まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

ミノルヤマサキ・ユダヤ教会

2009-01-22 15:03:37 | 海外巡礼 Asia America

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オバマ新大統領の就任式を見ていたら昨年の秋に訪れたシカゴのことを思い出しました。

ここに写真を掲げたのは日系建築家ミノルヤマサキのユダヤ教会(North Shore Congregation Israel)でシカゴの北エバンストンの北郊のノースショアにあります。

ミノルヤマサキは悲しいことに彼の作品であるワールドトレードセンターの崩壊で一般の人に知られるようになりました。一連のニュースの中では、ミノルヤマサキが設計したプルーイットアイゴー(Pruitt Igoe)にも触れられていたことを思い出します。

プルーイットアイゴーはセントルイス郊外の高層集合住宅です。低所得者層のスラムをクリアランスしてうまれました。それは近代都市計画を主導したCIAMの理念を体現したものであり、緑・太陽・空気(広場)の溢れる理想の住環境であったはずです。

しかし60年代のバンダリズムや悪質な犯罪が増大する中で、高層の建築形式自体が維持できなくなり、白日のもとで爆破解体されました(下の写真;Wikipediaより引用)。

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さて、ミノルヤマサキのユダヤ教会です。ノースショアの緑豊かな高級な住宅街のなかにあります。彼の装飾的な部材の用い方はモダニズムの精神とは距離を置くものですし、WTCのデザインも含め私もあまり共感するところではありませんでした。

 

しかし、緑のなかに、また今にもミシガン湖の爽やかな風が流れてきそうな広い敷地のなかにひっそりたたずんでいる姿はモダニズム云々を超えて大変美しいものでした。ここで用いている薄いボールト状の庇はPCシェルです。PCシェルの隙間はトップライトになっています。

彼は巨大建築を多く作っている反面、コルビジェ的な大きく人を包み込む彫塑的な空間よりも、ヒューマンな人のタッチできる細やかなスケール感を好んでいたそうです。PCの小部品をリズミカルに並べたオフィスビルなどの秀作があります。下(右)に写真をInternet http://www.bluffton.edu/~sullivanm/yamasaki/gas.htmlから引用します。

ちなみにこのレースのようなグリルワーク(Lacy Grillwork)のPC部材とまったく同じ形状のものが私の故郷高松の三越の外壁に取り付けられています(下左)。ちなみにヤマサキの作品Michigan consolidated gas buildingは1963年の竣工、三越は60年代後半わたしが中学校の頃建てられたものです。

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高谷時彦記 Tokihiko Takatani