時々新聞社

慌ただしい日々の合い間を縫って、感じたことを時々報告したいと思います

急増する金属窃盗事件

2007年03月02日 | 社会問題
最近、金属窃盗事件が多発している。
数年前から、アルミ製の民家の門扉が盗難に遭う事件があったが、最近は、道路の側溝のフタ、駐車場などのステンレス製の車止め、半鐘はもちろんのこと、夜間の警備が手薄な工場や工事現場などに放置されている資材や鉄板なども対象になっている。先日のニュースでは、お墓に常備されているステンレス製の線香入れの容器が根こそぎ盗まれたと報じられていた。驚くばかりである。
これらの背景には、中国などでの鉄、非鉄金属の需要が高まり、価格が高騰していることが背景にあると報じられているが、単純にそれだけでは説明できないだろう。
以前にも、高度成長期には金属が高騰した時期があったが、今回のように、公共物を大量に持ち去るなどの悪質な窃盗事件はなかったのではないかと思われる。
こういう窃盗事件が増えている最も大きな理由は、やはり貧困化だろう。
生活保護基準以下の収入しか得られない世帯、ワーキングプアの急増、貯蓄ゼロ世帯が20%というのが今日の家計状況である。職を失い、蓄えもなく、まだ働ける年齢で生活保護さえ受給できなければ、生活に行き詰まった場合は、「他人の物を奪うか、自殺あるいは餓死するしか方法は残されていない」と本紙の記事の中に書いておいたが、いま、こういう金属窃盗事件をみると、まさに他人の物を盗むしか生きる方法がなくなっていることの反映ではなかろうか。
もう一つは、手っ取り早くお金を得る方法の一つとして、窃盗が行われていることである。最近の拝金主義の弊害についても本紙でたびたび取り上げてきたが、地道に汗を流して働くというこことをばかばかしいとするような社会の風潮がこの背景にあることは確実だ。盗む側も、そして、おそらくそれらを盗品と知りつつ買い取る側も、手っ取り早くお金を稼ぐ方法として、何のためらいもなく、こういう行為に手を染めていると思われる。
苦労はあるが、汗水流して働けば、それなりの生活を送ることができた時代は、過去のものになりつつある。こういう現代社会のあり方にこそ、根本の問題が存在するように感じられる。
いくら働いても貧困から脱却できないワーキングプア、青年労働者の3分の1を占める非正規雇用など、夢や希望を持てない社会の中で、行き着く所は、犯罪行為しかないのだろうか?
こういう事件の背景をもっと掘り下げて報道して欲しいと思っている。