成長の瞬間

子どもたちの答案を見ていて、「あれ？」と感じる瞬間があります。「これって、ほんとに○○のん？」と。それまでと、何かが「違う」のです。一言で言うと、「空気」でしょうか。明らかに変化しているのです。もちろん、良いほうに。そのときのうれしさといったら、思わず「むむむ」と声が出るほどです。答案の向こうに見える「あなた」が、確実に成長している手応えにうなります。周り（私ですね）のアドバイスで成長するのではなく、自然に、自分で成長したとき、答案の「空気」が、変わります。不思議なことに、そういうときって、当の本人である「あなた」には、ほとんど自覚がないのです。


作家の石田衣良さんが、テレビで、こんなことをおっしゃっていたと聞きました。（又聞きなので表現が違っているとおもいますが）


＊ご自身も２児の父でいらっしゃいますが、子育てはいかがですか。
「小説は簡単ですが、子育ては大変ですね、ほんとに。」

＊どういうところが？
「耐えることが、です。こうしなさい、これが近道だ、と言いたくなるわけですよ。大人は知っているから。それを言わないように我慢するのが大変です。」
「うちの子供は本を読まないんですよ、ほんとに。本はつまらないって言うんです。本は面白いんですが、面白いと（自分で）見つけるまで、耐える、ですね。（困ったように）ほんとに読まないんです…」

＊子供の魅力って何でしょうか。
「ある瞬間、みちがえるように成長することですね。そしてそれがいつか、予測ができないことですね。」


私ごとで恐縮ですが、赤ん坊のころのわが子を見ていて、成長は、放物線や曲線状にではなく、かくん、かくん、とあるとき突然一段階上がる、階段状だなと感じることがよくありました。それはたいてい、田舎に数日滞在した直後、知らない人と過ごした後、旅行に行った後など、初めての環境にさらされたりといった「今までの経験外のことをした後」であることもよく感じていました。

これと似たことを子どもたちとの学習でも感じています。進級して初めての課題や項目に挑戦したり、思うようにできなかった指導日の次の日など、ちょっときつい状況をのりこえたときの後、ある意味「経験外の後」。

４月から名実共に新学年が始まります。授業を受け、問題を解き、さらにテストにあたる。「こんなん大変ヤン！」と内心途方に暮れている子もいるのでは？　少々「きつい」ことかもしれません。毎日ただでさえ、学校や習い事でいっぱいいっぱいなのにと。

確かに、毎日の学習はきつい。でも「その瞬間」というときはそんな先にあるんです。予測できないいつか、きっと。子どもたちが一段、階段を上る瞬間に立ち会える幸せが、この先いくつも待っているんだと思うと、私は本当にわくわくします。そんなご縁にいつも感動します。上ったときは子どもたちと一緒に踊り場で小踊りしたいものです。(まるでクマのダンスのように)