中国を率いるニューリーダーたち
11月13日 15時30分NHKニュース
焦点は最高指導部争い
中国共産党の8200万人以上の党員を束ねる政治局常務委員。
その一握りのメンバーが中国における最高指導部です。
現在、常務委員の数は9人で、すべての政策を決める立場にあるとされ、チャイナ9とも言われています。
常務委員は、68歳になると引退するのが慣例で、9人のメンバーのうち、とどまるのは僅か2人。
それが、序列6位の習近平氏と、序列7位の李克強氏です。
序列の高い習近平氏がトップの総書記に、李克強氏が次の首相に就任することが確実視されています。
今回の党大会では、意思決定を迅速にすることなどを理由に、政治局常務委員は、2人減って7人になるとみられ、習近平氏と李克強氏を除く残る5人の枠を巡る争いとなっています。
習近平氏〜長い下積みから13億人のトップへ
13億人の中国国民を率いることになる習近平氏。
父親もかつて副首相などを務めた共産党の幹部で、高級幹部の子弟グループ、「太子党」の1人です。
しかし、その人生は順風満帆だったわけではありません。
習近平氏は、15歳のとき、文化大革命で、内陸部・陝西省の貧しい農村に送られます。
山の斜面に穴を掘って作った横穴式の住居で暮らしながら、6年余りを過ごします。
当時を知る男性は、習近平氏について、「不平不満はひと言も漏らさず、誠実な人柄で決して多くは語らなかった」と証言しています。
文化大革命が終わりに近づいたころ、名門の北京の清華大学へ入学。
その後、共産党幹部への道を歩んでいきますが、みずから志願して地方の農村の幹部を務めるなど、地道にキャリアを積んでいきました。
25年間におよぶ地方勤務で培った政治的なバランス感覚も強みとなり、5年前の党大会でいわば2階級特進で、最高指導部入りを果たしました。
習氏の妻は国民的歌手
今でこそ、次の中国のリーダーとして注目を浴びる習近平氏ですが、かつては妻の方が有名でした。
妻は、国民的歌手の彭麗媛さんで、中国における紅白歌合戦に毎年出場するような歌手です。
彭さんは、中国人民解放軍の歌劇団に所属しています。
2人が出会ったのは、今から25年ほど前、習近平氏が福建省アモイ市の副市長時代。
習近平氏は、出会ってすぐに妻にしようと決断したと言われています。
容姿端麗で国民にも人気の彭さんだけに、今後、ファーストレディーとしての役割も注目されています。
李克強氏〜胡錦涛氏と同じ“共青団”
次の首相として習近平氏を支えることになる李克強氏。
安徽省の農村出身で、今の総書記の胡錦涛氏と似た経歴をたどっています。
2人とも、党の青年組織、共青団・共産主義青年団のトップを務め、胡錦涛氏にとって李克強氏は後輩と言えます。
共青団は、10代、20代の若い世代が参加する青年組織で全国各地にあります。
各大学にも共青団があり、大学生が団員となってボランティア活動などを行い、優秀な人材から共産党員になっていくと言われています。
李克強氏のように共青団の幹部の経験者は、党内で、強い結束を築いていると言われています。
今回、最高指導部に、どれだけ共青団派が入るかが、胡錦涛氏の影響力を見極めるうえでの1つの目安になりそうです。
また、李克強氏は、若いころ、青年交流のため何度か日本を訪れています。
1985年に、胡錦涛氏が青年団を率いて日本を訪問した際もメンバーの中にいました。
当時を知る人の話では、李克強氏は「胡錦涛氏のそばで、非常にてきぱきと実務をこなす優秀な人」という印象を持ったといいます。
大学の同級生は「みんなで写真を撮るときは必ず人の後ろに立つようなシャイな人だが、道路を歩くときも、ごはんを食べるときも、英単語帳を見ているほどまじめだった」といいます。
実務家として知られる李克強氏が、習近平体制を支えていくことになります。
沈黙する最高指導部候補たち
常務委員の最終的な人選はどうなるのか。
北京の人民大会堂では、今、世界中のメディアが押しかけ、常務委員の候補とされる人たちの言動に目を光らせています。
われわれも共産党大会の期間中、常務委員の候補とされる幹部の取材を続けていますが、どの幹部も人事については、口を閉ざしています。
そのうちの1人、上海市のトップ、兪正声書記は、最高指導部入りの可能性について「それは、まだ早すぎる質問だ」と答えるにとどまりました。
また、同じく常務委員の候補に名前が挙がっている天津市トップの張高麗書記が出席した討論会を取材しましたが、張氏は1時間の討論会の間、ひと言も発しませんでした。
さらに、その後の記者会見でも、質問に答えるのは天津市の部下の幹部ばかりで、張氏は沈黙を続けました。
しびれを切らした香港メディアの記者が「あなたは常務委員になるのか?」と問いただしましたが、重い口を開いた張氏は、「私はまだ天津で働いていますから」と答えただけでした。
最高指導部の選出を巡り、最後まで駆け引きが続いているとも言われ、候補者とされる幹部のいずれの沈黙も公式の場での失言を恐れてのこととみられています。
また、習近平氏や李克強氏が参加する討論会は、外国メディアを排除する徹底ぶりです。
新たな最高指導部は党大会が閉会する翌日、今月15日に発足することになっていて、中国を率いる新しいリーダーたちの顔ぶれに世界の注目が集まっています。