

「雪がざあざあ降るといってはいけない。雪の感じが出ない。どしどし降る、これもいけない。それではひらひら降る、これはどうか。まだ、足りない。さらさら、これは近い。だんだん、雪の感じに近くなってきた……いや、まだ足りない」

「うまそうな 雪が ふうわりふわりかな」
どうです? ぼたん雪が空から落ちてくるさまが、ありありと目にうかぶような表現です。「うまそうな」という言葉が、とても心に響いてきます。

「あかちゃんは大きな口をあけ、なみだをふりとばして、おう おう おう れいいれいい れいい となきだしました。」
はじめてこの文章を読んだとき、私は首をかしげました。赤ちゃんは、「おぎゃあおぎゃあ」と泣くはずです。「れいい れいい」なんて泣くわけはありません。ところが、自分の家に子どもができて、驚きました。たしかに「れいい れいい」と泣くのです。松谷みよこは、昔からある「おぎゃあ」という表現にまどわされず、自分の心と耳で赤ちゃんの泣き声を聞いて、みごとに書き表していたのです。

「人類は小さな球の上で 眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間をほしがったりする
火星人は小さな球の上で
何をしているか 僕は知らない
(あるいは ネリリし キルルし
ハララしているのか)
しかし ときどき地球に仲間を 欲しがったりする
それは まったく たしかなことだ」

澪標

