まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

ブルーノタウト:机と椅子

2022-01-23 01:13:09 | 建築まち巡礼中部 Chubu

熱海で活動されているブルーノタウト連盟の水之京子さん(写真家・作家・ダイビングインストラクター)が下のような写真を送ってくださいました。その時は、初対面で知らなかったのですが、プロの写真家です。ありがたく、また恐縮の極みです。

タウトデザインの椅子に座って得意げな表情の私。椅子に座ったからといって、設計がうまくなるわけではないのですが・・・。

この椅子は、地元のお蕎麦屋さんが保存しています。お蕎麦屋さんの建物は、タウトが日向さんの依頼で旧日向別邸を設計しているときに、ちょうど日向氏が軽井沢から移築してきたもの。椅子があるのは屋根裏部屋ですが、屋根裏とは思えない、素敵な造作の部屋です。ちなみにタウトは(日向氏が用意した)別の民家に滞在したようです。このイスとテーブルはタウトが滞在した民家に合わせて、地元大工さんが作ったものだそうです。

いすに腰掛けた時ふいに、初めてタウトという建築家を意識した時の記憶がよみがえってきました。ずいぶん前に雑誌SDの特集号を見た時の記憶です。ネットで調べてみたら78年の12月号でした(雑誌SDのバックナンバーは、昨年調布へ引っ越したおりにどさっと捨ててしまいました)。78年に見たのが日向邸の洋間で誰か(貫禄のあるお年寄り?)が座っている写真だったような気がします。今度、雑誌を探して読んでみようと思いました。

ちなみに、上の写真は、アールトの自宅兼事務所(ヘルシンキ)でアールトの席に座っている私。少し緊張していますね。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urban design

 

 

 


鶴岡中央児童館を久しぶりに訪ねました

2022-01-17 13:42:41 | 公共建築 Public architecture

鶴岡中央児童館を訪ねてみました。コロナが下火になっていたつかの間のできごとです。

あいにくの天気でしたが、晴れていれば羽黒の山々、少し右手には月山がみえます。児童館はしっくり環境になじんでいるように見えます。

中には入りませんでしたが、外でも多くの子供たちが走り回ったり、人工のせせらぎ(私たちも手探りで設計しました)で、何かを捕まえていました。怪しまれるといけないので、写真はなるべく子供たちが写らないようにしました。

一部、トップライトからの漏水があるようで、補修中でした。ちょっと申し訳ない気持ちです。この後、鶴岡市の方々とも話しましたが、「まだまだ補修をしながら長く使っていきますよ」とお聞きしたので一安心です。「次回は中にも入って下さい」と言ってくださるので、子供たちが中で遊ぶ様子を見てきます。楽しみです。

高谷時彦 建築/都市デザイン

Tokihiko Takatani   architecture/urban design

 


もう一つの熱海

2022-01-13 20:37:01 | 建築まち巡礼関東 Kanto

熱海のまち散策に呼んでいただきました。この数年間では3度目(はるか大昔、小学校1年の頃にも来ましたが、旅館が大きかったことと、貫一お宮の松しか覚えていません)の熱海です。前の2回はブルーノタウト設計の日向邸に行きました。今回は、地元の方々の案内で、これまで知らなかった熱海に出会いました。詳しくは、改めて書きたいと思いますが、まずはちょっと驚いた写真2枚。

熱海が、イタリア山岳都市のようだという印象は以前ブログに書きました。ブルーノタウトもアマルフィのようだと書いていることを、今回教えていただきました。一方では、瀬戸内の島のような風景もあることに気づかされました。写真には写っていませんががだいだい?のような柑橘類も庭にあります。坂を振りかえると、逆光にきらめく海が見えますが、この海が相模湾だということを忘れ、故郷の瀬戸内海を思い出しました。

これは何という植物でしょうか?ひよこのようでかわいいので、撮ってしまいました。いつも、建築やまち並みばかりを見ている私ですが、こういうまちの楽しみ方もいいですね。

高谷時彦

Tokihiko Takatani   architect/urban designer

 

 


雪の鶴岡まちキネでMINAMATA

2022-01-09 13:51:16 | 建築・都市・あれこれ  Essay

鶴岡は雪の季節となりました。下の写真の商工会議所も寒そうです。

雪の中を小股で恐る恐る歩を進め、鶴岡まちなかキネマに到着。

ユージンスミスと水俣のかかわりを描いた"MINAMATA"を見ました。たまたま数週間前に、東京の富士フィルムギャラリーで「ユージンスミス展」をみて、映画もぜひ見たいと思っていたところです。まちキネはありがたいですね。

エントランスホールでお会いした山王まちづくりの三浦社長(いつも本当にお疲れ様です。お世話になります)から「ジョニーデップの存在感がすごい」とお聞きしてしてから、キネマ4に向かいます。

 

ジョニーデップは期待通りの存在感でした。アイリーン役のMINAMIも、抑制があって表情豊かな演技でした。71年当時の日本の状況、そして老舗雑誌ライフの状況・・・自分が18歳、東京に出たころの社会状況を思い出します。そして「水俣病」という日本社会の病理も、社会の偏見なども含めてよみがえってきます。私にとっては思い出ですが、「まだ水俣での苦しみは続いている」というエンドロールのメッセージにははっとさせられました。

エントランスホールの様子は、少し前の「梅きらぬバカ」の時の様子です。私の希望は、4館を残して活用してほしいというものですが、山王まちづくりの皆様の献身的な努力で、2館が維持されていることには本当に感謝の言葉しかありません。何とか、"MINAMATA"のようないい映画が、まちキネでずっと見られることを願ってやみません。

It's my pleasure to enjoy a excellemt film like "MINAMATA" in Tsuruoka MACHI-KINE, Town Cinema Tsuruoka.

I'm grateful to San'no Town Manegement Company for sustaining up this movie theater. 

高谷時彦

Tokihiko Takatani   architect/urban designer 

 

 

 


人気のたこ滑り台から考えること

2022-01-03 12:39:43 | 建築・都市・あれこれ  Essay

事務所への自転車通勤するときの風景。正月からたこ公園は人気です。途中で聞いたお父さんと坊やの会話。「そんなに走らなくても、たこ滑り台はにげないよ」(お父さん)。「たこはにげるよ!」(子供)。

なぜこの滑り台は子供をそんなに夢中にさせるのか?空間をつくるプロ?である私たちも考えないといけません。ハードの空間が見事に使われて楽しい場所になっています。ただ、一緒にいる親たちにとっても、過ごしやすい気持ちの良い場所になっているのか?道路沿いの木の一本もない場所でいいのだろうか?そのあたりも考えないといけないでしょう。

実はこの「たこ滑り台」は以前、調布駅前のひろばの中にありました。調布駅前広場は、かつて建築集団「チーム象」が設計し、尊敬する都市計画家、林泰義氏が「日本一の駅前広場」とほめてくださいました。市民としては、うれしい評価です。そこにたこ滑り台もあったのです。私のこどもたちも滑っていました。ただ残念なことに、「駅前整備」の過程で広場の樹木(かしのき?)は消え、交通機能優先のひろばに変わろうとしています。この滑り台も撤去されたのですが、壊されることを聞いた人たちのお別れ会もあったことを記憶します。そういう市民の声があって、広場ではなく今の場所に再建築されたのです。

まちの中に、人々が自然と集まってきて、多様な人々が、お互いを認め合いつつ思い思いに時間を過ごす場所をつくることがこれからのまちづくりに求められています。あるいは、自分のフィールドに引き込んでいうと、場所となりうる空間/スペースを構想し、構築することに私たち建築設計に携わるものの使命があります。この場所を眺めるとそんなことを考えさせられます。

It is significantly important  for us, architects or urban designers, to make places where we can spend time individually or in a group  watching other people enjoying in various ways. Those places can be called "Machinaka Commons". 

高谷時彦  建築・まちづくり

Tokihiko Takatani   architecture/urban design