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ALGOの塾長日記~愚公移山~

-学習塾方丈記-

学習指導の由なしごとを
    徒然に綴ります。

体験を味わう

2010年07月30日 | 中学受験 合格力随想
サッカーやバスケットボールなどのスポーツを小学校低学年の時期までに始めた子は、そのスポーツの感覚が自分の体の一部になっていきます。…と同じように、小学校の低学年までにものを書いたり読んだりする習慣を身につけ始めた子は、文章を書くことや読むことが生活の一部となってきます。

しかし、だからといって幼児期や小学校低学年のころには、文字の暗記を先行させないことが大事です。なぜなら、このころは体験を味わう時期だからです。十分な体験がないと、物事を空虚な言葉のみで済ませるようになってしまいます。

例えば、リンゴ見たときに、「わあ、赤くて、つやつやして、しっとりしていて、きれいなリンゴだなあ」というふうに感じる子もいれば、「リンゴがある」という言葉を述べる子もいます。どちらが心を豊かにする感じ方かというと、中身のない言葉を沢山並べ立てるよりも、実感のこもったリンゴの存在を感じることができる表現の方でしょう。

このことは周りの方々の接し方に左右されます。言葉や文字を先に覚えたから言葉のバックグラウンドを理解するようになるのではなく、体験と感動がある生活というバックグラウンドがあるから言葉の理解進んでいくのです。言葉だけの理解は頭でっかちのあやういものとなります。周りの方々の課題は文字を覚えたのかどうかということではなく、体験と感動がある生活を作っているかどうかということです。

小学校低学年の時期までの作文作業の主旨は、文章の内容そのものが目的ではありません。このころ、上手に作文を書くという意味はあまりないのです。小学校低学年までの時期は、書く内容の精査よりも、書く習慣を身につけることと読む習慣を身につけること、この二つの意識の構築が大切です。

書く楽しさは、小学校中学年になってから育っていきます。このころになると、本人も上手な作文や面白い作文を書こうという気持ちがわいてきます。しかし、さらに作文を推し進めた感想文を上手に書く年齢にはまだ達していません。したがって、感想文を上手に書こうとすることは、この時期今度あまり意味がありません。

感想文に深まりが出てくるのは、小学校高学年からです。このころになると感想文を書くという行為自体が大事になってきます。そして、意見や感想が更に深まるのは、中学生、高校生になってからなのです。

文章を書く力について個人差がかなりあるので、小学校低学年までの時期は、上手に書くことを目標にしないことが大事です。また、表記のミスについては、読む力をつけることによって、自然に直していくという姿勢が必要になります。つまり、書くという行為と並行して、読書、対話、音読などの習慣をつけていくことが大事な時期だといえるのです。

そして、その一方で、生活の中にできうる限り体験と感動を増やしていく努力が周りの方々に求められていく時期でもあります。


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