戦国時代の最大の合戦が、豊臣秀吉の跡目争いである『関ヶ原』の大合戦である。この戦いは、豊臣秀吉の跡目を誰が収めるかを決する、日本の戦国大名を二分する空前絶後の合戦なのである。これを描いたのが、『関ヶ原』(2017年 東宝制作)である。
石田三成と徳川家康を主人公に、豊臣秀吉の死から天下分け目の関ヶ原の戦いに至るまでの過程を描いた司馬遼太郎原作の歴史小説『関ヶ原』の映画化作品。司馬遼太郎の小説の映画化は、1999年公開の『梟の城』以来18年振りとなる。監督・脚本は原田眞人、出演は岡田准一、役所広司、有村架純らで、有村は時代劇初挑戦となる。。「日本のいちばん長い日」「わが母の記」の原田眞人監督がメガホンをとり、石田三成の義を貫いた生き様を軸に、関ヶ原の戦いを真っ向から描き出す。幼くして豊臣秀吉に才能を認められ、取りたてられた石田三成は、秀吉に忠誠を誓いながらも、正義ではなく利害で天下を治める秀吉の姿勢に疑問も抱いていた。そんな三成の下には、猛将として名高い島左近や伊賀の忍びの初芽らが仕えるようになるが、秀吉の体調が思わしくないなか、天下取りの野望を抱く徳川家康は、言葉巧みに武将たちを自陣に引き込んでいった。そして1598年8月、秀吉が逝去。1600年9月15日、毛利輝元を総大将に立てた三成の西軍と、家康率いる東軍が関ヶ原で天下分け目の決戦に挑むこととなる。
主演の岡田が不器用で人間味あふれる新たな三成像に挑み、役所が天下取りの野望に燃える家康役を演じる。さらに三成を命がけで守りながら彼に密かに恋心を抱く忍び・初芽役で、有村が本格時代劇に初挑戦した。
この作品は、石田三成の生き様にスポットを当てた大作である。不器用ながら、主君である豊臣秀吉に忠義を尽きす「正義」を標榜する石田三成と豊臣亡き後の天下取りに邁進する「不正義」の徳川家康との戦いの様を映像化している。ただ、関ヶ原の大合戦までの数年を、かなり駆け足で描写しているため、歴史に疎い人には十分に理解できないシーンが多かったのではないかと思われる。
合戦の勝敗を決める小早川秀秋の去就がキーポイントであるが、西軍に味方して打って出ようとした小早川を家臣が止め、徳川方に味方した動きをするが、これは真実だったのかと疑問符が付く。小早川自身が日和見主義を通していたはずで、家臣の静止で徳川方についたという点に疑問が、、また、石田三成が農民に匿われていた際、自害せずに生きていたことが、伊賀の忍びの初芽(有村架純)に思いがあり、その生死を確認したかったという理由などは、真実とは思いにくい。三成は、処刑される際に喉が渇いたからといって、泥水を飲まなっかたという逸話もあり、実に自身を大切にする生き方の人間であることからであるので、この点にイマイチ感が生じてしまう。
とはいえ、合戦の様子、多くのエキストラを要した映像に驚きは多かった。戦国合戦の秀作であろうと思う。