時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

生産性向上でも、賃金は減少

2007年05月08日 | 経済問題
連休前の古い記事で恐縮であるが、どうしても書かずにはいられない。
厚生労働省の2007年版「労働経済の分析(労働経済白書)」の骨子案が4月26日に明らかになった。
今回の白書では、時間あたりの労働生産性と賃金の関係を分析したことが特徴だ。
それによると、2000年代に入ってから、生産性は上向いているにもかかわらず、賃金はわずかに減少する「異例」の状況となっている。
骨子案では、戦後を1950年代、60年代など10年単位で区切り、生産性と賃金などの関連性を分析した。50年代から90年代までは、生産性の上昇率が高まれば賃金の上昇率も同様に高まるという比例関係があった。しかし、2000年代に入ると、90年代より生産性の上昇率は高くなったものの、賃金は微減するという正反対の傾向を示したと分析されている。
さて、この記事をごらんになって、読者諸兄はどう感じられただろうか?
厚生労働省としては、労働行政を管轄する役所として、精一杯の分析を行ったのだろうが、分析してそれで何をやるの?というのが編集長の率直な感想である。
生産性が向上しているにも関わらず、賃金が上昇しないということは取りも直さず、企業のもうけが企業内に滞留し、労働者に分配されていないということではないか。極めて単純な話だ。
確かに、経団連の会長企業であるキヤノンもこの1年でバブル期にも達成できなかった史上空前の利益を上げている。トヨタ、日産しかりである。
すなわち、日本を代表するこういう企業は、正規職員の採用抑制と偽装請負、非正規雇用者の採用、正規雇用者の賃金抑制、サービス残業など、一部では違法であることを十分に認識しながら、企業ぐるみで推進してきた結果ではないか。
厚生労働省も偽装請負やサービス残業などについて、指導文書を何度か出しており、労働基準監督署も指導に乗り出しているが、全国にある事業所をすべてカバーできるわけがない。焼け石に水というのが実情だ。
こういう企業の横暴を止めさせるためには、厚生労働省として以下のような重層的な対策が不可欠だ。こういう対策こそ、労働白書に示して欲しいものだ。
・偽装請負、サービス残業など法令違反に対する罰則強化。
(特に営業停止、経営者の告訴などを含む)
・最低賃金の引き上げ
・残業代の割り増し率の引き上げ
・長時間労働への法的規制強化
・派遣可能業種の制限
・「派遣3年間で正規雇用」の現行ルールの期間短縮、など
そして、それにもまして重要なのは、国民の世論だ。
普通に働くうえでの当たり前ルールを企業に守らせるためには、企業の「良心」(おそらく持ち合わせていない)に期待していては何も変わらない。
労働者自身の声や行動、労働組合や世論の力が不可欠なのである。


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