時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

貯蓄、蓄財の目的

2007年05月15日 | 経済問題
読者諸兄の貯蓄や蓄財の目的は、いったい何だろう。
人間というのは、多少の金銭的な余裕がなければ、心にゆとりをもって毎日を暮らしていくことはできないだろう。
思いもかけない出費というのは、日常生活の中で、我々もしばしば経験するものである。
しかし、いくら思いもかけない出費といっても、家族の病気や事故、倒産やリストラなど、日常起こり得る事象ならともかく、地震や洪水のような大規模な自然災害、国家破綻、インフレ、戦争などの社会的な混乱など、考えていくとキリがない。
あまりあれこれと心配しすぎると、いくらお金があっても足りないということになるだろう。
突然の不幸に見舞われても、健康である限り、1、2年の生活費の貯蓄があれば通常は対策を考えることもできるし、十分に切り抜けられるのではないだろうか。また、子供の教育費用、老後の生活費など、計画的に準備できるものも多いと思われる。
上記のような不測の事態を除けば、人間というのは、何かの目的があって貯蓄を行うものであろう。買いたい物、実現したいことなどがあって、せっせと貯蓄に励むのが普通である。そして、世間一般では、その貯蓄が十分に行えないために、買いたい物の一部を我慢したり、夢をあきらめたりすることが多いのではないかと思われる。
目的を実現できないまま人生を送ったり、あるいはその努力の過程で別の人生を見つけたり、目的そのものを持てないまま人生を送ることもあるかもしれない。それが人生というものだろう。
先日、村上ファンドの村上被告に対する検察側の求刑が行われたが、彼などは、一体何のために蓄財に励んできたのだろうか?
蓄財そのものが目的になっており、そのお金で何かをやりたいという希望を持っているわけではなさそうである。ホリエモンもそうであろう。まったくくだらない人生ではないか。
ビル・ゲイツも、今でこそ私財の一部をエイズの撲滅のために、などとボランティア団体を作って活動しているが、元々、そういう目的をもって資産形成をしてきたわけではない。たまたま気づいたら使いきれないほどのお金が手元にあったので、それをエイズ撲滅に使おうと思い立っただけである。付け加えて言えば、エイズの原因の多くは貧困にあり、その貧困は、先進資本主義国やその国の大資本が後進国で搾取や収奪を進めてきた結果である。ビル・ゲイツは、自己矛盾を感じないのだろうか。もっとも、彼がやらなくても、別の誰かが搾取や収奪を進めただろうから、後進国でのエイズのまん延という結果は変わらなかったかもしれないが・・・。
さて、かく言う編集長は、どうしても実現したい目標を持って生きており、現在はそのために準備も行い、多少は蓄財に励んでいる。実現できるかどうかは定かではないが、絶対できない目標でもない。
少しは他人の役に立つようなことに、お金と人生を使いたいと思っている。
目的のない蓄財、漠然とした不安に備えるだけの貯蓄ほど、無意味なものはない。
読者諸兄も、蓄財を通して、自らの人生のあり方や目標をもう一度見つめ直してみてはいかがだろうか。

外国人研修:8割の企業で、長時間労働や基準外賃金未払い

2007年05月14日 | 格差社会
全国47都道府県の労働局が2005年に、「外国人研修・技能実習制度」で来日した外国人労働者が働く866事業所を監督指導したところ、その8割にあたる694事業所で、長時間労働や基準外賃金の未払いなどの違反があったことが判明したという。
この問題は以前にも取り上げておいたが、これほど大掛かりな調査結果が判明したのは、今回が始めてである。
この制度を利用して来日している外国人は現在約16万人いるが、研修、実習を名目にしながら、実際は「格安の労働者」として扱われている実態が明らかになった。
制度上、研修は労働扱いではないため、実習生がいる事業所のみが指導対象になったが、研修生も同様の職場環境で働いているとみられる。
違反が最も多かったのは、非常用設備がない、衛生状態が悪いなどの「労働安全衛生法違反」328件。次いで、1日8時間、1週間40時間を超える長時間労働(労働基準法32条違反)326件。さらに、時間外・休日・深夜の割増賃金未払い(労働基準法37条違反)270件、最低賃金を支払っていない(最低賃金法違反)65件などとなっており、違反は延べ1516件に上っていた。
鳥取県の縫製会社では、中国人実習生12人を県の定める最低賃金(時給610円)を下回る285~476円で働かせていたとして、2社とその経営者を労基法、最低賃金法違反容疑で書類送検している。また、広島県府中労基署は、2005年の1年間に中国人実習生6人を含む19人の賃金と時間外賃金の計約3700万円を支払わなかったとして、寝具製造会社と役員を労基法違反容疑で書類送検している。このほかにも、似たような事例により、指導や勧告が相次いでいる。
青森では、縫製会社の研修生が長時間労働に耐え切れずに逃走し、保護を求めるなどの事件も起きている。また、パスポートや通帳の取上げなどの人権侵害も明らかになっている。
外国人労働者による労基署などへの相談件数は年々増え、2005年には全国で約1万件に上っているという。
こういう外国人労働者を研修や実習目的で受け入れている企業は、圧倒的に中小零細企業が多い。大企業による下請けへの単価切り下げや安い外国産の商品に対抗するため、このような企業では人件費や諸経費を徹底的に切り詰めてきたが、それにも限界がある。とうとう、研修生や実習生名目で外国人労働者を受け入れ、不法な労働行為をさせることによって、かろうじて経営を維持しているのが実態であろう。
外国人研修生、実習生を受け入れておきながら、不法な労働を強いる行為は許せないが、これを取り締まるだけでは問題は解決しないだろう。
中小零細企業の経営が維持できるような価格保証制度がなければ、経営そのものが成り立たないのは容易に想像できる。かつては、Made in Japanが世界を席巻したが、いまはMade in Chinaなどが世界市場を席巻しようとしている。
経済のグローバル化の中で、中小零細企業にも方向転換が求められていることも事実であろう。
また、バブル期を上回る高収益を上げる巨大企業の陰で苦しんでいるのは、一般労働者、非正規雇用者だけでなく、下請けである中小零細企業も同様であろう。
したがって、中小零細企業も、親会社に対して、下請け単価の切り上げなどを求めて声を上げる時ではなかろうか。
この点を改善しない限り、外国人研修生、実習生の悲劇は根絶できないと思われる。また、現在日本で進んでいるワーキングプアなどを解決する近道であると思われる。

危ない中国の食品類

2007年05月13日 | 社会問題
中国外務省などは、パナマ向けに輸出された薬用甘味料のグリセリンと、米国とカナダへ輸出されたペットフードにそれぞれ毒性物質が混入していたと発表した。
パナマで昨年、内臓の機能低下などの不調を訴えた多数の患者が原因不明で死亡。患者らが服用したかぜ薬の原料として「グリセリン」と表示があったが、パナマ政府の依頼で米食品医薬品局(FDA)が調査したところ、ジエチレングリコールが含まれていたことが判明したという。
同紙によると、パナマでは365人の死亡報告があり、うちこれまでに100人の死因がジエチレングリコールと確認されているという
同紙は昨年判明したパナマと中国の例は製造元が中国企業と確認できたが、確認できなかった「有毒甘味料」による被害が過去にハイチやバングラデシュ、アルゼンチン、ナイジェリア、インドでもあったと報じている。
また、中国の国家品質監督検査検疫総局は、江蘇省と山東省の2社が製造して北米に輸出されたペットフードからも、樹脂などに使われるメラミンが違法に添加されていたと発表した。
米国とカナダでは今年3月、これらのペットフードを食べた数100匹の犬と猫が原因不明で死亡。FDAが中国側に調査を依頼していた。同総局は2社の責任者らを立件する方針という。
同総局はさらに、179社の食料品輸出企業について緊急立ち入り検査をしたほか、粉ミルクやめん類など12種類の小麦製品のサンプル調査も実施。いずれも異状はなかったという。
中国では、食品などに違法な薬物や添加物が使用されていることが多い。欧米や日本で禁止されている薬物や添加物が、中国で認められている、あるいは禁止されていないからだ。
また、品質管理などの技術や意識水準が低く、原材料に不純物が混入したりすることも多い。
旅行などで、中国に行く時も食品や医薬品は絶対に買ってはならない。品質管理が十分でない物や公的機関の承認を受けていない物、中にはニセ物もたくさん出回っている。
最近は、商店街の一角に中国物産店ができ、中国産の食品も売られている。スーパーでも、中国製の缶詰なども出回っているが、日本のメーカーなどが製品管理を行っている物はまだ信用できるが、中国企業が直接製造している製品には十分な注意を要する。
ただ、今回の事件で、中国の態度が立派だと思うのは、直ちに会社の責任者を拘束したことだ。
先頃の不二家の不祥事の際に社長や工場の責任者が直ちに拘束されたという話は聞かない。関係官庁に行って謝罪し、記者会見をして「お詫び」すれば、それで終わりである。医薬品の副作用が疑われる死亡例があっても「因果関係はない」と言っていればそれで済むのが日本と言う国である。こういう点は中国を見習うべきであろう。
今後、中国が世界の中で確かな地位を確立したいと思っているのなら、先進国と同様の安全管理や衛生管理でも、グローバル水準を保つことが求められる。
そして、それまでは、読者諸兄も安易に中国産の製品を口に入れないことだ。残念ながら、税関などですべての食品の安全検査ができるわけではない。こういう検査体制の強化を望むとともに、当面は自己防衛以外に方法はないようである。

1億円ヤミ献金事件:スッキリしない裁判

2007年05月12日 | 政治問題
自民党旧橋本派「平成研究会」(平成研)の1億円ヤミ献金事件で、政治資金規正法違反(政治資金収支報告書の不記載)の罪に問われ、1審・東京地裁で無罪を宣告された元官房長官、村岡兼造被告の控訴審判決公判が10日、東京高裁で開かれた。須田賢裁判長は、検察側が立証の柱にし、一審判決が「信用できない」と一蹴した平成研の滝川俊行元会計責任者(58)=有罪確定=の証言を「信用できる」として1審判決を破棄。禁固10月、執行猶予3年(求刑禁固10月)の逆転有罪判決を言い渡した。
さて、編集長はこの裁判で村岡氏にどういう判決が下ろうが、まったく関心はない。
多くの国民もそうではなかろうか。どうせ自民党の代議士である。現役時代には、あちこちからヤミ献金を受け取って私腹を肥やしてきたことは容易に想像できるではないか。そういう人物が禁固刑になろうがなるまいが、ほとんど国民には何の関係もないし、関心もない。
国民の最大の関心事は、このヤミ献金1億円が、どのように使われたのか?誰に渡ったのかということである。与党である自公両党はもちろん、野党対策などに使われてはいないのだろうか?しかも、この1億円などは氷山の一角だろう。実際には何十億円という裏金が使われたことは想像に難くない。
誰が受け取ったか、その場に誰がいたのか、誰が受け取るよう指示したのか?などはどうでもよいことだ。
このお金が、その後どのように使われたのかを明らかにして欲しいというのが、多くの国民の希望である。検察側、被告側とも、この点についての真相を明らかにすることを望むものである。

「百年安心」の年金の加入記録に不備続出

2007年05月11日 | 政治問題
社会保険庁は、58歳に達した年金加入者を対象に保険料の加入記録を事前に通知した計約466万人(2004年3月から2006年12月まで)のうち、約41万人が「過去の勤務先の加入記録がない」などとして、加入記録の調査を求めていたことを明らかにした。
事前通知制度は、年金給付開始前に加入者に年金額などを確認してもらうため、2004年に始まった。生涯1つの番号で加入記録を管理する基礎年金番号が1997年に導入される前は、転職のたびに異なる年金手帳記号番号が発行され、加入者が複数の加入記録を持つケースが多かった。
今回の41万人分の調査では、加入記録の修正で解決することが多いとみられるという。
しかし、この実態はあまりにもズサンではないか。
以前にも、テレビで20人ほどの年金加入者に、最寄りの社会保険事務所に行ってもらい、加入記録を確認したところ、約1割に記録のミスが見つかっている。
今回の調査の結果もおよそ1割で不備が見つかっており、大体同じ比率である。
要するに、今後も1割くらいのミスは十分に起こり得るということを示している。
何十年も前に勤務していた会社が現時点で存在していない場合は、その時の給与明細、国民年金保険料の領収書など、年金を支払っていた証拠書類を保管しておかないと、とんでもない結果を招きかねない。
実際に、何の証拠もないために、その期間に相当する年金を受給できず、トラブルになっている例もテレビで放映されていた。
2004年の国会で、年金保険料の引き上げ、支給年齢の引き上げや支給額の削減などが行われた。与党の一角を占める公明党は「百年安心」などと胸を張ったが、選挙が終わった途端に、年金改革だとか、年金財政が破綻するなどと騒いでいる。将来の年金支給の保証はもとより、加入記録という財産管理すら、実態はこの通りのお粗末さである。
付け加えて言えば、今年の4月初旬には、年金加入記録のうち5000万件が該当者不明との報道もあった。厚生・国民年金の約5000万件の加入記録が2006年6月現在、基礎年金番号が付与されず、現在の加入者と結びつかない状態にあることも明らかになっている。
その多くが加入者の死亡、加入期間の不足による受給資格の喪失者など付与する必要のない記録らしいが、氏名の入力間違いなど社会保険庁のミスが原因のケースも相当数含まれることもわかっている。
たとえば、2001年4月~2007年2月の間に、約22万件の支給漏れが発覚している。これは、基礎年金番号が付与されていない約5000万件の記録の一部である。
将来も、年金が確実に支給されると思っている国民は少なく、多くの国民は、支払った保険料さえ戻ってこないのではないかと思っているに違いない。
いま、基礎年金の国庫負担割合を、現行の3分の1から2分の1に引き上げが計画されているが、元々は、国庫負担は2分の1だったのを、新幹線や道路など、いわゆる大型開発に予算をつぎ込むために3分の1に削減してきたのは、自民党である。そして、今度はそれを元に戻すために、消費税の増税が必要などと主張しているのである。消費税がない時代には2分の1を国庫負担できていたものを元に戻すのになぜ新たな増税が必要なのか、国民にきちんと説明してもらいたいものである。
また、加入記録そのものがいい加減だというような実態については、早急な改善を望みたい。

「科学」ということ

2007年05月09日 | その他
「科学」というと、読者諸兄はどのようなことを連想するだろうか?
一般に自然科学を連想するが、大学などでは、社会科学というように、歴史や哲学、経済、法律なども立派に科学として研究されている。人文科学という呼び方もある。
一般に、「科学」を研究している人たちは、万人誰でもがそのように認識でき、そのことによって万人に幸福がもたらされるという立場を取っている、あるいは、少なくとも本人はそう信じて研究をしているのが普通である。
しかし、実態は必ずしもそうではない。
特に、社会科学と言われる研究分野では、そのことが顕著である。
たとえば、歴史を例に取ろう。
邪馬台国論争などは、科学的な論争ではなく、東大と京大の学閥間の争いにすぎない。あの太平洋戦争に対する事実認識や評価さえ定まっていないのが、現代「科学」の水準である。
経済学にしても同様である。金利の高低、税金のあり方なども、特定の考え方や特定の立場から見ると、至極もっともな政策であっても、立場が異なれば様々な異論が出るのが普通である。
哲学も同様であろう。社会の様々な発展段階において、支配者にとって都合のよい哲学が流行し、その支配を延命させる役割を果たしてきた。
すなわち、特に社会科学の場合は、研究者がいかに中立的な立場をとっても(あるいは本人がそのように思っていても)、実は、特定の立場に立って物事を研究している場合がほとんどである。にもかかわらず、ほとんどの研究者たちは、自らが立脚するその立場をアイマイにしたままで、さまざまな「科学的な」研究を行っているのである。
自然科学の分野においても、原子力や医薬品などに対する考えは、研究者の拠って立つ立場によって、その評価は異なる。
このような中にあって、マルクスだけは、自らの考えを労働者のための哲学であり、労働者のための経済学であると主張した立場の明確な科学者の一人であったろう。
ケインズなどは資本主義の延命のための方策を必死に模索した人物であるが、自らの立場は明らかにはしていない。相変わらず、私の学説を信じれば、世界万民が幸福になると信じている科学者、経済学者の一人だったのであろう。
社会科学も、自然科学と同じように、ある学説(仮説)を社会的に実行(実験)し、その結果によって、その学説の正しさを証明しなければならない。それによって、その学説は仮説の域を超えて、一つの理論として社会的に評価されることになるのだろう。
科学的な視点で、物事や社会をみるということは簡単だと思いがちだが、そこには、自らが拠って立つ立場がおのずと反映せざるをえない。
我々人間は、生活基盤や立場によって様々な意識、考えを持つようになる。それが、社会に対する考え方の違いとなって表われることになる。
様々な社会の事象に対して、どうして自分はそのように考えたのだろうか?ということを、あなたの置かれた立場、境遇に即して分析してみるのも面白いのではなかろうか。そうすることによって、自分の考えが必ずしも中立の立場からのものではないことに気づくはずである。

投資話の末路

2007年05月09日 | 社会問題
先日のインターネットニュースに、また投資話で騙された話が出ていた。
新宿区にある投資会社2社が、一昨年に相次いで倒産した。債権者は両社で1000人以上、債権額は50億円を超える。破綻直前まで投資を募っていたほか、高額の役員報酬、ずさんな経理処理などが次々に明らかになっている。
被害額は、一人当たりにすれば約500万円である。
先日も、真珠の養殖話で騙された話について論評しておいたが、被害者は気の毒としか言いようがない。
小泉前首相が言っていたように、投資の結果は明らかに「自己責任」である。損をしたからといって、投資会社に文句を言っても仕方がない。
相手が明らかに詐欺である場合は、裁判に訴えて関係者の身柄を拘束することによって、次の被害者を生まないという点では意味があるが、裁判で何年もかかって勝訴しても、投資したお金が返ってくる可能性はほとんどないに違いない。
騙す方が絶対に悪いに違いない。この点は明らかだ。
しかし、こういう投資話にいつも付きまとうのは、騙される側の油断だ。騙された側にも、労せずしてもうけてやろう、あわよくば2倍になるかもしれないというような気持ちが働いたに違いない。
世の中には、おいしい話はそう多くはないのである。自分の足で投資会社を訪問し、投資家にも会って話を聞くくらいの慎重さが求められる。良く調べてから投資していれば、最悪の結果は防げたのではなかろうか。

生産性向上でも、賃金は減少

2007年05月08日 | 経済問題
連休前の古い記事で恐縮であるが、どうしても書かずにはいられない。
厚生労働省の2007年版「労働経済の分析(労働経済白書)」の骨子案が4月26日に明らかになった。
今回の白書では、時間あたりの労働生産性と賃金の関係を分析したことが特徴だ。
それによると、2000年代に入ってから、生産性は上向いているにもかかわらず、賃金はわずかに減少する「異例」の状況となっている。
骨子案では、戦後を1950年代、60年代など10年単位で区切り、生産性と賃金などの関連性を分析した。50年代から90年代までは、生産性の上昇率が高まれば賃金の上昇率も同様に高まるという比例関係があった。しかし、2000年代に入ると、90年代より生産性の上昇率は高くなったものの、賃金は微減するという正反対の傾向を示したと分析されている。
さて、この記事をごらんになって、読者諸兄はどう感じられただろうか?
厚生労働省としては、労働行政を管轄する役所として、精一杯の分析を行ったのだろうが、分析してそれで何をやるの?というのが編集長の率直な感想である。
生産性が向上しているにも関わらず、賃金が上昇しないということは取りも直さず、企業のもうけが企業内に滞留し、労働者に分配されていないということではないか。極めて単純な話だ。
確かに、経団連の会長企業であるキヤノンもこの1年でバブル期にも達成できなかった史上空前の利益を上げている。トヨタ、日産しかりである。
すなわち、日本を代表するこういう企業は、正規職員の採用抑制と偽装請負、非正規雇用者の採用、正規雇用者の賃金抑制、サービス残業など、一部では違法であることを十分に認識しながら、企業ぐるみで推進してきた結果ではないか。
厚生労働省も偽装請負やサービス残業などについて、指導文書を何度か出しており、労働基準監督署も指導に乗り出しているが、全国にある事業所をすべてカバーできるわけがない。焼け石に水というのが実情だ。
こういう企業の横暴を止めさせるためには、厚生労働省として以下のような重層的な対策が不可欠だ。こういう対策こそ、労働白書に示して欲しいものだ。
・偽装請負、サービス残業など法令違反に対する罰則強化。
(特に営業停止、経営者の告訴などを含む)
・最低賃金の引き上げ
・残業代の割り増し率の引き上げ
・長時間労働への法的規制強化
・派遣可能業種の制限
・「派遣3年間で正規雇用」の現行ルールの期間短縮、など
そして、それにもまして重要なのは、国民の世論だ。
普通に働くうえでの当たり前ルールを企業に守らせるためには、企業の「良心」(おそらく持ち合わせていない)に期待していては何も変わらない。
労働者自身の声や行動、労働組合や世論の力が不可欠なのである。

危ない遊園地の遊具

2007年05月07日 | 社会問題
大阪府吹田市の遊園地「エキスポランド」でジェットコースター脱線死傷事故が起きたが、大変驚いたのは、この事故をきっかけに、他の遊園地などがジェットコースターなどの遊具を一斉に点検、整備し始めたことだ。
よその遊園地での事故を見て、慌てて点検を始めるというのはどういうことだろうか。行政から指導があったのかもしれないが、「私の所は十分に点検していますので、安全性にはまったく問題ありません!」と胸を張って営業を続ける遊園地はなかったのだろうか。
要するに、どこの遊園地でもおざなりの管理しかしていなかったという証明ではないか。また、検査の結果、不具合が見つかり、こっそり修理した遊園地も存在するかもしれない。
そもそも、時速75キロというスピードで1キロにわたって繰り返し運転すれば、車軸は加熱、冷却を繰り返すため、回転部の磨耗や損傷が起きるのは当たり前である。それを15年間にわたって、部品の交換さえ行っていなかったというのは杜撰としか言いようがない。
メリーゴーランドのように、動きが緩やかなものでも、主に乗るのは子供であり、それなりの高さもあるので、もし軸が折れたりすれば大惨事になるのは明らかである。
編集長宅の時速4キロで走行するミニSLでさえ、数回の運転でネジが緩んだり、車体のあちこちに不具合を生じたりするのだ。
ましてや、高速で運転される機械の安全性は、鉄道などと同様の厳しい検査が求められるのは当然ではないか。
エキスポランド側は、「法的な責任はない」などと主張しているようだが、このような遊具について、いちいち法律の中に、「車軸は何年に1度は取り替えなくてはならない」などと規定しているわけがない。それを逆手に取って、法的には問題ない、という態度は、今回の事故の結果を真摯に反省しているとは到底思えない。
また、遊園地は子供だけでなく、若いカップルはもちろん、近年では修学旅行などのスポットにもなっており、こういう若者の希望に応える過激なアトラクションが増えている。
しかし、そもそも、ジェットコースター、バンジージャンプなどの安全対策はけっして十分ではない。そもそも危険と隣り合わせの「遊具」なのである。
刺激を求める気持ちもわからないではないが、こういう事故に遭遇したくなければ、なるべく危険な遊具を避けることをお勧めしたい。

松坂投手の不調

2007年05月05日 | その他
編集長は、熱心な野球ファンではない。けっして興味が無いわけではないが、特に応援している選手もいないし、プロ野球中継などで時間を潰すのはもったいないという人種である。
したがって、松坂投手の大リーグ入りなどについても特別の関心を持って見てきたわけではない。
最近、テレビのニュースを見ていると、これでもかというくらい松坂投手のことが報道されるので、むしろ、ウンザリしている人間の一人である。
さて、鳴り物入りで大リーグ、レッドソックスに入団した松坂投手、ここ数試合不調が続いている。
編集長は、この結果を当然のことと見ている。
日本のプロ野球は、ナイトゲームが多い。しかも、最近はドームでの試合が多いため、夏でも空調が効いていて、投手にとっては大変楽なコンディションで投げられるのが特徴である。
これに対して、大リーグでは年間の試合数も多く、デーゲームが多い。投手にとって想像以上にスタミナが要求される。
イチローや松井のように野手ではない。しかも、彼らと松坂の決定的な違いはその体型である。
松坂投手はぽっちゃりした体型で、ここ数年は特に太ってきたように思われる。いかにも暑さに弱い体型ではなかろうか。
これから、ますます暑い季節を迎えるが、要はスタミナとの勝負になると思われる。
多くの野球評論家が、多大な期待を寄せただけあって、地元ファンはもちろん、日本のファンも活躍を期待していたのだろうが、やはり、日米野球の違いを十分に認識したうえで、論評すべきであろう。
いずれにせよ、日本の選手が本場の大リーグで活躍することは、日本のプロ野球の発展にとっても素晴らしいことである。
松坂投手には、調整をし直してぜひ素晴らしいマウンドさばきを見せて欲しいと思っている。

あきれた大銀行の対応

2007年05月04日 | 経済問題
連休の中日に銀行に行った。三菱東京UFJ銀行である。
定期預金を組みたいと思って近所にある旧東京三菱銀行に出かけたのだが、編集長の口座は旧UFJ銀行の系列であったため、この通帳では定期預金が組めないという。定期預金が組みたければ、新たに口座を作るか、旧UFJ系列の店舗でお願いしたいという。
そして、その店舗は?というと、鉄道の駅にして南北にそれぞれ2駅離れた所にある2つの支店を教えられた。
旧東京三菱系列と旧UFJ系列のシステムが統合されていないためだという。申し込みの用紙さえ、形式が異なるという。
合併してから一体何年が経過しているのだろうか。
未だにシステムが統合していないということは、まったくの別銀行と同じではないか。
最近になって初めて三菱東京UFJ銀行に口座をつくった人などには、わけがわからないに違いない。いちいち、この支店は旧東京三菱ですとか、旧UFJですとか表示があるわけではなく、それぞれで受けられるサービスが異なるという表示もない。
銀行の合併に伴って、経費削減のためにキャッシュコーナーや支店などが次々と潰され、サービスは確実に低下した。そのうえ、システムが違うため、特定の支店でなければサービスを受けられない。
一体何のための合併だったのだろうか?
第一勧業と富士が合併したみずほ銀行でもシステム統合のミスで大きな混乱を招いたが、三菱東京UFJでは、未だにシステムさえ統合されていないというお粗末さにあきれるのは編集長だけではあるまい。
最初訪れた旧東京三菱系列の支店で、定期預金の金額と名前を書き入れたところで、係員から通帳を拝見したいというので、見せたところ、上記のような次第となった。一応苦情を申し立てて、その定期預金の申込書をカウンターに置いたまま立ち去ろうとしたら、「こちらの申込書は当方でシュレッダーしておきます」と言う。恥ずかしい金額ではなかったので、「そのまま額に入れて飾っておいて下さい」と皮肉を言って最初に訪れた支店を後にした。
何ともお粗末なメガバンクの実態である。

労働組合とは何か

2007年05月03日 | 社会問題
今日は、憲法記念日である。憲法について何か書きたいと思ったが、以前から書きたいと思っていた労働組合のことについて書いておきたい。
つい先日はメーデーだったし、それほどずれた記事でもないだろう。
さて、編集長の職場にはずっと労働組合がなかった。その後合併をして労働組合ができたが、一応管理職ということで、現在は組合員ではない。したがって、労働組合員になったことは一度もない。
しかし、最近のニュースを見ると、組合を作って残業代を支払わせたとか、解雇を撤回させたとか、非正規雇用者を正規雇用させたとか、労働組合の存在意義が評価される記事が多い。
労働組合とは、本来どのようにあるべきだろうか?
1つは、労働組合の掲げる方針に基づいて、組合員の生活や権利を守る活動を行うということである。これは当たり前のことだ。
第2は、資本とは協調関係を持たないことだ。昔は御用組合などと呼ばれて、会社の言いなりの方針を労働者に押し付けるだけの組合があった。こういう労働組合の幹部を務めて人事担当重役になるなど、組合そのものが出世の近道になっていた組合も存在した。しかし、労働組合というものは、そもそも1人だけでは力が弱い労働者が集まって、会社に対して自らの要求を実現するものであり、こういう組合の存在意義は疑わしい。
したがって、労働組合はあくまでも、会社と一線を画する存在であることが重要だ。
第3は、特定の政党支持を義務付けたりしないことだ。組合員にはさまざまな考え方を持った人たちが集まる。したがって、労働組合の要求、たとえば労働時間の短縮、賃金の引き上げ、サービス残業の禁止など組合の要求に合致することについては一致できても、特定の政党を支持させたりすることは適切ではない。しかし、こういう要求を実現するうえで、法的な整備に取り組む際には政党との共同の取り組みは避けて通れない。要求に基づいて、政党との協力、共同を進めることは意義のあることである。
以前に、総評系の組合では社会党支持を義務付けていた組合もあった。組合費は社会党への寄附に使われ、時には党費さえ賄われていた。要するに、社会党への寄附や党費が組合費という名目で給料から天引きされるわけだ。こういうデタラメな組合運営は破綻せざるを得ない。現在の政党助成金のようなものだ。支持してもいないのに、強制的に税金や給料が使われるというのは異常というほかない。
こういう労働組合としての原則をきちんと守ることが、組合員相互の団結を守るうえで重要である。
最近は、たった一人でも加入できる労働組合が増えている。また、パートや派遣労働者、非正規雇用者でも加入できる組合など、労働者の実態に合わせた組合のあり方を模索する動きも進んでいる。
労働者一人一人の力は本来弱いものである。
だからこそ、労働組合の存在意義があるのである。
いま、労働者の3割が非正規雇用と言われている。こういう現状を打開する上で、労働組合の果たすべき役割はますます重みを増しているに違いない。

コインコンベンション

2007年05月02日 | コイン収集など
貴重な9連休の中日の今日、東京都内のホテルで第18回東京国際コインコンヴェンションが開会した。会場が水天宮近くのロイヤルパークホテルということで、日比谷線の人形町で下車して人形町界隈を歩きながらホテルに向かった。以前にはよく訪れたこの界隈は、10年前とあまり変わっていない。駄菓子屋や懐かしい人形焼の店など昔ながらの街並みが残っている所が良い。
コンベンションの会期は4日までだが、今日は平日なので少しは空いているのではないかと思って出かけたところ、意外に混雑していて驚いた。
コインや切手というのは、いわゆるオタクの元祖のようなものだが、何しろコレクターグッズとしての歴史が長いので、コレクターの多くが60歳以上で若い人や女性は極めて少ない。
ほとんどが、いい年をした親父で、しかも、品がないこと甚だしい。
カウンターに立って商品を見ていると突然割り込んできて突き飛ばされたり、よそ見をしながら歩いている連中が多いので、少し歩く間に誰かがぶつかってくる。とんでもない連中ばかりだ。
ショルダーバッグから突然にボロボロになった「古寛永泉志」を取り出して、チェックを始める親父やルーペで熱心にコインを覘いて係員をつかまえて解説を始める親父など、変な連中ばかりである。
係員との会話を小耳に挟んでも、どうも普通ではない。
こう言ってはなんだが、おつむのネジが2、3本外れている奴が多い。
店の係員も、こんな連中を相手にしなければならないのだから商売とは言え、相当気の毒である。
コインコレクターでない人たちから見ると、私も同様に見られていると思うと、心底情けなくなってきた。
居たたまれなくなり、お目当ての外国銀貨を10枚ほどと紙幣を1枚購入して1時間足らずで早々に退散してきた。
こういう大規模なコンベンションはそれほど開催されないので、全国各地からコレクターが集まってくるのだろう。コインコレクターの人口は確実に減っている。都心部だけでは到底これほどのコレクターは存在しないのではなかろうか。地方に住んでいると、貨幣商もほとんどなく、趣味も満足に楽しめない世の中なのかもしれない。これも大都市と地方の格差の現われであろうか。
また、資産家らしき服装をした連中が熱心に大判や小判など資産価値のありそうな貨幣を買い求めている姿も目についた。
もっとも、処分する際には、購入した価格の半額で売れればいいほうだろう。投資目的で購入するなら、人気があり、誰も文句の付けようがない最高の状態のものを購入すべきである。
PCGSやNGCなどの鑑定済みのコインを売る店も徐々にではあるが増えている。日本では相変わらず、店の親父が適当な評価を付けて売りさばいているが、今後は鑑定機関によって鑑定されたコインが日本に広がることを願っている。
ところで、この会場で「南鐐スタンプコイン」の親父を見かけた。
この店は、山形市内にあり、もうかれこれ20年くらい前に、仕事でしばしば山形に出張していた頃によく立ち寄った店である。
懐かしくて声をかけようと思ったが、向こうは覚えちゃいないだろう。ブースも繁盛していて何よりであった。わざわざ東京まで出かけてきたのだから、しっかり儲けて帰って欲しいと思っている。

政務調査費のあきれた実態

2007年05月01日 | 政治問題
仙台市議が政務調査費を目的外に使用したとして、市民オンブズマンが市長を相手に共産党を除く市議会の6つの会派に合計で2750万円の返還を求めた訴訟の判決で、4月27日に仙台地裁は「調査研究の実態がない」として。約770万円を返還するように市長に命じた。
政務調査費の返還額は、全体の3割であったが、出張については7割が不正であるとし、中には、カラ出張も含まれている可能性も指摘している。
仙台市議会のホームページを見ると、政党色をアイマイにするためかどうか、政党名を名乗らずに、「改革ネット仙台」、「みらい仙台」、「フォーラム仙台」など実態をごまかした会派が3つも存在する。この他に、公明党、共産党、社民党、無所属の会などがあるようだ。
この不正使用に加担したのは、共産党以外の6会派と報道されているが、現在の会派と同一かどうかは新聞報道などでは不明である。
政務調査費については、昨年の11月に目黒区の公明党区議団による不正使用が発覚し、区議6名が全員辞職するという事件を発端に、品川区での自民党区議による不正使用、越谷市でも公明党区議団による不正使用などが次々に発覚し、大きな問題になってきたが、今回の仙台市議会の不正使用も、氷山の一角に違いない。
小泉政権時代に、国民は「改革」という言葉にだまされ、熱狂的な支持を与えてきたが、実際に行われたのは、大企業のための規制緩和による格差の拡大、郵政民営化による国民へのサービス切捨て、銀行や大企業への税金のつぎ込み、株価の吊り上げなど国民の要望とは無縁なことばかりであり、国民が本当に望んでいる改革は何もなされてこなかった。今回の政務調査費の不正使用などもその一つだ。
政務調査費の適正な使用、使用明細の公開などを早急に行うことが、各政党、議員の使命であろう。
ちなみに、都道府県の政務調査費の実態を少し調べてみた。
金額が多いのが東京都の月額60万円、最も少ない沖縄でも月額25万円である。
47都道府県のうち、無条件で公開しているのは、わずかで、岩手、宮城、長野、新潟、鳥取の5県のみであり、何らかの条件付き、たとえば、1万円、3万円、5万円以上の支出などを公開しているのも、北海道、秋田、三重、兵庫、京都、滋賀、和歌山、山口、島根、高知の1道9県のみである。残りの32都府県は、まったく公開されておらず、一体何に使われているのかさっぱりわからないのが実情である。
今回の仙台市のように、市民が情報公開を求めて、訴訟を行わなければ実態は闇の中なのである。
国民が望んでいるのは、税金の無駄遣いをやめ、高齢者の福祉や子どもの教育、子育て、勤労者や商店、中小零細企業の健全な生活の確保である。
統一地方選挙によって、新しい議員が決まったが、初めての議会では、真っ先にこの政務調査費の削減や適正使用のための条例が制定されることを希望するものである。