昔話より
まんざいらく・まんざいらく
むかしむかしのことでありました。
桑折あたり一帯はしょっちゅう地震がありました。しょっちゅうとは申しましても
はたして今より多かったものかどうかは定かでありませんが、大むかしは、天変地異
は今よりもはるかに多かったでありましょう。
おそろしいものの筆頭。それは地震でありました。
『地震・雷・火事・おやじ』、並べて見ますと、地震は予告なしに広範な土地に被
害をもたらすという点で、たしかに不気味でこわいものだったにちがいありません。
ある年の春のことでありました。
野は緑に萌え、花開き、鳥歌うのどかな昼どきでありました。
万才楽山にわらび取りに出かけた、谷地の太兵衛ら数人は、その山のてっぺんの見
はらしのよい、八畳岩(※1)の上で、ずんないむすびをぱくついておりました。
まあ腹も七分目になったころ、かすかに地揺れがはじまりました。誰もが、
「ありゃー、地震のようだな。」
「ほだ。ほだ。たいしたごどもあんめえで。」
などと語りながら、飯をたいらげ、食休みをして、またひとかかえほども、わらびを
とり、山をゆっくりと下って来たのでありました。
森をぬけ、林を通り、やがて小阪の方の人家にさしかかりますとなにやらただなら
ぬ気配でありました。
「なにが、あったのがい。」と尋ねますと、
「何だい。あんだら。昼ま、あだんでっかい地震あったべした。」
と言われたのでありました。
北半田の栗和田、御免町、南半田の田町と歩みをすすめてまいりますと、土蔵のか
べがくずれ、道のところどころには地割れさえみえていたのでありました。余震もい
くたびかありました。
太兵衛らは小走りにわが家へ急いだのは当たり前のことでありましょう。
ややしばらく経ってから、太兵衛らだけが地震に気付かなかったことを知りました。
「そうだ。あの、万才楽山のてっぺんの八畳岩は、ずうっと土の中まで根っこはっ
ていで、そのせいで動がねんだべで。ほんじゃがら、だれも、地ゆれのごど気いづが
ながったんだで。」
「万才楽は地震に安全などごだなや。」
といううわさが、どんどんと地震のゆれのようにひろがっていったのでありました。
それから、だれいうともなく、地震がありますと、万才楽山のご利益をさずかりた
いということで、
「万才楽、まんざいらく」とゆれがおさまるまで唱えるようになったのであります。
※1 八畳岩=たたみの八枚もしけるような広い岩の意味
これ会話の途中に「地震あったべした」とあるので
福島県?って思ったら、その通り福島県の昔話でした
前夫が福島県二本松市東和町出身なので田舎に行った時
&前に前夫と一緒に働いていた会社ほぼ全員が福島県民で
方言を知っていたので「あったべした」で解りました
桑折町(こおりまち)は福島県伊達郡にある町です
でも、なんでこの話を?ってお思いでしょう
それは…
昨日母と電話で3月11日の大地震の話しになりました
ばあちゃん=母の姉=母82歳+17歳=生きていたら99歳
明治45年生まれ、maiの長女が赤ちゃんの時亡くなった、享年71歳かな?
明治45年生まれの方、今尚ご健在の方いらっしゃいますよね、きっと
そのばあちゃんが関東大震災を体験した時の話しになって
母は、ばあちゃん=お姉さんから当時の様子を聞かされていて
ばあちゃんは関東大震災の時は大正12年だから12歳
当時だから尋常小学校か、高等小学校?
今で言うと小学6年か中学1年でしょう…
大正12年9月1日は土曜日なので半ドンだったのかな?
半ドンも今は聞かないね
地震が来たので、ばあちゃんは怖くて2階に駆け上がったそうです
そして押し入れに入って
「まんざいろく、まんざいろく」って言ってたんだそうで
…でこの話になるんですが
「万才楽」
母が「ばあちゃんが『まんざいろく、まんざいろく』って言ってた」
「まんざいろくって地震のおまじないなのかねぇ?」
それを聞いてパソコンで「まんざい」まで入力したら
「まんざいらく・地震」「万歳楽」って予測が出たので見てみると
上の話を載せている会社があったのです
多田建設って言う会社で福島県にあります
地元の昔話を定期的に載せて言い伝えているようです
母に「『まんざいろく』じゃなく『まんざいらく』だよ!
『ろく』じゃない『らく』って書いてあるよ!」
そう教えると、
「ばあちゃんはまんざいろくって言ってたから、
誰かに教わった時にそう聞こえて、そう覚えちゃったんだろうね
地震になるといつもまんざいろく、まんざいろくって言ってたよ」
12歳って言えば物心も十分についてるし記憶もあるでしょう
きっと少女の頃にそれはそれは怖い思いをしたのだと思います
「ばあちゃんは目をつぶってまんざいろくって唱えてたけど
揺れがおさまったから目を開けたら屋根が無かったって言ってた」
家自体は壊れなかったけど屋根が無かったって…一体どんな?
「逃げよう!」ってなって
竜泉から北千住の方に向かって歩いたそうです
歩いている内に火災が発生してあっと言う間に一面火の海…
そんな体験からか、異様に地震を怖がってるばあちゃんでした
maiもばあちゃんにあやかって地震が来たら
「まんざいろく(笑)まんざいろく」って唱えようかな