BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

寒風の王

2018年02月11日 | 古本
以前「噂の眞相」記者だった西岡 研介氏の作品があった。タイトルがあんまりで悪い予感がした。
読むとやっぱりでJRのいくつかに分かれた組合員同士の埒も無いいざこざが延々と描かれている。
まるで子供のケンカのようで、大人の分別が無く読んでいてアホらしくなる。たまたま旧交を温め
為の他の組合の呑み会に参加しただけで、所属する組合から執拗なイジメや嫌がらせにあう。JR
東日本首都圏の呆れた腐った組織のあれこれ。これでよくもそんなに事件事故も無く、運行している
ことが不思議なくらいだ。組合が違えば話をしたり、普段の呑み会、結婚式などにも呼ばないと聞い
ていたが、これほどだとは。果たしてJR北海道はどうなのか、かずかずの不始末も関係ありや。
読み進む程に嫌な気分にさせられた、アタシの珍しい読書体験。
 「マングローブ」 著者 西岡 研介  講談社 1600円+税
  ( 2007年7月6日 第2刷発行 )

小学2年の終わりまで、富良野市の山部にいた。家は農家で馬を1頭飼っていた。農業の一番重要な
働き手だった。馬なくして農家は成り立たなかったのだ。だから家族からは一番大事にされていた。
飼葉の食いが悪いとか、よる敷き藁に寝込んでいたりすると、随分父親は心配で何度も馬屋にいった。
子供の頃の学校帰り、4キロの道のりをトボトボひとりで歩いていると、父親が町の用事から追いつき、
「ほらっ乗れ」といって馬の背に乗せられた。ところが前に乗せられると馬の頸椎骨が尻にごつごつ
当たっていつも痛かった。でも我慢するしかなく、文句などは言えないのだった。

明治も初期のころからの6世代に続く平成まで馬と生きた馬喰の末裔までのお話し。語彙の使い方も
文章もそれほど上手いとは言えない粗削りだ。でもアタシは知っている。酪農や羊を飼い、それらの
世話をしながら、睡眠時間を削り少しの時間をみつけてはパソコンに向かう河崎さんという書業だ。
その書業は骨太でいかにも、道東の寒い風土に醸造された人が生きるという生活そのものだ。彼女し
か書きえなかった物語。本書は2014年 三浦 綾子 文学賞受賞作。アタシはなんの異存も無い。
 「颶風の王」 著者 河崎 秋子  角川書店 定価1600円+税
  ( 2015年7月30日 初版発行 )