パソコンに向かう原稿執筆に疲れて何気なくテレビをつけたら、千昌夫が歌った遠藤実作曲の大ヒット曲「星影のワルツ」が、実は3年間も売れなかったという物語を放送していました。
作曲家・遠藤実は素晴らしい作品をたくさん残しましたが、思うように行かない仕事も多かったようです。ミノルフォンというレコード会社は、遠藤実のミノルを取った自分の会社でしたが、赤字が続いて大変に苦労して、最後にはこの経営から手を引いて作曲に専念したそうです。
「星影のワルツ」は、作詞を渡された遠藤実氏が“本当にすぐにすらすらと曲が出てきた”歌だと言います。それは奇蹟のような作曲だったようです。
しかし、これがまったく売れなくて落胆。この間に、千昌夫が夜遊びばかりして遠藤実氏から勘当されて、バーで働いたりして3年間を過ごしたそうです。
「星影のワルツ」が少しでも売れて欲しいと願う千昌夫は、バーのジュークボックス・リクェスト曲の合間合間に、「星影のワルツ」ばかり掛けていたそうです。するとそのうちに、「星影のワルツ」を何回も掛けては涙するホステスがいました。
これを見た千昌夫は、「この曲は必ず売れる!」と確信したそうです。そして師匠の遠藤実も別な所で、「星影のワルツ」に涙する人を見て「これは売れる!」と確信。すぐに、千昌夫を呼び戻したのだそうです。
あれほどの大ヒット曲が実は、3年間も売れずに苦労したとは、少しも知りませんでした。物事には、苦労や下積みの期間があるものなのですね。
この苦労物語の中で、初めて紅白歌合戦に出場した千昌夫の「星影のワルツ」に、私は涙がにじんできました。物語を聞いたあとでは、それは実に胸にじーんと来る感動的な歌でした。
世の中にはトントン拍子の事ばかりがあるのではないと、つくづく感じさせられました。(会田玲二)