時々新聞社

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タミフルと転落の因果関係、厚労省「否定的」を撤回

2007年03月24日 | 医療・社会保障
インフルエンザ治療薬「タミフル」をめぐる問題で、厚生労働省は22日、タミフル服用と異常行動の因果関係について「これまで『否定的』という見解をとってきたが、虚心に検討する。今後、判断も変わりうる」と述べ、従来の見解を事実上撤回した。
また、服用後に異常行動をとりながら死亡に至らなかった負傷事例を分析していなかったことも明らかにした。
同省によると、転落・飛び降りなどの異常行動による負傷事例は、未成年11件、成年4件の合計15件にのぼっている。これ以外の死亡事例8件は専門家が分析を加えるなどしていたが、負傷事例は副作用が疑われる情報の一覧表に担当者が目を通す程度だったという。医療機関から今月19日の飛び降りが20日に報告された際、過去の事例を洗い直すまで、同省では負傷事例が15件に上ることも把握していなかった。
厚生労働省は、「膨大な副作用情報が入ってくるので、死亡事例からチェックしていた。異常行動をひとくくりにして、中身を詳細に分析していなかった」と、対応のまずさを認めた。
タミフルの副作用が疑われる情報は、2001年2月の発売以来、のべ1763件報告されており、同省は今後、このすべてを検討するという。特に精神・神経系の副作用については、服用の状況や発症の経過を専門家による審議会で詳しく調査するとしている。
これほど世間で騒がれていながら、死亡事例しかチェックしていなかったというのだから、お粗末極まりない話である。
もっと早い時点で確認しておけば、最近の不幸な事例は防げた可能性が高い。
以前にも指摘しておいたことだが、最近1例だけ、タミフルを服用していない10歳代のインフルエンザで飛び降りの事例があるようだが、そもそも単なるインフルエンザ患者が異常行動を起こしたという事件をほとんど聞いたことがない。
タミフル服用時の異常行動の頻度の方がはるかに高いと思われる。
対策が遅きに失したということはあるが、今からでも早急に対策を取るとともに、「疑わしきは患者の利益に」の観点で、今までの負傷、死亡事例への手厚い補償が行われることを希望するものである。
同時に、今回の記者会見の内容を聞くと、「死亡事例しかチェックしていなかった」というのはタミフルだけではなかろう。
他の薬剤でも恐らく同様のチェックしか行っていないということだ。とすれば、薬によって重い障害を受けながら、薬の副作用と認定されないまま放置されているケースはおびただしい数にのぼるのではないかと考えられる。改めて、こういう観点から薬の副作用のチェック体制の強化を望むものである。
タミフルの世界の消費量のうち、日本が約8割を占めているという。日本での副作用の情報は、他国の国民にとっても大変重要な意味を持つデータになる。この点からも徹底した検証が求められる。