まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

『群像としての丹下研究室』は刺激的な本でした

2012-07-29 22:20:05 | 建築・都市・あれこれ  Essay

豊川斎赫氏の力作『群像としての丹下研究室 戦後日本建築・都市史のメインストリーム』を読みました。日本の成長拡大の時代に建築と都市を不可分に論じ、また理論を建築デザインとして実体化して見せてくれたのが丹下先生です。その丹下研の集団、組織としての力、理念、考え方を資料に即して存分に明らかにしてくれる本です。

私も高校時代は毎日隣の香川県庁舎をながめ、、大学では丹下先生(あるいは丹下的なるもの)に惹かれて都市工学科というところに進学した身です。この本を通して何か時代の精神、あるいは丹下先生の精神を少しながら感じられたように思います。

時代が違うということで丹下的なるものを過去のものとしてしまうのは少し早計です。都市を考え、建築を実践するのが私の生業ですが、丹下先生の思索とデザインを今一度トレースしてみたい気になりました。

以前私の結婚式で大谷幸夫先生が「高谷君が進学してきたときに、この顔は四国の顔だと直感した。はやりそうだった」というお話しをしてくださいました。丹下先生、浅田孝さんたちと同じ四国勢という意味でも、もう少し勉強が必要です。

そういえば、大谷先生の講義ノート(『都市空間のデザイン 歴史の中の都市と建築』)も読まないといけません。40年前に習ったことが十分身についてないことを発見するのが少々怖くて、まだ開いてない・・・というのはいいわけですが。

 

Tokihiko Takatani

Architect/Professor

Tokihiko Takatani and associates, architecture/urban design, Tokyo

Graduate school of Tohoku Koeki Univ. Tsuruoka city, Yamagata

高谷時彦/建築家・都市デザイナー

設計計画高谷時彦事務所/東京都文京区千石4-37-4

東北公益文科大学大学院/山形県鶴岡市馬場町14-1


ASAKUSAはいろんなものを許容するパワフルなまち

2012-07-29 21:07:25 | 建築まち巡礼東京 Tokyo

浅草文化観光センターの見学です。

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周辺のまちとの関係で、「あの場所にはふさわしくない建物」という意見を聞いていたのですが、全く違和感は感じません。

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中は意外とおちついた雰囲気です。

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この建物があの場所に調和するかどうかというよりも、私はASAKUSA(周辺)がなんでもありのものすごく、許容力のあるパワーを持っていることにあらためて気付かされました。

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外国人もまちの上の遊園地には驚いています(上写真)。

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もちろん伝統芸能もあります(上写真)。

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ちょっと歩くとウルトラマン(ちがうかも)もいます?

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それから東南アジアもあります。この木陰は涼しくて快適です。

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謎の住まいもあります(上写真)。エネルギー消費型のライフスタイルの方だったようにお見受けします。

このまちでは、スーパードライホール(下写真)も決して奇抜な存在ではないことがよーく理解できます。

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金の炎のモニュメントはいまだ健在

2012-07-29 20:32:56 | 建築まち巡礼東京 Tokyo

浅草に出かけました。スカイツリーをみるために・・・ではありません。金のモニュメントをみるため・・・・でもありません。目的は浅草文化観光センター。屋上からの写真です。しかし、金の炎のモニュメントは今でもインパクトありますね。スカイツリーに負けていない。

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つい足もとまでいってしまいました。

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このエンターテイナーぶりが憎いですね。やはり無駄なものは強い。スカイツリーも電波を発するのをやめればさらに存在感を増すでしょうに。もしかしたら東京タワーはそういう存在になりうるのでしょうか?


ふくいの伝統的農家の改修事例見学

2012-07-24 17:06:34 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

午後からは県庁のTさんがアレンジしてくれた見学です。

福井市引目町T邸。伝統的農家の典型ですがまずその大きさに驚きました。Tさんは後ろの山もお持ちとのことでしたが、このあたりで特別に大きなうちではないとのこと。

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妻入りの母屋に棟を直行させる下屋がついたような形です。わらぶきの時代にはいわゆる角家という形式だったと思います。

妻入り上屋の前面側はもともとは土間です。奥手に4つ目切の畳部屋があります。奥の2間は座敷、仏間と呼ばれています。角の部分は厩や水周り台所です。日常生活はこの角の部分で完結するそうです。奥の4間はあくまでも儀式用だそうです。

明治43年築。約90坪ほどあります。ご主人で9代目。

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上写真は妻側の化粧部分を内側から見たところです。はしごは小屋裏の物置への通路です。

ちなみにこの地域も浄土真宗です。蓮如さんが布教したあたりでしょう。ですから、仏壇は大変立派です。上段構えになっています。

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ふくいの伝統的民家の保存継承に学ぶ旅

2012-07-24 16:43:59 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

7月2日から4日にかけて研究室メンバーで「ふくいの伝統的民家の保存・継承活動の実態調査」を行いました。詳しい報告は現在まとめている最中ですが、私も備忘のためにメモをしておきます。

研究室メンバーは庄内空港から羽田へ・・・ここで私が合流。一路小松空港へ。小松でレンタカーを借りて福井に向かいました。

まずは福井県庁で観光営業部(この部の名前は間違いではありませんので念のため)Tさんのお話を伺います。以下Tさんのお話と頂いた資料からメモします。

下の写真の部課の名前に注目してください。観光営業部長室、ブランド営業課など、珍しい名前が並びます。

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福井県では県知事(最近原発でよく登場する西川さんです)のリーダーシップで、2006年から「福井県伝統的民家認定制度」を設け、伝統的民家を認定すると共に、改修、新築に対する助成を行っています。

認定は県で定める6つのカテゴリーの建物が対象となります。「典型的農家型」「典型的町家型」「茅葺」「かぐら建て」「妻入りうだつ」そして個別に認定された建築ということです。

認定されてもとくに制限がかからないというのが大きな特徴です。また申請の書類もごく簡単なものです。日常的に保存活用の情報提供を行い、増改築や改装の際に届けてもらって、そのときに助成制度を使って伝統を守ってもらおうというのがねらいです。

2006年から2011年までの認定数は905件ですが半数以上を下写真のような「典型的農家型」が占めているのも大きな特徴です。

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同時に伝統的技法を習得している大工さんや工務店を「伝統的民家技能者」として県に登録して紹介しています。建築の保全継承に必要な技術者や技術、技能を同時に保全、育成していくものでしょう。立派なマニュアルもあります。

   

また改修・新築に当たっての補助金はこれまで121件となっています。この金額がもう一つの特徴です。一件あたり2分の1を限度とし、300万円までという高額(改修の場合)が補助されます。補助は県と市が折半です。

以上の制度を設けてから7年ほどたちますが県では今後点(建築)から面に広げていくことを考えています。すなわち伝統的民家が集合する「伝統的民家群保存活用推進地区」を指定していこうというものです。伝統的民家が10戸以上集まる集落で保存活用の意欲がある地区を指定しています。まだ6地区だけですが、今後は県としては面的な保存活用似力点を置いていくようです。

また土蔵の保全にもこれからは力を入れたいとのことでした。世帯あたりの土蔵の率を見ると福井県は鳥取県についで全国2位、12件に1棟の土蔵があります。私は土蔵数の全国調査資料を見るのは初めてでしたが、福井県のパンフレットに記載されています。ちなみに上位10県は鳥取、福井、長野、島根、富山、福島、石川、山形、新潟、滋賀です。日本海側が多いことに気づかされます。脱線ついでにどうやって調べているのか、パンフレットの注釈を見ると、「総務省平成22年度固定資産税の価格等の概要調書」が出典とあります。

内蔵や敷地の奥の土蔵も参入されているのでしょうか?

話が脱線したところで、現場に向かいます。・・・その前に・・・・。

北前舟で越前から庄内に運ばれた、越前赤がわらと錫谷石。その両方を一度に県庁(福井城址にあります)前で見ることが出来ました。

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