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《 しりとり名曲大全集 》 ( 第20回 )『スターレス』(キング・クリムゾン)Text by ハウリンメガネ

2022-01-02 14:29:33 | 編集長と副編集長の名曲紹介「しりとり名曲大全集」

読者の皆様、あけましておめでとうございます!
新年一発目は名曲しりとりからスタート!
回ってきたお題は「ス」!
せっかくの新年回ですので出しましょうこの曲を!

『スターレス/キング・クリムゾン』

はい!
現ラインナップのコンサートでも
最後半やアンコールで演奏されることが殆どであり、
ラークス期クリムゾンの終焉を飾った、
クリムゾンファンの中でも人気の高い曲
それが「スターレス」!今回の回答であります。

そもそもはアルバム
「Starless and Bible Black(暗黒の世界)」
収録の予定が何故かお蔵入りになり、
最終的にはラークス期最後のアルバム「Red」
のエンディング曲として収録された本曲は
ラークス・クリムゾンが練り上げてきた
爆発的な演奏と1stから培ってきた叙情性が一体化し、
崩壊寸前の混沌を「美」へ昇華したまさに「名曲」!

メロトロンのストリングスと
フリップ先生のロングトーンギターが宇宙の終着点を想起させる、
寂しさと壮大さを持ち合わせたイントロ
(ブルフォードのシンバルがまた美しい)。
ジョン・ウェットンの声で歌われるのは
自身の内部に存在する内宇宙。
星ひとつない暗黒。聖なる暗黒。

それに呼応するように
メル・コリンズのサックスが
物寂しくも力強いメロディとサウンドでレスポンスを入れて行く。
演奏のテンションはレッドゾーンだが、それに引っ張られないよう、
重く、深く、丁寧に宇宙の静謐を描くクリムゾン。

そして始まる崩壊。
徐々に各々のパートが楽曲の重力から逃れ、
新たな局面へ向かおうとフレーズを変化させていく。
ゆっくりと、だが確実に進んでいく崩壊。
そして先生のギターが混沌の中へ飛び込もうとその速度を加速させ……
ついに訪れる臨界点!

すべてのパートが一気に加速する!
ウェットンのベースもブルフォードのドラムもメルのサックスも
無論、先生のギターも、
全てが重力から解き放たれたように混沌の中を奔放に駆け巡る!
メルのサックスが秩序を取り戻さん、とテーマメロディへ戻るが、
バンドはまだ「混沌こそ我が墓碑銘」と云わんばかりに
再度の加速とインプロ、自壊と再生を繰り返す!

(ここでの先生、ウェットン、ブルフォードのインタープレイの応酬、混沌の中、全てが一つの終焉へ向かおうとするこのパートこそパワートリオが到達する最高の到達点の一つだと断言しておこう。聴かずに死ねるか!)

メルが奏でるテーマメロディの中、バンドは勢いを止めず、
ようやく、もはや自壊するエネルギーを失ったように
最高潮のテンションの中で曲は終わる。
だが、終わったのはあくまで曲の再生である。
再生が終わった後の静寂、それこそが「スターレス」である。
あの演奏を聴いたあとに感じる脱力感、あれが「スターレス」である。

ふと夜空を見上げた時、星の見える空の中、
心の中に浮かぶ星ひとつない、聖なる暗黒。
それが「スターレス」である。

聴け!
聴けば分かる!
この曲はそれぐらいのポテンシャルを持っている!

とまあ、原曲は上記の通りの名曲ですが、
個人的に、現ラインナップでのスターレスも捨てがたい!
写真のアルバム「ライブ・イン・シカゴ」は現ラインナップ
(正確にはビル・リーフリン氏在席時の8人編成期)
の作品中でも傑作の呼び声高き名盤ですが、
こちらでのスターレスは混沌ではなく、
インタープレイを含んだ秩序ある組曲としての
魅力ある曲に仕上がっております。

(それは同時にジョン・ウェットンとビル・ブルフォードが如何に奔放なプレイヤーだったのか、という証明でもあるのですが)

ジャッコの声はウェットンとは違うし、
トニーのベースもまたウェットンとは違う。
ドラムは3人だし、フリップ先生のアプローチも含め当時とは違う。
けれども、スターレスという曲の魅力は薄まるどころか、
オリジナルとは違う輝きを放っており
「ああ、クリムゾンとはやはり進化することと同義なのだ」
と実感できる名盤であります!

ああ、昨年21年の来日公演での興奮未だ醒めず!

そんな私が書いた「クリムゾン来日ライブ評」も是非熟読を!(↓)

https://blog.goo.ne.jp/12mash/e/da7d09050a49e6e18f981ed2b0fbeb7d

というわけで、名曲しりとり、
次回も今回同様『ス』であります!
(編集長、よろしく頼んます)

それでは本年度もご愛読のほど、よろしく!
ハウリンメガネでした!

《 ハウリンメガネ筆 》