時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

タミフル:10歳代の服用に制限

2007年03月21日 | 医療・社会保障
厚生労働省は21日未明、インフルエンザ治療薬「タミフル」服用後、自宅の2階から転落する事故が新たに2件発生したとして、輸入販売元の中外製薬に対し、添付文書の警告欄に「10歳以上の未成年の患者に、原則として使用を差し控えること」を書き加えることを決め、医療関係者に緊急安全性情報を出して注意喚起するよう指示したと発表した。
事実上、10歳代の使用を制限する措置となる。
1件は、12歳の男児が夜にタミフルを飲み、午前2時ごろ、素足で外に出て、近くの駐車場へ走り出した。父親が家に入れたが、2階の窓から飛び降り、右ひざを骨折した。入院後、独り言や、突然笑い出すなどの症状がみられたという。
他の1件は、別の12歳の男児がタミフルを服用、同午後11時半ごろ、家で就寝したが、約30分後に突然2階に駆け上がり、母親に連れ戻された。その後もう一度2階に上がり、家族が追いかけたが間に合わず、ベランダから飛び降り、右足のかかとを骨折した。
いずれも、命には別条がないものの、本人に飛び降りた時のはっきりした記憶はないという。
同省は使用制限のほかに、自宅にいる際には「少なくとも2日間、保護者は未成年者が1人にならない配慮することについて患者・家族に説明する」とも加える。
刑法では、「疑わしきは罰せず」との基本的な考え方があるが、医薬品が本来は国民の健康に寄与すべきものである以上、今回のように副作用が疑われるものについては「疑わしきは罰する」という観点で、規制を行うことが必要であろう。
本紙でも紹介したように、タミフルでは、10歳代の飛び降りなどが相次いでいたが、因果関係が不明との理由で特別の対策も取られていなかった。しかも、タミフルを販売する中外製薬が、厚生労働省の研究班の大学教授2人に多額の寄付を行っていたことも判明している。
これらのことを考え合わせると、そこに製薬会社の意思が入り込み、判断を遅らせたのではないか、との見方も十分に成り立つ。
国民の健康に寄与すべき医薬品によって、健康被害を受けた事例は、数多く存在する。古くは、スモン、また最近でもHIVやC型肝炎感染など薬害は絶えない。
製薬会社の言いなり行政ではなく、「疑わしきは罰する」の視点に立った医薬品行政が望まれる。
さらに、今までタミフルとの因果関係を否定されていた飛び降り自殺などの事例についても、製薬会社として真摯な態度で、早期に必要な補償が行われることを希望するものである。