は、単に数字を数字のまま記憶するよりもはるかに効率のよい記憶の仕方になります。ですからこのような方法は、九九と同じように、社会の共有の財産として、将来は学校などで教えていくものになっていくかもしれません。

私たちは今後も、記憶術のノウハウを時々の必要に応じて教えていくつもりではいます。しかし、幼児や小学校低学年の時期は、そのようなテクニックよりも、むしろ単純な記憶力というキャパシティを育てるということに学習の主眼をおくべきだと考えます。記憶術を使った覚え方は、料理の作り方を教えるのではなく、料理そのものを出してくるような方法です。何かが暗記できることはよいことですが、記憶術を使うのであれば、暗記の結果そのものを目的とするのではなく、暗記の仕方を覚えることを目的とした方が応用力がついて行くのではないでしょうか。



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