まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

動く建築東京天文台

2016-08-15 09:33:57 | 建築まち巡礼東京 Tokyo

東京天文台の建築散歩。2,3年ぶりです。

今回初めて訪れたのが、ここ(下左写真)。三鷹市の「星と森と絵本の家と」して使われていますが、もともとは天文台旧1号官舎で大正4年(1915)築の登録有形文化財。

昔の官舎の様子がよく分かります。かなり上級の方のお住まいだったと思われます。

後は前回と同じ順路で巡ります。まずは第一赤道儀室。建築年などの説明は受付でもらった『国立天文台三鷹見学ガイド』からの引用です。天文台の建築の面白いところは必ずどこかが動くこと。

 当然星を追尾するために屋根ドームは回転します。さらに望遠鏡自体も、回転します。前者は手動のハンドルで動かしますが、後者は、なんと柱時計と同じような錘の力で回転します。

次はアインシュタイン塔。本家ドイツのアインシュタイン塔と同じ構造と目的を持っていることから「太陽塔望遠鏡」よりもこの愛称で呼ばれるそうです。軒のラインや曲線的な外壁など、表現主義的です。またスクラッチタイルで覆われた1930築の建築となればアールデコの造形といってもよいかもしれません。中は見学できません。

上右写真は大赤道儀室。パンフレットによると1926築、帝大営繕課設計、施工は中村與資平となっています。中村與資平は戦前の朝鮮半島や故郷の静岡県で活躍した建築家です。静岡出身の曽根幸一先生のレクチャーで市役所などの名作を残した話しを伺ったことを思い出します。中村は一時期ゼネコン体制をとり中村工務所を運営していました(西沢泰彦「中村與資平-世界を見た日本人建築家」INAX REPORT/187)。そのころの作品ということとなります。天文台パンフレットによると外壁のロンバルト帯(小刻みなアーチの連続模様)に特徴があるそうですが、中村與資平自身の設計作品にもロンバルト帯は時々登場します。

ともあれ、この建築もいろいろなところが動きます。屋根の開閉、望遠鏡の回転・・そして床そのものも上下するのです。下右の写真は床を下階から眺めたところです。

次の建物は旧図書館。1930築。これ(下左写真)は動く建築ではありませんが、どうでしょうか、下右写真の階段。ステップするごとに動きそうです。いいですね。こういう階段を使ってみたいものです。

これはレプソルド子午儀室。パンフレットによるとセセッション(sezession)影響下の建物とか。

しかしそれよりも、屋根が棟から割れて梁間方向に動きそう(下右写真)なのが気になります。

最後にゴーチェ子午環室。ボールト屋根の本体から台形屋根の玄関ポーチが離れて(動いて)もデザイン的には不思議はないのですが、動くのはボールと屋根の一部です(下右写真)。

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高谷時彦記 Tokihiko Takatani