自遊空間、 ぶらぶら歩き。

日々見たこと、聞いたこと、読んだこと、考えたこと

オレがマリオ(文藝春秋)~俵万智さん

2014-04-27 | 

本のタイトルとなった歌です。

「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ

 

この「島」は沖縄県の石垣島
2011年3月11日、俵さんは東京の新聞社の会議室にいました。ご両親と、土の園庭のある幼稚園に入れたいと、東京から引っ越した息子さんは仙台にいて、再会できたのは4日後だったそうです。

翌朝、息子さんの手をひいて、西へ西へと避難し、縁あって俵さんと息子さんは今、石垣島に住んでいます。


まだ恋も知らぬ我が子と思うとき「直ちには」とは意味なき言葉

子を連れて、西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え

・・・誰が言えるでしょう。
原発事故収束宣言を早々と発表した、野田元首相、五輪招致で福島はアンダーコントロールされていると述べた安倍首相。だったら、福島原発の近くに家を建てて暮らせますか?

 

世話になる人に頭を深々と下げる七歳板につきたり

醤油さし買おうと思うこの部屋にもう少し長く住む予感して

子どもらはマングローブの森に消え「あった」とかすかな声が聞こえる

ストローがざくざく落ちてくるようだ島を濡らしてゆく通り雨

夕暮れの水族館をめぐりゆく家族ごっこをエイが見ている

シェルターのように敬語をつかわれて牛タンネギ塩じんわりと嚙む

窓側のカップルは「行く」通路側の私は「帰る」夏の石垣

男同士の会話を思う 君と子を乗せて見えなくなるゴーカート

エレベーター八階ぶんの口づけを監視カメラに残す新宿

 

341首を収めた第5歌集は、前半が震災から石垣島に住む現在まで。
後半は前歌集『プーさんの鼻』(2005年)から震災までに詠んだ歌を集めたものです。

小学生になった息子さんの父親の影もちらりと垣間見られますが、極彩色の自然の中にずんずんと入り込む逞しい男の子と母親に、今は迷ったり、立ち止まったりする時間などないように感じます。

 

 

 


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