まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

吹浦まちづくりセンター(吹浦地区防災センター)

2019-10-20 19:36:53 | 公共建築 Public architecture

吹浦まちづくりセンターは吹浦地区の住民の様々な活動スペースとして2016年の夏にオープンしました。プロポーザルコンペ(審査委員長:小地沢将之先生)で指名され、住民の皆さんや当時の小地沢研究室の学生さんたちとワークショップを始めたのは2013年ですから、既に6年がたっていることになります。この度、ようやく竣工写真が撮れたので、計画の内容を説明したいと思います。

(撮影:小川泰祐)

 

1.地域の集まりや活動の拠点であり、住民の自主管理で運営されています

 

・大きな駐車場から風除室を抜けると吹き抜けのエントランスホールがあります。エントランスホールを囲むように、講堂(150人程度が集まることができます)、調理室、談話室、会議室、事務室を配置しています。 

・エントランスホールを奥に向かうと2階に上るゆったりとした階段があります。 

・階段の下に多目的トイレや男女便所などがあります。

・2階に上がると吹き抜けを見下ろすロビーがあります。

・このロビーを前室として、図書コーナー、講義室、和室があります。

 

これらの部屋の配置は基本的には、住民の皆さんとのワークショップで出てきた様々な使い勝手を考慮して決めたものですが、実は次のような工事費縮減の要素も取り入れています。

・敷地内には一部60~70cm低い部分がありました。設計にあたってはその段差をうまく取り入れることで土工事量の縮減を図りました。

・まず便所ゾーンをスラブ上配管方式とし、スラブ位置を下げて低い地盤の部分に配置しました。

・次にスポーツ対応の浮き床仕様のためスラブ位置が下がる講堂も、地盤の低い部分に配置しました。

・上記により、高い地盤部分の無駄な掘削を避けるだけでなく、低い地盤部分の有効活用が可能となり、工事費の縮減に寄与しています。

 

2.住民が自ら工夫して使うことができ、日頃の維持管理もできるようにしました。お祭りやイベント時の使い方も想定しています

 

・設計にあたっては、ユーザーである住民の方々とのワークショップを重ね、日常やイベント時の使い方を十分に検討してきました。

・行動の客室ホールは健康教室やダンス、敬老会の催しなど多岐にわたる利用方法を想定し、大きさや、縦横の比率を決定しました。

・ステージも同様で、お祭りの時の演者の数、裏方の方の使い勝手など最大限配慮をしました。照明やステージ幕なども皆さんで使いこなしています。

・暗転用の装置も手動で使いやすくしました。

 

・エントランスロビーはイベント時の食事会場になります。

・写真右手には調理室が見えます。ここに地域の人々が集まり自分たちで手料理をふるまっています。

・調理室からは外部への料理の持ち出しが容易にできます。また隣の談話室へはパスボックスを使って、直接料理を提供することが可能です。

 

・イベント時には1階の諸室(事務室、調理室、エントランスホール)から直接外の広場に出るようにしています。

・外には深井庇が張り出ており、雨天時のイベントにも対応しています。

 

3.内部にはできるだけ地元産の木を使い、やさしく仕上げています。

 

・館内の仕上げは、できる限り木材を使用しています。

・図書コーナーでは床、壁、本箱などが木でできています。

・講堂では、床は地元産の杉(圧縮加工)、壁、天井にも地元産杉をムクで使用しています。

 

4.防災センターとしての役割により安全安心の拠点になっています

 

・本建物は平常時は地域コミュニティセンターですが、発災時には一時避難場所として機能します。

・太陽光発電設備、大型蓄電池、防災倉庫を備えるだけでなく、無線基地ともなります。

 

5.地域コミュニティを象徴する建物の姿をつくりました

 

・本建物は、山と海に挟まれた集落の中央部に位置します。また信仰の中心である神社の境内に隣接しています。

 

・この立地から、本建物は住民に親しまれるだけでなく、地域を代表し、住民が地域の誇りと思えるような外観の立ち姿を目指しました。

・この建物はいろいろな用途の部屋が複合していますが、外観は山の緑を背に、落ち着いた表情となるようにしました。

・打ち放しコンクリートとタイルを基調としてアクセントに木質系ルーバーを建て使いで用いています。

・一階には多くの開口部がありますが、深い庇を回すことで統一感を出しています。この庇はイベント時にも活用されています。

(撮影:小川泰祐)

 

 

Fukura Chiku Bosai Center is a community center of Fukura District in YUZA Town. It houses small auditorium, lecture room, meeting rooms, kitchin room and small library.

We started design workshop with the neighbouhood people and studied how they would use these rooms and spaces. It was a very interesting design process for us and we are very much grateful to professor Kochizawa who taught us the way of design workshop and was the chair of the design competition.

I hope the people of Fukura are pleased with the architecture.

高谷時彦  建築/都市デザイン

設計計画高谷時彦事務所・東京

東北公益文科大学大学院・鶴岡

Tokihiko Takatani  Architect/Professor

Tokihiko Takatani Studio architecture/urban design  TOKYO

Graduate School of Tohoku Koeki University. Tsuruoka-City Yamagata pref.