まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

富山・高岡視察(1)コンパクトシティに学ぶ

2014-11-24 18:58:41 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

11月20日から22日にかけて、東北公益文科大学高谷研究室で富山高岡の視察を行いました。鶴岡市中心部にある歴史的建造物の再生に取り組むチームが中心です。視察の目的の一つはコンパクトシティという明確な理念と方法をもって中心部の再生に取り組む富山の成果学び、体験することです。

市役所から立山連峰を望む

     

富山には槇文彦先生の建築設計作品がいくつかありますが、私は独立する直前の数年間、富山市民プラザと大手モールを担当していました。

そのとき、大変お世話になった富山市役所の宮本克彦理事に視察に行きたい旨を伝えたところ、完璧な見学コースをアレンジしてくださいました。宮本さんには30年近い時を超えて再びお世話になってしまいました。また、お付き合いいただいた職員の皆さま本当にお忙しいところありがとうございました。詳細な内容は研究室メンバーが報告しますが、ここでは、行程に沿っての備忘録を記します。

 

大変わかりやすいスライドでした

     

私たち研究室メンバー4人は、市役所でコンパクトシティの包括的な説明を伺いました。本などでは何度も勉強していますが、それを日々実行している方からの説明は説得力がありました。コンパクトシティというとハード面に目が行きがちですが、基本はときめきと感動のある街中での暮らしをつくるというところにあり、そのことを関係者がしっかり共有していることが印象に残りました。

また大手モールを使って様々な活動をしているNPOの方(と言っても市役所の若手職員です)からも、興味深い話を伺いました。

「まちメシ」なんていうプロジェクトもあります。おいしいご飯とゆったりとし時間で街中を過ごす、そんな休日を提供しようというものです。

まちの中の共用空間を楽しく使っていこうという精神が町に住む楽しさづくりにつながっていきます。さらにそれが緩やかに都心居住を誘導しているのだと思います。

市民プラザもよく使われています

     

 

 

お話を伺った後、私たちは国際会議場、市民プラザ、大手モール、千石商店街を経由してグランドプラザに向かいました。

地場もん屋という繁盛する地産池消の店もありました。株まちづくり富山の経営です。

 

地場もん屋です

 

 

     

学生が自由に集まる富山まちなか研究室も近くにありました。同じく株まちづくり富山が運営しています。

 

学生さんが自由に使っています

 

 

     

ここが雪国らしく屋根のある広場です。市役所と同じく日本設計浅石チームの設計です。稼働率100%というのには驚きました。案内してくれた市の方もここで披露宴をやったとのことでした。

屋上の雪は地下水で消雪しています

 

 

     

このあと隈さんが設計した市街地再開発ビルへ。富山第一銀行と図書館、ガラス美術館の複合ビルです。

真ん中にあるどでかい吹き抜けと高い階高(標準が5.6m、高いところは6m)にはびっくりしました。今まで見たことのない迫力ある公共施設ができそうです。

巨大吹き抜けは撮れませんでした

 

 

     

このほかにも大きな再開発(シネコンプラス住宅など)が市民プラザのすぐそばで工事中でした。数十年前にはできたばっかりだった再開発ビル(西友が入っていました)も今、再々開発の計画中だとのことでした。

市長の明確なリーダーシップがないとなかなかできない事です。ちなみに今では富山のコンパクトシティ造りの代名詞となったLRT計画の時には市民の80%が賛成だったそうです。

夜には、若手職員の方々も来てくれて私たちの研究室との懇親会。富山も食の都ですね。

記事一覧

設計計画高谷時彦事務所HPへ

 

 


富山・高岡視察(2)世界一美しいスターバックスの店

2014-11-24 18:58:22 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

翌日は、前日話題となった施設に案内していただきました。

まずは高志の国文学館。私たちも鶴岡まちなかキネマで2013建築学会作品選奨を頂きましたが、この建物は2014年度の受賞です。分節化された空間が程よいスケール感をもたらします。回廊が閉じているのが少々残念でしたが、全体として完成度の高い建築だと思いました。

エントランスロビー

子供アトリエ

    

そのあと親切にも芝園小中学校にお連れいただきました。同じくシーラカンス設計で、作品選奨を受賞しています。

パサージュと階段教室が印象的でした。オープンスクールで学ぶ子供たちも楽しそうでした。先生方は大変な面もあるのでしょうが。

音を出すスペース

    

そのあとは富岩運河経由で北前船の湊町岩瀬に向かいます。

以前は寂しい印象だった富岩運河パークが緑と水の素敵な憩いの場になっていました。

満席でした

    

 

 

    

子供連れのお母さん方の人気スポットになっています。このスターバックスは全世界2万店舗の中で最も美しい店だとのことです。うーん、quite exactly!

立山連峰を望む

 


富山・高岡視察(3)売船(北前船)の作った町並み

2014-11-24 18:58:02 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

富山で最後に訪れたのが岩瀬です。

北前船ーこちらでは買船(航海の度に財が倍々に増えるとのこと)と呼ぶーで財を成した廻船問屋の町並みです。

平入の豪華な町家です

   

荷揚げ場である神通川に平行に作られていることから近世以降の湊町であることが推測されます。資料を見ると江戸前期に町が作られたようです。

町家の町並みの多くがそうですがここも明治の大火後に作られたものです。とくに重要文化財の「森家」は、東岩瀬廻船問屋型町家と呼ばれる豪華な造りです。

森家

蔵には鏝絵

    

   

この町並み整備には市の補助金もつけられています。外観には工事費の70%を超えない範囲で250万円までの補助が出ます。羽黒の手向のまちづくりの参考になりそうです。

 

岩瀬浜

    

この後はLRTで富山駅に向かいました。駅のそばにマンションも建っています。串と団子に人を誘導する政策の成果でしょうか。

途中駅にはマンション


富山・高岡視察(4)まちっこプロジェクト

2014-11-24 18:57:46 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

富山では本当に親切にわかりやすくご案内していただきました。その好印象を胸に、JR北陸線で高岡へ向かいます(ちなみにこの好印象は最後まで続きました)。

高岡では、官・民・学が連携して歴史的な中心部再生に取り組む「高岡まちっこプロジェクト」を勉強することが目的です。

まちっこプロジェクトではすでに3階建ての空家(店舗併用住宅)を学生向きシェアハウスとカフェにリノベーションすることに成功しています。また、古い町家をゲストハウスに改装し、運営しています(私たちの研究室のYさんは今日の宿泊先としてその「本町の家」を選び、その選択がさらに多くの人々からお話を伺える契機となりました)。

また、まちっこプロジェクトの大きな特徴は地域金融機関である富山銀行の積極的な関与です。

 

そんなことを前提に、まずはキーパーソンへのヒアリングのため路面電車で、市役所に向かいます。

万葉線

お客さんも多いという印象

   

 

   

都市経営課の桶川さんは地域支援活動に力を入れる富山銀行の経営管理部から出向されています。その前は富山大学地域連携推進機構「地域づくり・文化振興部門」に派遣されていました。実はこの方が、若い人をまち(空家)に住まわせることで地域全体に波及する効果を生み出せないかと考えていた若手経営者(跡継ぎ)たちの思いと、地域連携を模索する大学や学生、行政などを結びつける媒体役あるいは触媒になった方です。

今、鶴岡中心部で3階建てのRCビルディングの再生を模索する私たちにとっては大変参考になるお話を伺うことができました。この詳細は研究室の社会人学生であるお二人(社会的企業家Kさん、銀行員Yさん)が分析も交えて報告してくれることになっています。

鶴岡エビスヤと同じ3階建店舗

閉鎖中の鶴岡ホテルを思い出します

 

 

 


富山・高岡視察(5) ほんまちの家

2014-11-24 18:57:26 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

ほんまちの家は高岡市の中心部本町にあります。

外観

 

   

座敷

    

昭和半ばに建てられたそうですが、3間間口の2階建て切妻平入、一列2段の間取りで庭の奥に立派な土蔵をもつ町家でした。典型的な町家に見られる土間のとおりにわではなく板敷の廊下で土蔵までつながっていたそうです。

小屋現しに改装

    

 

この町家をまちっこプロジェクトの中心人物の一人である女性経営者(高岡市内唯一の不動産鑑定士!)が買い取り、富山大芸術文化学部、東工大、銀行、行政、建築設計者、大工さん など多くの人たちの協力でゲストハウスに改装しました。

耐震補強も万全です。

格子の耐震要素

   

キッチンや炊飯器も完備、物干し台もあります。

物干し

   

管理人は東工大博士課程1年の加納さんです。

右の方です

    

ここで少し事業的な側面に触れます。計画を練ったり改装や運営には多様な組織が関わっていますが、

事業はまちっ子プロジェクトの発案者の一人が経営する会社が担っています。富山銀行の融資や市の補助もその会社に対してのものです。

この辺りに成功の秘訣がありそうです。やはり、最初は実績と志のある経営のプロが責任をもって進めることが現実的な選択ということでしょうか。市民的事業体の立ち上げと育成を目指す私たちとしては考えるべきテーマです。