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ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

鈴の音にもっと早く出会えていれば…

2009年11月15日 | 中学受験 合格力随想
ロシア語同時通訳者で作家の米原万里さんの著作『不実な美女か貞淑な醜女か』に興味深いお話がありました。通訳の仕事と言うと、何よりも外国語の能力が重要に思われます。ところが、こんな意外な話があるのです。

同時通訳の会社には、多くの通訳志望の人々が訪れます。英語同時通訳派遣会社最大手の会長は、その人たちが通訳に向いているかどうかを判断するために、英語ではなく、日本語のほうに注目するそうです。母国語である日本語を、より格調高く話せる人を採用するというのです。

たとえば、英語の通訳であれば、日本語を英語に置き換える際に、すばやく正確な理解力が必要であり、英語を日本語に置き換える際には、豊かで的確な表現力が要求されます。日本語の能力のより高い通訳者を採用するということは、豊かな言葉の理解力・表現力を求めているわけです。

さらに米原さんは、次のように書いています。
「第二言語(二番目に身につける言語)は、第一言語(母語)よりも、決して上手くはならない。日本語が下手な人は、外国語を身につけられるけれども、その日本語の下手さ加減よりもさらに下手にしか身につかない。」…と。

日本人として日本語の能力を磨いておくことが、外国語を学ぶ上で非常に重要なのです。日本語の文章を読んだり、自分の意見をまとめたり、まとまった話をするといった能力を高めることが、外国語の学習を進める際に大きな力となっていきます。逆にいえば、日本語でそれができない人は、英語でできるようにはならないということなのでしょう。

米原さんは、まずは母国語の基礎を固めることを前提とした上で、基礎固めのできた母国語に、さらに磨きをかけるのが外国語の学習であると述べています。外国語の理解できない概念に対し、文脈から推し量ったり辞書や百科事典を引くなど、日本語と外国語の往復を続けるうちに、日本語も豊かになり、外国語も手に馴染んでくるというわけです。

生徒達は、中学から本格的に英語の勉強を始めることになります。英語を学習すればするほど、今まで空気のような存在でしかなかった日本語の本質が、少しずつ客観的に見えてきます。そして、それまでコツコツと努力し身に着けてきた日本語の能力が、試されることになります。

そういえば、先日参加した学習会の講師・MIPのN先生の発音のきれいだったこと。まるで鈴の音のようで聞き惚れてしまいました。こんな先生との出会いが私の英語人生の始まりにあったら、きっと、もっと違う形で英語と関われたのにと、自分の怠惰さは棚に上げつつ感慨に耽ってしまいました。


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