【有本香の以読制毒】“ザル入国”停止も…依然として例外あり 「春節」直前にビジネス往来解禁の可能性、入国者の行動制限もせず 背景に二階氏界隈への配慮 (1/2ページ)
- <iframe frameborder="0" marginwidth="0" marginheight="0" scrolling="no"></iframe>成田空港では、スマホを利用した新型コロナの質問票提出も行われている(共同)
同時に、先週の本コラムで政府の対応を厳しく批判した、中国や韓国など特定11の国・地域との間での「ビジネストラック(ビジネス関係者らの往来)」も一時停止されることとなった。
当たり前の措置だ。自国民には「経済活動を犠牲にしても家から出るな、移動するな」と連日言う一方で、「ビジネスを止めないため」に外国人の入国は許すというのだ。しかも、他国のような厳格な隔離を義務付けない、ゆるゆるの滞在許可。こんなフザけた対応を続けているようでは、「菅義偉政権は春までもたなかった」という声が自民党のベテラン議員からも聞かれた。
遅過ぎた感はあるが、停止されたことはひとまずよかったと言いたいところだが、本件にはまだ3点の懸念がある。
第1は、依然として例外が認められていることだ。報道では「外国人の入国全面停止」という見出しが打たれていたが、実際のところは今後も「特段の事情」のある外国人の入国は認められる。この「特段の事情」を明文化しないところが気持ち悪い。
第2の懸念はタイミングだ。緊急事態宣言は来月7日までとされている。その4日後の11日は、中華圏の大休暇期間「春節」の元日。ご存じの通り、例年この春節に中国からの観光客がどっと日本に来るのだが、まさか緊急事態宣言明けと同時に、ビジネストラック停止も解禁するのではないか。そんな疑いは与野党の国会議員も口にしている。
第3は、この期に及んでも政府は、入国者の行動制限と監視に乗り出す構えを見せていない。新たなウイルスの流入を防ぐため、入国者に一定時間の隔離を義務付けることは「感染症対策の基本のキ」であり、他国ではこれに反すると重い処罰がされる。
ちなみに台湾では最高300万円程度の罰金が課せられる。もっとも、これは外国人に限ったことではなく、帰国した日本人についても同じく厳正な隔離を義務付けるべきではある。
日本政府がこのような「ザル入国」を一向に改めない背景を取材すると、次のような声が聞かれる。特定産業界と特定の権力者らへの配慮だ。特定産業界とは、技能実習生らの外国人労働力に頼る業界のほか、インバウンド関連の業界だという。こう聞くと、どんな権力者への配慮かは問うまでもない。菅政権の命脈を握るといわれる、自民党の二階俊博幹事長界隈(かいわい)だ。
しかし、こうした永田町の「大人の事情」により、巷の飲食店はじめとする国民が悲鳴を上げるのだとしたら、あまりにも間尺に合わない。せめて、特別給付金の第2弾ぐらいただちに実施すべきではないか。
■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。