まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

日韓都市デザイン専門家交流会議2003 その3(後半)

2023-06-11 17:35:26 | 海外巡礼 Asia America

計計画高谷時彦事務所 Profile  記事一覧へ 

日韓都市デザイン専門家交流会議2023 その3(後半)

<6月3日 ソウル市の後半>

3日目、ソウル市の後半です。東大門デザインプラザから清渓川の遊歩道へ。川の上空を占拠していた高速道路を撤去して遊歩道にしたのは当時のソウル市長李明博がその後大統領になったのは有名な話です。韓国の公共空間デザインの原点のような場所だとの解説がありました。

清渓川から少し北に行くとこういう路地がつながっています。

下の写真の場所で昼食。鳥のスープに、ソーセージのような御餅が入った鍋料理。瞬く間にお店は満席になってきました。

さらに西に歩くと(おそらく)広蔵市場。アーケード街です。プロ用の道具街のように思えます。

 

さらに西に進みます。テント屋さんが並びます。ミシンで縫っています。

再びアーケード街。こちらが広蔵市場?

ど迫力です。

アーケード街を抜けると世運商街。電気店の集合ビルです。金寿根氏の設計。東側からは巨大な再開発が迫ってきていますが、この建物は保存していくとのこと。日本より都市デザインに関してはだいぶ意識が進んでいます。

面白い電気ビル!

中はこんな感じ。

屋上からは、西側の街区が見えます。この電気ビルもかつてはこのようなごちゃごちゃした路地に集まっていたお店を集合させたのではないでしょうか。

 

北方向には、宗廟が見えます。

 

さてここからは少し、問題のある地区。日本でいうと、大阪西成区にあるような簡易宿のどやがい。入り口だけ写真を撮りましたが、あとは撮影禁止でした。

どやがいを抜けると、若者が集まるまち、イクソンドン。昔の支配階級両班の住居をお店に改造して大人気のスポットになったそうです。あまりに人が多すぎて、ほとんどみることができませんでした。先ほどのどやがいのすぐ横にこういう人気スポットがあるというのが、ソウルの面白さだと案内してくれた研究者の方がおっしゃっていました。原宿竹下通りですかね。

 

 

ここで一行は、地下鉄5号線に乗り、光化門駅へ。朝鮮王朝の正宮、景福宮のあるところです。実に12年ぶり。

駅の中に、きちんと休憩場所を取っていることが印象に残ります。ここも公共空間としてデザインしようという意思が伝わってきます。

地下鉄から外に出ます。

南北の軸線、幹線道路である世宗大路が様変わりしていることには驚きました。以前はやたら車道が広いなと思ったのですが、なんと広い歩行者広場に生まれ変わっています。

 

遺跡も発掘していました。きちんと見えるようにしているのがいいですね。

ここで皆さんと別れて、光化門にも立ち寄ってみました。

 

旧ソウル駅も見たかったので、市庁駅まで歩き、地下鉄1号線にのります。下の写真はおそらくソウル市庁舎?・・ですね。

デモ行進の人も見えます。自由でいいですね。

ソウル駅では、ソウル路7017ヘ。

飛行機の時間が迫っているので、この辺りは早足、速足。

ソウルのハイラインと聞きましたが、ニューヨークのハイラインを見たことがないので何とも言えません。

塚本靖設計の旧ソウル駅。時間がない!

ゆっくり見たかったですね。

この後は、地下鉄でホテルにたちより、金浦空港に急ぎました。

充実した3日間でした。最後までご案内いただいた韓国PUDAの皆様、そしていろいろお世話になった日本側TDAの皆様

有難うございました。お疲れ様でした。

 

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urban design

 


日韓都市デザイン専門家交流会議2023 その3(前半)

2023-06-11 17:33:42 | 海外巡礼 Asia America

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日韓都市デザイン専門家交流会議2023 その3(前半)

<6月3日 ソウル市の前半>

3日目は、ソウル市です。前日の夜議政府市から移動しました。議政府市はソウルの北側にあり、ホテルがソウルの中心部を東西に流れる漢江の南にあるので、漢江を渡ることになります。水の演出やライトアップなども見学しました。

最初の訪問地仁川からずっと続く印象ですが、公共空間はきちんと整備していこうという方針が実行に移されています。とにかく首都圏には人が多くて、パワフル・・・この印象もずっと続いています。

ソウルでは会議がありません。みんなリラックスして街歩きを楽しみました。韓国側PUDAの皆さんが本当に親切に案内してくれました。

最初の訪問地は東大門デザインプラザです。ザハの建物は、ローマの美術館以来、楽しみです。

ツアーを用意してくれていたので、あとについていきます。いったんMuseum棟の1階にあるTour Receptionに集合。

 

一度外に出て、地下におり、Art Hall棟とM棟の隙間から、1階に上っていきます。ドラマティックな演出です。

下のような空間の重なりやずれ、ゆがみというのはザハの最も得意とするところだと思います。大変いいと思います。

この東大門デザインプラザはソウルの城郭の東、東大門の遺跡公園のようなところにあります。ザハの建物はある意味では暴力的なまでの存在感を持ちますが、ここに関していくと、うまく周辺環境と両立しているように思えます。全体の高さも抑えられています。

 

ふたたびDesign Lab棟に入るのですが、右手を見ると、D棟とM棟でアーチ状の経路をつくっていることが分かります。

こういうダイナミックなところはいいですね。すべてをALパンチングメタルで覆っているという潔さもうまく効いているようです。

 

 

案内されるままに、D棟4階のDesign Playgroundへ、来ていました。この間、六本木ヒルズの展覧会で座ったばかりのイギリスの建築家Hetherwickの椅子が置いてありました。みんな楽しそうです。

下の写真はDesign Hall? 外はルーフガーデンになっていました。Grass Hillですね。

 

ここからは、M棟に移動(3,4階はM棟とD棟がつながっています。1,2階は先ほど見たアーチ状の屋外通路屋外通路)

曲線の外壁に沿って、ランプが続きます。左手には天井の高いホールが入っているはずです。

再び外に出ます。

面白い彫刻です。デザインプラザは勾玉のような形をしていますが、全体がArt Hall 棟、Museum棟、 Design Lab棟の3つのボリュームから構成されています。上部では3棟がつながっていますが、地上部では分かれていてその裂け目、空隙を印象的な経路空間としていることが良く分かりました。

ザハ建築は、不必要に、くねくねと壁などを曲げて建築費を高くしているという批判はありますが、実際に訪れてみると、一つの分かり易いストーリーあるいはデザイン意図といったものは感じられます。それは人の動きをダイナミックに導き、その移動の過程に印象的な空間体験(壁、天井、素材、光などが関わる)をつくり出そうとしているということです。この提案を受け入れた、ソウルの人たちも偉いと思います。

ここからは、街歩きです。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architect/urban design

 

 


日韓都市デザイン専門家交流会議2023 その2

2023-06-09 16:17:55 | 海外巡礼 Asia America

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日韓都市デザイン専門家交流会議2023 その2

<6月2日 議政府市>

2日目は、議政府市Uijeongbu市です。今日も会議に先立ち、市内を案内してもらいました。まず訪れたの

は Red Cloud Camp. 38度線に近いこの地域にたくさんある米軍基地の一つです。返還が決まって、今国が所有していますが、それを市が買い取って既存の建物を生かし、歴史を継承しながら開発していくとのお話でした。事情により写真はありませんが今日の会議の第一のテーマです。これからの基地跡地利用ということです。

次に訪れたのが議政府駅。これは東口。南北方向のグランドレベルに電車が通っています。

写真右手前にあるのがその線路をアンダーパスしている東西道路。

東口の公園には今いろんなものが置かれています。下の写真はベルリンの壁。

これは慰安婦像。うまく解決していきたいものです。補償に関する政治的な取り決めの問題とは別に、日本の侵略行為の結果なのですから、日本からお詫びの心を表明することが、でいないものでしょうか。

下の像は、安重根。1909年、ハルビン駅で伊藤博文を暗殺したことで処刑となっています。韓国の英雄です。

この像は中国から贈呈されたものです。

広い公園ですが、ちょっといろんなものがありすぎて、人の居場所がまとまっていないことが課題です。

下の写真は線路の反対側、西側の広場です。東西方向のアンダーパスの出口が見えます。こちら側には公園などまとまったオープンスペースがありません。

東西方向を横切るには、このガラスシェルターのある通路で、2階にまで上がる必要があります。市の方によると、東西方向を円滑につなぐための駅前デザインコンペを準備中とのことです。日本語で応募できるのであれば、いいのですが・・・。

駅の東側を歩きました。駅の東西どちらにもショッピング街があり、とても40万都市とは思えません。日本でいうと仙台のような100万都市を思い浮かべてしまいます。

 

車を排してショッピングモールも整備されています。(ここに限らず)街路樹に松が多いのが印象に残ります。

この迫力には、脱帽です。

会場は、大学の講堂です。立派な円形劇場です。

昨日と同じく、韓国側PUDA李教授と、日本側TDA国吉理事長が議論をスタートさせます。この日はキムドングン市長も「歩きたい都市」づくりを通して国際競争力のある都市をつくるという講演を行いました。素晴らしい内容です。

私も少しだけ議論のお手伝いをしました(TDAメンバーにいただいた写真です。写真の質がいいです)。

懇親会・・の写真はありません。市長も参加されました。連日ですが、皆さんタフです。

 

お疲れ様です。

高谷時彦

建築・都市計画

Tokihiko TAKATANI

architecture/urban design

 


日韓都市デザイン専門家交流フォーラム2023その1

2023-06-09 13:58:29 | 海外巡礼 Asia America

設計計画高谷時彦事務所 Profile  記事一覧へ 

日韓都市デザイン専門交流フォーラムに参加しました。日本と韓国の文化の違い、また共通性を感じながらの3日間は、大変充実したものでした。お声がけいただいた、国吉直行TDA理事長をはじめ、日韓専門家の方々には大変お世話になりました。

I took part in the 10th Japan/ korea Urban Design Expert exchange meetings in Korea from June 1st to 3rd.

A lot of thanks to members of PUDC Korea and  TDA Japan for your kindness!  


<6月1日:インチョン 開港場周辺>

初日の交流会議はインチョンです。インチョンは人口が300万ほど。ソウルの西に在り、国際空港、国際港、重工産業、グローバル企業など様々な要素の集積する活力ある都市です。会議に先立ち、インチョンの市内を案内してもらいました。

私のインチョンの印象は下の合成写真のようになります。

一方では、古い街並みを大事にリノベーションしつつ、一方ではタワーインザパーク型の巨大開発を進める都市、どちらも大事にしているパワーあふれる都市というイメージです。

まず訪れたのは、古い港に近い市街地、日本や中国の租界地です。まず日本の租界地。

上のような(もともとは)木造の店舗もありますが、一方では、石造の旧銀行もあります。

上の建物は日本郵船が1888年にたてたものです。スクラッチタイルや、表現主義的な装飾は、日本では数十年後に流行ったものですが、この地ではずっと早く取り入れられていたのでしょうか。

下写真のように、中国の租界地も今は観光施設になっており楽しそうです。

また、日本租界から少し港方向に歩いたところには、仁川アートプラットフォームがあります。古い工場や倉庫を使ったものだと思いますが、創作スタジオや、展示場があるとのことですが、残念ながら時間の関係で早足で通り過ぎることになりました。

見るべきものが多すぎて、少々時間不足でした。またゆっくり訪れたいと思いました。


<6月1日 仁川松島地区>

開港場とはガラっと雰囲気が変わります。新都市、松島を目指し移動。

一昔前なら「近未来都市」という表現でしょうが、ここ仁川では当たり前の風景です。

上の写真のように、伝統的な建て方のものも一部ありますが、ほとんどは、CIAM型の高層ビルです。

会場の下の階を覗くと、都市模型が置いてありました。激しいですね・・・パワフル!

下写真はミーティングの様子。韓国側のPUDCイ中央大学教授と、日本側TDK理事長国吉さんが議論の口火を切るところです。

 

 

会議のあと、懇親会までの道すがら、まちを見学しました。

韓国の場合、日本のようなバルコニーがなく、室内化されている(容積対象床面積からは除外されている?)ので、

マンションもオフィスビルのような外観でつくることができます。公園もたっぷりとられています。

懇親会会場。

お疲れ様でした。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko  TAKATANI

architecture/urban design

 

 

 

 

 


わかりやすい建築(ソウルから)

2011-04-21 17:38:49 | 海外巡礼 Asia America

先日のブログで藤沢周平記念館における「外延の焦点を手がかりに建築を組み立てる発想」について説明しました。

                   

 

われながら回りくどくて言い訳がましい説明であったという気がしてきます。かつて大谷幸夫先生は「建築は雄雄しくあるべき」「言い訳は必要ない」というようなことをおっしゃっていたように記憶しています。

 

先ごろソウルを訪れる機会がありました。大変わかりやすい建築に、素直に感動しました。

         

最初は梨花女子大のキャンパスセンター。ドミニク・ペロー。

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緩やかな丘をゆったりとしたスロープが切り裂きます。

底にいくと今までにない体験。かなりの迫力です。

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中に入ると、堂々たる長いギャラリー状の吹抜け。

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学生たちは自由に勉強の場所を見つけています。実にわかりやすく、そのダイナミックさに感動しました。

続いて、三星LEEUM美術館。

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ジャンヌーベル、コールハースに囲まれてマリオボッタのエントランスホールと博物館。

中に入ると、上からの自然光に導かれて入り口に足が向かう。

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中は、光と影の抽象的な空間。

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大変わかりやすい空間。そしてありそうで今までになかった感覚。

このわかりやすさこそ、嬉しい。