絶望と悲惨から光を見出す五木寛之の「他力」
仏教を探求する作家、五木寛之氏のNHKドキュメント連続の第五夜(最終編)を少し見ました。
この最後に五木氏は、様々な宗教がある中で仏教には「寛容」があり、こういった考え方が世界の宗教の対立を解く可能性があると述べました。
争いと戦争を避け、「悪人も救われる(親鸞の教え)」と考え、念ずれば救われると説く仏教の特徴、それは「寛容」なのだろうと、私は理解しました。
五木寛之氏の「TARIKI」(英訳本。アメリカでスピリチャル部門のベスト・オブ・イヤー受賞)を読み、理解しようとするアメリカ人と語り合う五木氏。
その一人が、「あなたは、敗戦後に弟を背負って38度線を越えて帰国し、母が40歳代で、父が50歳代で亡くなり、悲惨な人生を生きてきた。それが『他力』に繋がっているのでね」と話しました。
私が以前から聞いているのは、五木氏のお子さんが障害をお持ちで、大変なご苦労をされていること。
またテレビでは、五木氏はその後に弟さんを亡くされたと聞きました。
そして五木氏は言います。
日本の敗戦という絶望。その後も悲惨なことが続く社会環境。
しかしこれらを受け入れ見据えて、そこから光を求めるしかない。
そのとき人は、生かされていること、慈愛を感じることができる。
私は正確に理解できていないかも知れませんが、「他力」とはこのように、自分の努力だけではどうにもならない現実を素直に認め、そこから光や可能性を見出そうとする考え方だと思います。
これが、「寛容」の生き方でもあると思います。
私は改めて、「世の中にすべて良し(ハッピー)はあり得ないのだ」と納得しました。
人によって程度の差はあっても、人はみな絶望や悲惨を体験しながら生きていると思います。
辛くて自殺したいと思うことさえあります。
あるいは、「自分はなぜ生きているのだろうか」と疑問に思います。
そこから「他力」に気付いていく仏教。
いまの混沌とした世界の中で、五木氏の著書「他力」は、初めは「大河の一滴」かも知れませんが、やがて多くの人々の心を救うかも知れないと感じました。(会田玲二)