まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

幕張ベイタウン協議会の発足

2011-10-15 19:38:14 | 建築・都市・あれこれ  Essay

今月幕張ベイタウン協議会が発足し、そのことを伝える幕張ベイタウン協議会NEWS1号を私のもとにお送りいただきました。私はベイタウンの中のコミュニティ施設であるベイタウン・コアを設計した関係で、今でも住民の方々とお付き合いさせていただいています。

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(上写真:団地にはないまち並みが続きます)

幕張ベイタウンは従来型の「団地」ではありません。中層の沿道中庭型集合住宅に2万人の人が暮らす「あたらしいまち」です。街路・まち並みとの関係を失った「団地住棟」ではなく、街路に面した建築で街路とまち空間をつくってきた画期的な試みによって出来上がったまちです。私の大学時代以来の先生方が先見性とリーダーシップを持って県の人たちや住民の人たちと一緒につくってきたものです。

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(上写真:ベイタウン祭りのときのベイタウン・コアです)

ただそのまちも底地権をもつ地主であり開発者でありまた計画を通してコントロールしてきたプロデューサーでもあった千葉県企業庁が閉庁する(2013年)ことで新しい局面を迎えようとしています。

具体的には企業庁から千葉市に公共空間や公共施設が移管されることで、例えばゴミの真空輸送、高いデザインの質を持つ道路空間、公園などその水準が保たれなくなる恐れも出ています。

そんな中で、いつもすごいと思うのは、住民の皆さんが自ら協議会をつくって町全体で議論を深め、自分たちで課題を整理し行動に結び付けようとしていることです。ベイタウン・コアを設計していた頃の皆さんの顔が浮かびます。今度も自立的、主体的に取り組もうというわけです。

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(上写真:ちょっと古い写真ですがわたしも皆さんと一緒にベイタウン・コアの中庭でカレーパーティに参加しています)

その活動組織として幕張ベイタウン協議会を発足させたことが、送ってきてくれたNEWS1号に掲載されています。景観法を上手く活用しようという試みもあるようです。私も色々な自治体で景観計画や条例づくり、運営に携わってきているので協力できることがあればぜひご恩返しにお手伝いしたいという気持ちになります。

小さくともきらりと光るベイタウン・コアを作りたい、どこにもない自分たちの誇りとなるコア・ホールにしたいということで住民主権の最も進んだ事例をつくってこられた人たちです。今度も時代を先取りした新しい仕組みを作り出し、美しく暮らせるまち幕張ベイタウンにとって意味のある果実を生み出すことを確信しています。


ミュンヘンミュージアムクォーター(2011視察19)

2011-10-15 18:28:37 | 海外巡礼 Europe

最終日に空港に向かうまでの時間、路面電車でミュージアムクォーターに向かいました。

ミュンヘンの路面電車のデザインはストラスブールやアウクスブルクのように洗練されたものではありませんが、いわゆる日本人にとっての路面電車というイメージにはぴったりきます。

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ミュージアムクォーターには次のようにいくつかの美術館が集まっています。

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入り口ではいきなりチリダの彫刻が迎えてくれます。

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シュテファンブラウンフェルス設計の現代美術館です。

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建築もコレクションも素晴らしい。

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斜めに切り取られた平面や、コルビジェ的な丸柱とスラブの関係など、シュルテス設計のボン美術館を髣髴させます。ロトンダのアイデアも似ている。しかし、悪くない・・・のですが、私が驚いたのはその近くにできていたMuseum Brandhorstです。

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現代美術館との関係は下の写真で分かるでしょう。

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あるいはBrandhorstの中から現代美術館が望めます。

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この美術館には色々驚かされました。そもそもここにこういう美術館があることを知らなかったので館の人に誰の設計ですかと尋ねるしかありませんでした。ベルリンのザウアーブルッフ+ハットンSauerbruch Huttonというドイツ人とイギリス人の共同事務所でした。私には新しい名前でしたが著名な事務所のようです。

まず外壁です。日本でも最近多いセラミクスの中空ロッドです。しかし、色と内側の仕掛けが違います。セラミクスロッドの背後にはストライプ状に彩色した折板状のsheet metal skinが尾根を水平にした状態でセットされています。

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距離によって7変化です。

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もっと離れるとこんな感じです。

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このロッドだけでなく、上下にボリュームを二分割するガラス面の形状とプロポーションも大変良い感じです。

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中もダニッシュオークを基調とした大変温かみがあり、かつ現代アートの背景としてすっきりとしたさわやかさを持つ空間です。

きりがないので中については別の機会に紹介します。

都市デザイン的な観点からの紹介も別に譲ります。

この建物は写真から見ると大変強く主張をしているようですが、実は環境の中に溶け込んで落ち着いた雰囲気を作り出しています。どちらかというと控えめでもあるほどです。

ブラウンフェルス設計の現代美術館は、形や空間に分かりやすいメッセージをこめて見る人に働きかけてくるような感覚を持ちました。それはそれでよいと思いましたが、Brandhorstの方は(7変化してつかみどころのないところがあるからでしょうか)こちらからどういう意図がこめられているんだろうと考えたくなる・・・そんな魅力を持った建築です。

学ぶ所の多い建築に出会うことができました。


バイエルンミュンヘン・アリアンツアリーナ(2011視察18)

2011-10-15 15:40:41 | 海外巡礼 Europe

アウクスブルクから帰ってきたあと、夕方になってしまいましたが、気になっていたものを見に出かけました。まちの中からUバーンで7,8駅でしたでしょうか。北に向かいます。

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バイエルンミュンヘンの本拠地アリアンツアリーナです。

スイスの建築家ヘルツォーク&ド・ムーロンの設計です。北京オリンピックの鳥の巣の設計者です。あるいは青山のプラダビルを挙げても良いかもしれません。ロンドンのテムズ川南岸の発電所を改装してイギリス最大の現代美術館となったテートモダンも彼らの設計です。

独特の素材感覚、表層感覚です。上に上げた例ではテートモダン以外小さな単位を繰り返して独自の存在感を獲得しています。

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中には試合の興奮冷めやらぬファンが残っています。

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アリーナはFRPのようなひし形半透明樹脂でクラッドされていますが駅のほうはテントです。これも同じ設計者ではないでしょうか。小さな単位のくり返しでこれほど美しい効果を得ることができるのです。

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ミュンヘン・まちと川(2011視察17)

2011-10-15 13:53:06 | 海外巡礼 Europe

ドイツは近自然護岸や生態系に配慮した河川システムの研究や実践において世界を一歩先んじています。日本でも先進的な自治体や研究者は以前からドイツとの人的交流などを盛んに進めています。そのことを私は建築家であり水系研究者のKさんから何度かきいたことがありました。

そこで、今回ミュンヘンを訪れた際に都市内河川を自然の流れに変えた例として有名なイザール河畔ものぞいてみました。

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近年までほとんどのヨーロッパの河川は全ての部分で人の手が入った人工河川でした。船の通行、洪水コントロール、水力発電といった人間側の都合で、ダムが多く、垂直護岸によって固められた運河のようになっていたわけです。

ただ20世紀後半から大きな考え方の転換が行なわれました。洪水を調整する点でも、生態系の回復という点でも、人が川を楽しむという点でも自然に近い状態にしたほうが優れた効果が得られるとの認識です。次第にコンクリート護岸や不自然な土手が撤去され、河原のある川が復活してきたのです。

ミュンヘンのまちの中を流れるイザール川では1998年から取組みが始まっています。私は以前、川の中洲にあるドイツミュージアムでモノを徹底して収集・展示する精神に圧倒されたことがありますが、実はそのミュージアムの周りが今上の写真のように市民のリクリエーションの場所になっています。

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ここが大都会ミュンヘンの中心部で、上記の博物館以外にも劇場やミュンヘンフィルのホール、図書館、そして市民温泉(プール、Volksbad)の密集する文化、娯楽地区であることが信じられません。

そんな中に、奥多摩秋川渓谷のような河川リクリエーションの場所があるのです。以前の状態も日本人の目には自然豊かな緑地でしたが、川からいきなり緑地が立ち上がっていた状態だったものが改善されたようです。

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さてまちなかでのスナップを何点か紹介します。

本家ベロタクシーです。

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ところで、川のすぐ近くにあるイザールタワー(14世紀の城門)に併設された博物館(Valentin Museum)にはミュンヘンの歴史が紹介されています。

次の写真は20世紀初頭のまちの中のいわゆる長屋(lowhouse,nietrige hauser)です。4分割されて居住され、家畜も飼われていたとのことです。道路も汚なくでこぼこであった紹介されています。

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木造瓦葺のように見えます。このように柵で囲われた一軒家タイプの住宅が町家形式に変わりつつ街路に沿って並び、中央に空地を持つ街区が形成されて今に至るというのがドイツの町の標準的な姿です。

日本はもっと清潔でしたし、庭にはもっと樹木があったと思います。また、住居形式や住まい方も全く違っていました。しかし、一軒家タイプの木造住宅が都市の中に多く存在していたという意味では、上の写真と同じような状況だったのでしょう。その後ドイツは建築形式として集合化に向かい、日本はそのまま一軒家で都市を構成するという道をたどったわけです。


アウグスブルグにもアーバンセンター(2011視察16)

2011-10-15 13:24:33 | 海外巡礼 Europe

9月10日は公共交通整備を通した歩いて楽しい街中づくりを進めるアウグスブルグを訪れました。

アウクスブルクはミュンヘンから鉄道で40分ほどの距離にあります。この路線はドイツの中でも幹線ということになり大変便利です。

日本人から見るとミュンヘンの郊外都市のようにも思えますが、実は都市としてはドイツでも最も歴史あるローマン古都です。ちなみにミュンヘンは12世紀にヘンリーライオン王によってつくられた中世都市を起源としています。アウクスブルクの人口は26万人ほど、私たちの関係するところでは照明メーカーのOsramのあるまちです。

この町は中世からルネサンスへと繁栄を続け、15から17世紀のフッガー家の時代に隆盛を極めます。

そのまま残っていればウルビノと同じくルネサンス建築のまちとなったのでしょうが残念なことに第2次世界大戦により、中心部が破壊されます。驚いたことにまちの観光の中心でもある市庁舎も再建されたものだとのことです。

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上の写真は市庁舎外観と黄金の間の天井です。

閑話休題。モダニズム建築は天井面を照明や空調の吹き出し口を治めるたいらな面にしてしまったのですが、天井をもう一度考えることが、デザインのブレイクスルーになるような気がしています。

さて、市庁舎の前はやはり市民の集まる広場です。

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路面電車やバス、郊外電車、駐車場を計画的に配置し中心部を歩行者ゾーン(Fussgangerzone)にしているのです。

次の写真を見ると歩行者空間とまさに路面電車が共存しているという雰囲気が分かると思います。

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実は今市庁舎を中心とした歩行者ゾーンと路面電車やバス路線の接するゾーンを総合的に改善しようという計画を市では進めています。

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乗り換えやバスレーンなどで交通が混雑している部分を見直すためにBプランが提示されています。上の写真のタイトルは500番という番号が付いたBプランであることを示しています。Bプランは土地利用計画であるFプランを空間的、建築的な規定にまで詳細化したもので、日本の地区計画のお手本となったものです。故日笠端先生、日端先生たちが70年代に日本に導入をしようということで研究されたいたことを思い出します。

このBプランでは電車とバスの乗り換えのためのシェルターつきの駅を作り同時に歩行者空間を拡大しようという計画が示されています。

私が感心するのはここでもその計画を市民に説明し理解を得るために一種のアーバンセンターを設置していることです。

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上の写真のように一時的なものですが、これから変えていこうとする現場のすぐお隣に設置しています。以前路面電車の拡張計画案が住民投票で否決されたことがあるようですが、それだからということではなく常にきちんと住民に自治体が何をやろうとしているのかを説明していくという姿勢が徹底しています。しかも、パンフレットやその中の図面も美しくデザインされています。美しく読みやすい資料で、計画の目標、スケジュール、課題、代替案などをきちんと提示することが行なわれています。これはドイツやフランスのどの都市に行っても感じることです。

ところでアウクスブルクは古くはモーツアルトのお父さん、新しくはブレヒトの出身地として有名だそうです。昼ごはんを食べたレストランのメニューにもモーツアルトが親戚と一緒に来たという記述がありました。

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中心部でも表通りから一歩はいると大変静かで気持ちの良いまちでした。

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