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愛する者を奪った奴らへの復讐劇、『告白』

2011年09月11日 21時30分31秒 | Weblog

  
 凄まじく恐ろしい世界を映像化した作品が、『告白』(2010年東宝制作)である。ある時、シングルマザーである教師の娘が死んだ。プールでの溺死という警察の判定であったが、真実は違っていた。娘は、自分の担任していた生徒によって殺されたのだった。1年の終業式の日、担任教師は、恐ろしい「告白」をする。数か月前に事故死した自分の娘は、自分が担任しているクラスの生徒2名によって殺害されたという事実を告白する。そして、その2名に恐ろしい仕返しをしたことを告げるのである。
  2009年の本屋大賞を受賞した湊かなえの同名小説を、『嫌われ松子の一生』の中島哲也監督が映画化。娘を殺されたシングルマザーの教師を、松たか子が鮮烈に演じている。中島監督は、これまでのポップな演出とは打って変わったリアリティあふれる映像を見せる。一見無邪気に見える13歳の中学生たち。彼らの中に潜む残酷な心の闇が巻き起こした事件が、女教師の告白をきっかけに拡散していく様子は、観る者の心を波立たせずにはおかないだろう。娘を殺された母を演じた松たか子、犯人Bの母を演じた木村佳乃、二人の母親を演じた女優たちも会心の演技。子どもと母親の関係性、現代の子どもたちの生き辛さを、痛いほどに生々しく描き出した問題作。湊かなえの同名ベストセラー小説を原作に「パコと魔法の絵本」の中島哲也がメガホンを取ったミステリー。教え子に娘を殺された中学校女教師の復讐を描く。出演は「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」の松たか子、「僕の初恋をキミに捧ぐ」の岡田将生、「キラーヴァージンロード」の木村佳乃など。
  
 
市立S中学校、1年B組。3学期の終業式の日、担任・森口悠子は生徒たちに、間もなく自分が教師を辞めることを告げる。原因は“あのこと”かと生徒から質問が飛ぶ。数カ月前、学校のプールで彼女の一人娘が死んだのだ。森口は、娘は事故死と判断されたが本当はこのクラスの生徒2人に殺されたのだと、犯人である少年「A」と「B」を(匿名ではあるがクラスメイトには分かる形で)告発し、警察に言うつもりはないが、彼らには既に恐ろしい復讐を仕掛けたと宣告して去っていく。 (この章を書いた時点では、全登場人物の性格などの構想はあったものの、続きを書く予定はなかった。作者の湊は章を書き終えた後、鼻血が出たと告白した)
 1年の時の終業式直後、クラス全員に「B組内での告白を外にもらしたヤツは少年Cとみなす」という謎のメールが送られる。春休み後、2年生に進級したB組の空気はどこか異様だった。「少年A」こと渡辺修哉は相変わらず学校へ来ていたが、「少年B」こと下村直樹は一度も姿を見せていなかった。その後のクラスの様子と、1年B組に何が起きたか一切知らない新任教師の「ウェルテル」こと寺田良輝の愚かな行い、そして「修哉に天罰を! 制裁ポイントを集めろ!」という第二のメールを皮切りに行われたクラスによる修哉への制裁の模様を、クラス委員長の美月が悠子へ綴った手紙の形で語る。
  母を刺殺した下村は、施設の中で壁に映る幻覚を見ていた。彼が共犯者である渡辺と出会い、愛美を殺し、さらに母親を殺害するまでの苦痛の生活を記憶のフラッシュバックという形で追っていく。あまりにもショックなことが起こり過ぎ、記憶障害になってしまった彼は、そのフラッシュバックを半ば他人の話のように見て、その行いをとても馬鹿にしている。
  主犯である渡辺が自身のサイト『天才博士研究所』に「母親への遺書」として自分の生い立ち、愛美を殺すに至った過去の経緯や犯行後の一時の平穏と彼の心の安定を壊す一連の出来事、次なる犯行予告などをアップロードした。最後に二ページだけ渡辺の現在の視点となり、突然彼の携帯電話が鳴り響くシーンで終わる。
 五章から直接続く形で、森口悠子から渡辺へ携帯電話の電話口で最後の宣告が行われる。 「これが本当の復讐であり、あなたの更生の第一歩だとは思いませんか?」。そして、映画では、「なんちゃって」と言う森口悠子の言葉で終わる。

 この映画の凄さは、聖職と言われる教師であったとしても、自分の愛する娘を殺された時、恐ろしい復讐劇を計画・実行することにある。かけがえのないものを奪われた時に、人間はどんな行動をとるのか?自分の担任の生徒が犯人であった場合は、どうするのか?教師である前に、人間である。その人間に焦点を当て、どんな感情で突き動かされるのかが、この映画の焦点でもある。この作品は、それぞれの告白の形で展開される。女教師の告白、犯人である2名の生徒のそれぞれの告白、主犯格の生徒に心寄せる、一家青酸カリ殺人者を崇拝するルナシー思想の女子生徒の告白・・・。実におぞましい世界がある。それぞれが愛に餓え名誉欲に餓え、その結果起こしてしまった事件。この進行が、固唾を飲む展開なのである。殺戮のシーンも、北野武監督の「バトル・ロワイヤル」を彷彿とさせるものがある。復讐の手段も過激である。生徒が飲む牛乳に、自分の旦那がかかったHIVウィルスを入れ、感染させようとする等(実際は、この行動はご主人の反対で、実行はされなかったが・・・)。生徒側も、自分に関心をもってもらうため、大きな事件を起こそうと時限爆弾で、終業式に出席の他の生徒を多数道ずれにしようとする。おおよそ、普通の感性では到底思いもつかない事ばかり。実におぞましい世界の中に埋没してしまう作品である。
 この中から、命の大切さ、大事なものを失った焦燥感が感じ取れるのであろうが、しかし、ここまでの話である必要があるのだろうか?妙に、後味の悪さばかりが目立つ作品だったと感じてしまうのである。


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