BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

青春の残滓

2019年04月30日 | その他
およそ数十年まえの青春の残滓ともいうべき手紙や写真に火をつけた。文字が書かれた便箋は封筒から取り出し、
一枚一枚紙は黒く焦げ、しばして白い灰となった。鉄の棒でかき回してみたがみんな燃えた。もし残りカスでも
あったらその白い部分を取り出し、お守りにでもしょうとしたが、みごとに燃えた。
いわば青春の蹉跌であり後悔であり、今一度読みなおし、その残像が溜像となって心に留めた。もうだれにも知ら
れることは無い。だが紙が燃えても当事者は生きている。不思議な感覚だ。
小さな段ボールにまとめて取っていたが、この先いつどうなるか分からない。他人に無用な混乱は与えるべきでな
いのだ。あの時やあの頃、あーそうだったのだと改めて想う。
ただどうしてもある一組の元夫婦からの長い手紙は、燃やせなかった。もし見られても問題の無い長い長い手紙だ。
いずれかの日、安い段ボール製の棺桶にでも一緒に入れて、今度こそは燃やして貰おう。その理由はアタシだけの
秘めたもので、だがそれも白い煙になるだろう。
それが何にも残せなかったアタシの人生の、本当の最期に相応しい。