ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

来た道、行く道

2009年06月17日 | 中学受験 行雲流水録
「ねぇ~先生、聞いて下さい」で始まったある保護者の方のお話。わかっているけれどできない、子供と接するときのナカナカの示唆が、このお話にはありました。

*  *  *  *  *

とある日曜日の朝、息子さん(小4)と娘さん(小2)が、些細なことから口喧嘩を始めたとのこと。先にちょっかいを出したのは息子さん。チョット他のことで気になることがあったお母さんは、騒がれると苛々してこう思いました。「毎日同じようなことばっかりやって…、なんでいつもこうなるねん」、と。

「二人とも、もういい加減にしいや。朝から喧嘩せんといてや!」と、ついに声を荒げていたそうです。そして、さらに「それよりあんた(息子さん)は、早く宿題しい」と、付け加えたとのこと。

それを聞いた息子さんは、「何でオレばっかり怒るねん。不公平や。」といつもの口応えをします。「ばっかりじゃない。○○はもう終わってんねんで。だいたいさっきもあんたが先に・・・」。

あとはご想像通りの展開。たった9歳の子ども相手に、いったい何をむきになっているんだろうと思いながらも、だんだん泥沼に…はまっていくバトル。話はとんでもない方向へ向かい、ついに息子さんはお母さんに暴言を吐くことに…。

「今のはひどいで。あやまりや」と言っても、息子さんは頑としてあやまろうはしません。このあと、お母さんは所用のため、後味の悪いまま外出されたとのこと。

「あ~あ、やってしもうた。なんであんなことになったんやろ。別に怒ることないのに」それからは、ずっと気になって、気分が晴れず、出先で顔を合わせた友人の方に、思い切って打ち明けました。「朝からやっちゃいました。△△とね…」

すると、その方は「あらあら(笑)。△△君、4年生よね?絶対に怒っちゃだめよ。それから、無理に謝らせてはだめ。心の中で謝ってるんだから」

続けて、「あのくらいの年の子は、もう何でもちゃんとわかってるのよ。大人が思っているよりずっと『大人』なの。まだ感情がコントロールできないだけよ」と、優しく諭されたそうです。

「うちのお寺のご住持が、『子を叱るな、来た道じゃ。老いを笑うな、行く道じゃ』とおっしゃるのよ。自分も同じように大きくなってきたのだし、必ず年をとるのだということね」

「ただねえ、私もそんなご法話を聞いても、やっぱりこの年になっても、娘に皮肉の一つも言ってしまうわ。まだまだだめね(笑)。子どもはすぐに変わるわよ。変わらないのは大人の方。だから大人こそ修養が必要なのね」と…。

もうすぐ還暦を迎えようという人生の先輩の言葉は、お母さんにとってとても重く感じられたようです。「△△、ごめん。帰ったらすぐにあやまるわ」、と思われたとのことでした。

家に着くと、息子さんはご在宅。そして思いがけないことにこんな一言を、「母ちゃん、ごめん」。あれからずっと気にしていたのでしょう。「怒られて、小さな胸を痛めて、しかも先に謝るなんて、完全に息子さんの方が『大人』だ」と思われたといいます。

「ううん、いいよ。母ちゃんの方が悪かった。あんたはあのときも、ちゃんと心の中で謝っていたんやね。母ちゃん、謝ろうと思ってたのに、先越されたわ」黙って首を振るお子さんの目が、少し潤んでいるように見えたとのこと。そんな息子さんの心根に接して、お母さんもきっとウルウルだったでしょう。

最後にこのお母さんは、「私の修養は、まだ始まったばかり。先生、今、毎日『怒らない、怒らない』と自分に言い聞かせているところなんですよ」とおっしゃたのでした。そうおっしゃる顔は、ニコニコ輝いていました。

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反省できるお母さんって素敵ですね。お話を聞きながら、私もこの言葉をかみしめたのでした。
『子を叱るな、来た道じゃ。老いを笑うな、行く道じゃ』…然り。


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