まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

都市再開発としてのManifattura delle Arti(2011視察05)

2011-10-02 22:39:52 | 海外巡礼 South Europe

Legnani女史の話の後半です。城壁内部の最後の大規模大開発:Manifattura della Artiのお話を伺いました。

この中には既存建物を再生活用した映画館があります。場を改造したアルドロッシ設計の映画館の中に今年こそ入りたいと考えていました。

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アルドロッシのロトンダです。今年いただいた資料(工事前の航空写真と計画図)から増築されたのはこのロトンダとその周りのごく一部に限定されていることがわかりました。

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昨年は入れなかった内部の写真です。まさにアルドロッシです。

スイス人(イタリア系というのでしょうか)のマリオボッタを思い出しました。下の写真は彼がサムスンのために設計したソウルの美術館です。

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映画館の中は暗くてあまり分からないと思いますが、建築的にはそれほど特徴がないことに驚きました。鶴岡まちキネの方が面白い空間のような気もします(すいません、アルドロッシさん)。

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ロビーはちょっとおもしろいですね。

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Legnaniさんの話に戻します。

この地区の再開発は城壁内部の旧市街地の最後の複合的大規模再開発ということです。基本的には市とボローニャ大学が出資者です。まず1983から1987年にかけて市が用地取得。

計画案についての国際コンペが1983に行われアイモニーノCarlo Aymoninoたちの案が当選します。

Aimoninoはロッシと共同でガララテーゼ集合住宅を70年代にやったあのラショナリスト建築家のことだと思います(迂闊にもその場での確認を忘れました)。彼は建築類型学を活かした保存についても大きく貢献しているようです。

ただ彼らの案は建築保存法に不適合(65年以上たった建物は勝手に取り壊しできません)で結局はアルドロッシにマスタープランを再依頼したとのことです(これがアイモニーノとロッシの関係の中でおなわれたのかどうかはもちろんわかりません)。これにより、既存建物の保存再生を中心とした計画が固まったのです。

Legnani女史のお話はすでに知っていたことの確認という内容がほとんどでしたが、若干曖昧であった既存用途と新規施設の関係がクリアーになりました。

1.9月11日公園と地下駐車場:タバコ工場(以前は絹とキャンバスを織っていた工場)

2.運河のあるCavaticcio公園、日本なら親水公園と呼ぶでしょう:Cavaticcio運河、Navile Harbor

3.市立フィルムアーカイブズ=チネテカ:タバコ工場の事務室

4.市立の映画館=リュミエールとボローニャ大学映像芸術学部:市営の場

5.社会文化センター:塩の倉庫

6.モダンアートギャラリー=MAMBO:パン工場のオーブン

7.コミュニケーションサイエンス大学:製粉所(Mill)

8.Azzogardinoと Castellaccio通り沿いの住居、商業施設、学生住居

9.幼稚園

都市再生では多くの用途を複合させることで環境的、文化的、経済的、社会的にも良い結果が得られるというのが彼らの考え方です。

これは学生が映画に関係するワークショップをやるところです。

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外部には施設の魅力を高めるためにバーを少しずつ整備しているとのことでした。

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ボローニャの中心市街地から学ぶこと(2011視察04)

2011-10-02 19:56:24 | 海外巡礼 South Europe

チェントロストリコから何を考えるのか

<ここでもう一度問います。なぜボローニャに>

ボローニャと私がまちづくりに携わる鶴岡は歴史も都市空間の仕組みも建築も違うわけです。参考になりますか。

上の問いに対してとりあえず次の2つの視点を提示したいと思います。

<歴史的建築の保存と都市計画の関係>

問題は中心部の歴史的雰囲気を目に見える形で今に伝え、同時にそこに人が住み生業を営む中で守ってきた都市の生活文化をどう守り、継承していくかです。それに大きく関係するのが歴史的な建築ですが、文化財行政で保存の対象となる建築、言い換えると修復などを公的な資金で行える建築ということです、の数はいくら歴史都市ボローニャといえども中心部にそれほど多くあるわけではありません。

大多数は文化財ではないが歴史性を伝える普通の建築(群)です。

ボローニャ市では、インタヴューにあった通り、経済活動によるジェントリフィケーションと都心の空洞化が相前後していたようです。それをフィジカルにみると商人と職人が住んだゴシックロット形式の建築がなくなったり、あるいはその特性に合わない用途になることであったわけです。

それにたいしてボローニャ市はNOを突き付け都市計画的な介入Interventionを開始しました。中心部には高級マンションやブランド店だけでなく職人の工房やや小さな商店があり、ボローニャ大の学生を含むいろんな階層の人が住めることが長い目で見た場合のボローニャの活力を生むと判断したのです。

コムーネが社会主義政権であったことも大いに影響していると思います。こボローニャがイタリアのチェントロストリコ政策を大きく転換させたということは間違いありません。

その時に、職人や商店の容器としてはすでに歴史的に確立されたTypeがあり、それが時間とともに進化していく建築形式であるのだから、そのTypeを守ることが必要というのがフィジカルな面での解決法でした。

しかしジェントリフィケーションなどはグローバルな経済現象の中で投機的に進む現象です。これに掉さすのは市といえども難しいのでしょう。ボローニャの都心部では地価が高騰し、市による事業の妨げとなったようです。

実際には集中的に市が介入すると決めた4地区(当初計画は13地区でした)すら完成にまでは至らず、私たちが見せてもらったソルフェリーノとサンレオナルド(小さいのでソルフェリーノを見に行きましょうとLegnaniさんがおっしゃった通り一つの街区だけです)だけが成功例と言えるようです。

なかなか困難であったということはさておき、私が着目したいのは、繰り返しになりますが建築の保存再生がきちんとした都市政策、都市計画の一部として遂行されていることです。この点は大いに学ぶ必要がありそうです。

<建築類型学的方法>

もう一つ考えたい点です。

鶴岡では、ボローニャ中心部のように歴史的建築が軒を連ねているわけではありません。むしろ少数が点在しているということです。

わたしたちが考えないといけないのは、保存再生もさることながら、画一的なメーカーハウスやイージーな「ペナペナ建築」をどう変えていくのかということです。

古いよい例に典拠してそれを模倣しようということでは後世に恥ずかしいものとなります。後ろ向きの対応をすれば、Legnaniさんが言うように、次世代の人から「その時代の表現を刻印する勇気のない人たち」という烙印を頂戴します。

はやり、今までの伝統的な建築が持っているTypeと進化の法則を見つけ出し、それを尊重したうえで新しい建築を作り出していくことが求められています。その点で建築類型学的方法が参考になると思います。

先日宇治市で文化的景観を担当している杉本さんにお話を伺いました。彼は商店街を今まで作ってきた遺伝子DNAを見つけてその遺伝子を継承していく新しい建築で街並みを作っていくとおっしゃっていました。過去に完成した形式である町家を模倣したり、町家に近づくような形態規制はやりたくないということでした。まさに同感です。

鶴岡もそうしないといけないのです。

上の2点今後の宿題です。