「裁判員制度」の不思議ポイントの一つ
田中早苗という弁護士がいる。いつも一般「くにたみ」の感覚で日本の司法制度や現場での警察の法律の適用のやり方などの問題点を、
判りやすくコラムに書いているので愛読している。(美しい人だからとかは関係ありません)
最近の「裁判員制度」についてのコラムの結語は、『日経の5月20日付け社説は、「負担感の大きな要因になっている刑事罰付きの裁判員の守秘義務は、
経験を伝える妨げである」「守秘義務の見直しは、真っ先に検討すべき課題だ」としている。同感だ。』
全文はこちら。
♪確かに、一般国民を裁判にかませておいて「内容を100%口外するな」と口封じするというのは、政府のやることには黙って従えと言う明治政府時代からの強圧姿勢が透けて見える。
ちなみに田中弁護士は以下のような論評も書いています。
「逮捕は警察の都合で」
最近、マス・メディアの情報源を刑事訴追しようとする動きが目立っている。
読売新聞の記事が理由で、自衛隊員が自衛隊法の秘密漏示罪で書類送検されたり、講談社発行の単行本の記述で、少年事件の鑑定医が秘密漏示罪で起訴されたりしている。
情報源を刑事訴追することで、情報源となろうとする者やメディアを萎縮させよう――。そういった効果を警察・検察側は期待しているかのようだ。
○逮捕・起訴に当局の恣意はたらく可能性
「立川反戦ビラ事件」がよい例だろう。イラク派兵反対のビラを自衛隊官舎に配布した者を住居侵入罪で起訴した事件だ。住居の平穏・プライバシーが侵害されたならば、
損害賠償責任を課せばいい。おそらく認められる損害もたいした金額ではないとおもわれるが、この事件では、ビラを配布した者が逮捕され、なんと75日も拘束されていた。
この事件以降、商業広告のビラ配布行為を摘発されたという話は聞いていない。商業広告ならOKで、イラク派兵反対のビラはNGなのか。
表現内容によって恣意的に逮捕し、起訴しているかのようにも受け取れる。
一橋大学大学院教授の王雲海氏(比較刑事法)は、著書「日本の刑罰は重いか軽いか」(集英社新書)の中で、日本の法制度を中国のそれと比較している。
王氏は、中国では500人民元(約7千円)以上でなければ窃盗罪とはならないが、日本では石鹸3個でも窃盗罪になるなどの例を挙げ、
住居侵入罪・威力業務妨害罪などのように、日本の法律におけるほとんどの罪名と迷惑行為の種類は、小さなことでも犯罪として処罰することが可能であると言う。
また、「アメリカ人弁護士が見た裁判員制度」(平凡社新書)の著者、コリン・P.A.ジョーンズ氏は、後部座席シートベルトの着用義務を例に、著書でこう述べる。
当初は高速道路の出入り口だけで取締りをするとか、当分は注意だけですませるとかの報道があったが、いつどこで法律を執行するか、
お役所自身が公言できるということは、日本では法律はお役所のものであり、市民の遵守までがお役所の都合次第になる――。
つまり、日本は、小さなことでも逮捕され、起訴される可能性があり、しかも、それが警察・検察の恣意によってなされる可能性がある社会だというのだ。
西松建設の違法献金事件では、小沢一郎民主党代表の公設第1秘書が逮捕された。
元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏は、毎日新聞(3/22日朝刊)の取材に「総額が2100万円で、しかもすべて表の寄付。
その名義を偽った疑いがあるというだけの今回の事件は、規模、様態とも極めて軽微であることは否定できない」と語っている。
○「西松事件」で立件のハードル下がった?さらに記事では、2004年に発覚した日本歯科医師連盟をめぐる政治資金規正法違反事件の際に、
1億円の裏献金を受けた村岡兼造元官房長官は在宅起訴されたが、3000万円を迂回献金されながら収支報告書に記載しなかったとされた
山崎拓元自民党副総裁は不起訴となったことを指摘している。そのうえで、他の検察OBが、立件するか否かの「ハードル」を
「下げたと受け止められても仕方がない」と述べたという話を紹介している。
今回の西松建設事件も、法の適用があまりにも恣意的になされている印象を与えるから、批判の声が大きいのだろう。
きょう24日は小沢代表の秘書の勾留期限。検察は起訴するのか。事件の真相は如何に。
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