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基礎研究の賜物、ノーベル賞受賞の山中教授

2012年10月10日 20時57分24秒 | Weblog

                    
 世界最高の賞であるノーベル賞(医学生理学賞)が、京都大学教授でiPS細胞研究所の山中伸弥に贈られた。万能細胞と言われるiPS細胞は、どんな部位にも成長できる細胞。これからの細胞を形成するものに進展していく、夢の細胞なのである。これも、基礎研究の集大成と言えるのである。基礎科学がしっかりとできていてこその発見だったのである。

 あらゆる細胞に変化する「万能細胞」が、マウスの皮膚細胞にわずか4種類の遺伝子を入れるだけでできた。06年の人工多能性幹細胞(iPS細胞)の登場は世界を驚嘆させた。開発した山中伸弥(49)は、昨春新設された京都大iPS細胞研究所の所長として、約200人を率い、研究の最前線を走る。この5年で、ラスカー、ガードナー国際、京都、ウルフ各賞など、ノーベル賞登竜門とされる科学賞を総なめにしたのも事実。「普通なら、出て間もない成果は選ばれない賞ばかり。異例の評価ですが、僕自身ではなく技術そのものに対する評価だと思っています。その後、がーんと進んだことも大きい。研究の進展は、07年にヒトでのiPS細胞作成を発表したときの予想をはるかに上回ります」との弁。
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月8日、2012年のノーベル医学生理学賞を、京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授(50)と英ケンブリッジ大のジョン・ガードン博士(79)に授与すると発表した。授賞理由は「成熟した細胞を、多能性を持つ状態に初期化できることの発見」。山中氏は06年、マウスの皮膚細胞に4種類の遺伝子を入れることで、あらゆる組織や臓器に分化する能力と高い増殖能力を持つ「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作り出すことに成功。拒絶反応の少ない再生医療や難病の仕組みの解明などにつながる革新的な功績が評価された。最初の成果が米科学誌に掲載されてから6年余りという異例のスピード受賞だ。
 山中教授はこの日、午後8時から京都市左京区の京都大で会見。「私たちの本当の仕事はしっかり研究を進め、iPS細胞の医療応用を果たすこと。これからも本当の仕事を進めていかなければならないと思った。難病を持っている患者さんには、希望を捨てずにいてほしい」と決意を語った。
 日本人の受賞は10年の鈴木章・北海道大名誉教授と根岸英一・米パデュー大特別教授の化学賞に続く快挙で、医学生理学賞の受賞は87年の利根川進・米マサチューセッツ工科大教授以来25年ぶり、2度目。今回の受賞で日本人の受賞者数は、米国籍の南部陽一郎氏=08年物理学賞=を含め19人(医学生理学賞2、物理学賞7、化学賞7、文学賞2、平和賞1)となる。授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金800万スウェーデン・クローナ(約9800万円)が両氏に半分ずつ贈られる。
 ヒトや動物は、1個の受精卵から体のすべての細胞を作り出している。受精卵は分裂を繰り返して数を増やしながら、心臓、筋肉、神経、皮膚などさまざまな臓器や組織の細胞に変化する。これが「分化(ぶんか)」だ。一度心臓や筋肉の細胞に分化した細胞は、分化前の状態に戻らないと考えられてきた。
 ガードン博士は、1962年、アフリカツメガエルの卵から遺伝情報を含む核を取り除き、代わりにオタマジャクシの体細胞の核を移植。この卵は、もとのオタマジャクシと同じ遺伝情報を持つ「クローンオタマジャクシ」に成長した。このことは、いったん分化した細胞でも、卵の中に入れることで再びあらゆる細胞に分化できる「多能性(たのうせい)」を持つように「初期化」ができることを世界で初めて示した。
 その後40年以上たち、山中教授らは、胚性幹細胞(はいせいかんさいぼう)(ES細胞)や、受精させていない卵子の中で働く24種類の遺伝子を特定。その中で多能性を呼び戻すのに必要な遺伝子を4種類に絞り込み、マウスの皮膚細胞に組み込むという方法で細胞を初期化し、多能性と増殖能力を持つ「iPS細胞」を作った。07年11月には、同様の手法でヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作ったことも報告した。
 iPS細胞は、患者自身や白血球の型が同じ人の細胞から作ることで、拒絶反応の少ない再生医療が実現する可能性がある。病気の解明や新薬候補物質の探索への利用も期待されている。2氏の業績についてカロリンスカ研究所は「細胞や器官の進化に関する我々の理解に革命を起こし、教科書は書き換えられ、新しい研究分野が開かれた」と評価している。