ところで肥満は、決して望ましいものでも人間として唯々諾々と許容できるものでもない。実は肥満は我々ヒトの個体と種の存亡にとって、とてつもない負の推進力を持っているのである。肥満が生命に及ぼす影響を、まずは「ガン」を例に取り上げて見てみよう。
肥満度を表す数値のひとつに「BMI」(Body Mass Index)というのがある。これは、
で表される。このBMI値が22となる身長と体重のバランスが、いわゆる標準体重と言われ、統計的に一番病気にかかりにくい健康的な状態と言われている。例えば身長が150cmで体重が55kgの人の場合、その人のBMI値は、「BMI=55÷(1.5×1.5)」で、BMI値は24になる(ところで私は、このような現代医学的分析手法に対してどちらかといえば懐疑的な立場にいるのだが、論を簡潔に進めるために、ここではとりあえずこの数値基準を容認して前に進むことにする)。
一般的にBMI値を評価する基準としては、
とされているので、この人はどちらかというと「標準だがやや肥満気味」と判定される。
さて1982年、アメリカの対ガン協会が90万人を超えるボランティア(うち57,145人がガンで死亡)を16年間追跡調査をしたところ、次のような結果が出た。
以下は男女の全ガン死亡率を、正常群(BMIが18.5~24.9)と比べて何倍かということを示している。
つまり肥満が度を過ぎれば、ガンで死ぬ率は男女ともに高くなるのである。個別のガンで見てみれば、食道ガン、胃ガン(男性のみ)、結腸ガン、直腸ガン、肝臓ガン、胆嚢ガン、膵臓ガン、腎臓ガン、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、前立腺ガン、乳ガン、子宮ガン、卵巣ガンなど、つまりほとんどの部位のガンで、肥満による死亡率が上昇している。
しかしこれらの結果は実は、これより以前に既に日本において実証されていた。世界に先駆けて「体細胞の腸絨毛造血説」を主張した故千島喜久雄博士は、今から30年以上前に著した「血液と健康の知恵」(1977年 地湧社刊)において以下のように述べている(以下抜粋を意訳)。
彼の説によれば、ガンは個人の食のあり方から起こり、特に過食、農薬や添加物による汚染食、咀嚼不足や精神的ストレスによる腸内での消化不足が主にガンを誘引する原因になるという。これは現代を席巻するアトピーや喘息、各種アレルギーの要因と考え合わせると、とても興味深い洞察である。
一般的に考えても病気の多く、または大部分はいわゆる災難的に身に降りかかってくるものではない。そうではなくてわが身の選んだ食事や生活習慣、または両親が子に与えた食習慣、また遡って胎児を宿した時の母胎の胎内環境(化学物質による汚染度や内的ストレスによるものなど)が、それら疾病を引き起こす場合が圧倒的に多い。つまりは胎児も本人も含めて、今日巷に蔓延しているあらゆる疾病のほとんどは家庭の食を管理している当事者の選択に因って起きたものであると言える。そうでなくてどうして、ここ数十年の間に斯くも目新しい病気や疾患が蔓延しようか。
肥満とガンの関係に焦点を戻せば、現代においても幾つかその相関関係を裏付ける研究結果が提示されている。基より肥満は自然界において、クマなど冬眠する一部の動物を除けば決してあってはならない(もしあったらその個体は生存の危機に瀕する)状態とも言える。肉食動物なら獲物が獲れなくなるし、草食動物なら容易に餌食にされやすい。つまり原則的に恒常的な肥満の状態で生き延びれる個体なり種は存在しない。
しかし唯一人類のみが、まだ地球上の一部の地域に限られるとはいえ豊富な食糧を通年供給し、しかも豊作不作に関係なく(実のところは経済的弱者から巻き上げているにすぎないのだが)、充分な食糧を確保できる体制を築いた。私たちの住むこの日本はその典型的な一例、超上流階級の恩恵に浴している。グローバル・スタンダードに照らし合わせれば、すべての日本人は地球上の最上位10%の富裕層に位置し、他の先進諸国民とともに(世界の4分の1の人口が)地球上の富の4分の3を巻き上げている。
世界人口60億人のうちおよそ8億3000万人の人々が栄養不足だと言われているが、一方世界の肥満人口は、WHOによると16億人が過体重で、4億人以上が肥満だという。 更に言えば、2015年までに23億人が過体重となり、7億人以上が肥満になると予測されている。つまり国際的飢餓の問題は、主に先進諸国民の食品ロスと過栄養が引き起こしている副次的生産物なのだ。つまりは私たち全員が(特に肥満者が)「身のほどを知る」行いをすることによっておのずと解決される「人災」とも言える。ただしみながそれを実現するにはわが身と人と世界中のいのちを尊ぶ愛と、まことの知性とが要求される。自分と自分たちだけの利得を求める心では到底望むべくもない。現代は、個人の欲がどこかの土地の誰かの窮乏を引き起こす、そんなグローバルな時代なのである。
【写真は、2008年版ギネスブックに登録された「世界一重い男」マニュエル・ウリベ(メキシコ・約560キロ)】
(つづく)
肥満度を表す数値のひとつに「BMI」(Body Mass Index)というのがある。これは、
体重(kg)÷身長(m)2
で表される。このBMI値が22となる身長と体重のバランスが、いわゆる標準体重と言われ、統計的に一番病気にかかりにくい健康的な状態と言われている。例えば身長が150cmで体重が55kgの人の場合、その人のBMI値は、「BMI=55÷(1.5×1.5)」で、BMI値は24になる(ところで私は、このような現代医学的分析手法に対してどちらかといえば懐疑的な立場にいるのだが、論を簡潔に進めるために、ここではとりあえずこの数値基準を容認して前に進むことにする)。
一般的にBMI値を評価する基準としては、
~20 痩せている
20~24 標準的な体型
24~26.5 やや肥満体型
26.6~ 肥満
とされているので、この人はどちらかというと「標準だがやや肥満気味」と判定される。
さて1982年、アメリカの対ガン協会が90万人を超えるボランティア(うち57,145人がガンで死亡)を16年間追跡調査をしたところ、次のような結果が出た。
以下は男女の全ガン死亡率を、正常群(BMIが18.5~24.9)と比べて何倍かということを示している。
BMI 男 女
18.5~24.9(正常群) 1.00 1.00
25.0~29.9 0.97 1.08
30.0~34.9 1.09 1.23
35.0~39.9 1.2 1.32
40.0~ 1.52 1.62
つまり肥満が度を過ぎれば、ガンで死ぬ率は男女ともに高くなるのである。個別のガンで見てみれば、食道ガン、胃ガン(男性のみ)、結腸ガン、直腸ガン、肝臓ガン、胆嚢ガン、膵臓ガン、腎臓ガン、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、前立腺ガン、乳ガン、子宮ガン、卵巣ガンなど、つまりほとんどの部位のガンで、肥満による死亡率が上昇している。
しかしこれらの結果は実は、これより以前に既に日本において実証されていた。世界に先駆けて「体細胞の腸絨毛造血説」を主張した故千島喜久雄博士は、今から30年以上前に著した「血液と健康の知恵」(1977年 地湧社刊)において以下のように述べている(以下抜粋を意訳)。
第一次世界大戦下で食糧不足の際、それまでと比べ、ドイツでは男女とも各年齢層でガン死亡率が低下している。この年はドイツでは戦時下で食糧不足だった。その後1920年以降再び死亡率が高まっている。オーストリアのガン統計もドイツと大体一致している。
その他の国でも戦時下食糧不足の時にはガンの死亡率が低くなっている。日本では学者の統計によれば、第二次世界大戦中ガン発生率は低下していないという統計を示しているが、前述諸外国の統計や、動物実験の結果から考えても、減食、節食によってガン発生率、死亡率は低下したものと推定できる。その場合、戦時中、日本人の精神的ストレスが減食によるガン発生低下率を妨げたことも考えられる。
彼の説によれば、ガンは個人の食のあり方から起こり、特に過食、農薬や添加物による汚染食、咀嚼不足や精神的ストレスによる腸内での消化不足が主にガンを誘引する原因になるという。これは現代を席巻するアトピーや喘息、各種アレルギーの要因と考え合わせると、とても興味深い洞察である。
一般的に考えても病気の多く、または大部分はいわゆる災難的に身に降りかかってくるものではない。そうではなくてわが身の選んだ食事や生活習慣、または両親が子に与えた食習慣、また遡って胎児を宿した時の母胎の胎内環境(化学物質による汚染度や内的ストレスによるものなど)が、それら疾病を引き起こす場合が圧倒的に多い。つまりは胎児も本人も含めて、今日巷に蔓延しているあらゆる疾病のほとんどは家庭の食を管理している当事者の選択に因って起きたものであると言える。そうでなくてどうして、ここ数十年の間に斯くも目新しい病気や疾患が蔓延しようか。
肥満とガンの関係に焦点を戻せば、現代においても幾つかその相関関係を裏付ける研究結果が提示されている。基より肥満は自然界において、クマなど冬眠する一部の動物を除けば決してあってはならない(もしあったらその個体は生存の危機に瀕する)状態とも言える。肉食動物なら獲物が獲れなくなるし、草食動物なら容易に餌食にされやすい。つまり原則的に恒常的な肥満の状態で生き延びれる個体なり種は存在しない。
しかし唯一人類のみが、まだ地球上の一部の地域に限られるとはいえ豊富な食糧を通年供給し、しかも豊作不作に関係なく(実のところは経済的弱者から巻き上げているにすぎないのだが)、充分な食糧を確保できる体制を築いた。私たちの住むこの日本はその典型的な一例、超上流階級の恩恵に浴している。グローバル・スタンダードに照らし合わせれば、すべての日本人は地球上の最上位10%の富裕層に位置し、他の先進諸国民とともに(世界の4分の1の人口が)地球上の富の4分の3を巻き上げている。
世界人口60億人のうちおよそ8億3000万人の人々が栄養不足だと言われているが、一方世界の肥満人口は、WHOによると16億人が過体重で、4億人以上が肥満だという。 更に言えば、2015年までに23億人が過体重となり、7億人以上が肥満になると予測されている。つまり国際的飢餓の問題は、主に先進諸国民の食品ロスと過栄養が引き起こしている副次的生産物なのだ。つまりは私たち全員が(特に肥満者が)「身のほどを知る」行いをすることによっておのずと解決される「人災」とも言える。ただしみながそれを実現するにはわが身と人と世界中のいのちを尊ぶ愛と、まことの知性とが要求される。自分と自分たちだけの利得を求める心では到底望むべくもない。現代は、個人の欲がどこかの土地の誰かの窮乏を引き起こす、そんなグローバルな時代なのである。
【写真は、2008年版ギネスブックに登録された「世界一重い男」マニュエル・ウリベ(メキシコ・約560キロ)】
(つづく)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます