政府が共産党を破壊活動防止法(破防法)の調査対象であるとの答弁書を閣議決定したのは、極めて異例の対応となった。夏の参院選に向け、安全保障関連法廃止を目指した「国民連合政府」構想を提唱した共産党は、選挙協力を優先し構想を凍結したとはいえ、政権参画への意欲を強める。今回の答弁書決定は、いまだに綱領に「革命」を明記する同党への警戒の表れといえそうだ。
共産党が破防法の対象となっている背景には歴史的な経緯がある。同党は昭和26(1951)年の第5回全国協議会で「日本の解放と民主的変革を平和の手段によって達成しうると考えるのはまちがい」「武装の準備と行動を開始しなければならない」との方針を決定。「51年綱領」と呼ばれるこの方針に基づき警察襲撃事件などが相次いだ。
共産党は現在、「分裂した一方が行ったこと」と関与を否定しているが、33年に「51年綱領」を廃止。36年に民主主義革命から社会主義革命に至る「二段階革命」を規定した綱領を採択した。このころ、革命が「平和的となるか非平和的となるかは結局敵の出方による」との「敵の出方論」が登場。政府は「暴力革命の方針」として調査を継続している。
平成16年に改定した現在の綱領には二段階革命論の表現は消えている。ただ、公安調査庁が毎年公開している「内外情勢の回顧と展望」では、オウム真理教などと並んで共産党の動向を報告。28年版でも「資本主義を乗り越え、社会主義・共産主義の社会への前進をはかる」との綱領の記述を基に、共産党を「最終的に『社会主義・共産主義の社会』を実現する」ことを目指した「革命政党」と断じている。
共産党の山下芳生書記局長は22日の記者会見で「このタイミングの質問は、力を合わせて安倍晋三政権打倒を掲げる5野党に不当な攻撃を加えたいとの意図を感じる」と反発。質問主意書を提出した鈴木貴子衆院議員が共産党との連携に反発して民主党に離党届を提出、除名された経緯が念頭にあるとみられる。
AIが"執筆"した小説が文学賞審査を通過 AI社会を生き抜く仕事の付加価値とは
http://the-liberty.com/article.php?item_id=11083
「その日は、雲が低く垂れこめた、どんよりとした日だった。部屋の中は、いつものように最適な温度と湿度。洋子さんは、だらしない格好でカウチに座り、くだらないゲームで時間を潰している。でも、私には話しかけてこない」
これは、とある文学賞の応募作品の始まり。一見普通の小説の書き出しのようだが、他とは違う部分が1点ある。ロボットが"執筆"している点だ。
人工知能(AI)を使って創作された小説が、国内文学賞の1次審査を通過した。AIによる小説創作の研究を行っている、公立はこだて未来大、名古屋大、東京工業大などのグループが21日、都内で報告会を開き発表した。
◎1450作品中11作品がAIとの"共著"
同グループが応募したのは、「星新一賞」の一般部門。この賞には、「人間以外」にも応募できるという特徴がある。一般部門への応募作品約1450作品中、AIが関わった作品は11あったというから驚きだ。
研究グループは昨年秋、4作品を応募し、そのうち1作品以上が1次審査を通過したという。なお、審査の過程では、人工知能を使ったことは明らかにされていない。
ただ、小説すべてをAIが創作したわけではない。
物語の構成や登場人物の性別など、細かい場面設定は人間が行っている。AIはそれに合わせて、人間が用意した単語や単文を選びながら、創作したという。8割方人間の手が加えられているというのだから、AIが小説家として"独り立ち"するのはまだまだ早いようだ。
研究グループの代表を務める、公立はこだて未来大の松原仁教授は、「これまでの人工知能は、囲碁や将棋など答えがある問題を解くことが多かった。今後は、人間の創造性にも対象を広げたい」と今後の研究への思いを語っている(22日付読売新聞)。
◎AIに仕事を奪われても困らないためには
自動車の自動運転、医療の効果的な治療法の提案など、AIは幅広い分野で応用可能な技術で、近年急速な発展を見せている。AIを搭載した囲碁ソフト「アルファ碁」はこのほど、世界のトップ棋士と5番勝負を行い、4勝1敗で勝ち越し、世界に衝撃を与えたばかりだ。
そうした中、AIによって人間の仕事が奪われる危険性も指摘されている。
オックスフォード大学のマイケル・オズボーン博士は、アメリカ国内で今後10〜20年で約半分の仕事が、AIやロボットに取って代わられる可能性が高いと警鐘を鳴らしている。機械でパターン化できる単純労働は、今後人間のする仕事ではなくなるようだ。
AI社会を迎える前に、人間が作り出す仕事の付加価値について改めて考える必要がありそうだ。
大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『資本主義の未来』の中で、今後の未来社会を切り拓いていく力について、こう語っている。
「工業生産の時代には、正確に計算ができたり、きっちりとした仕事ができるような人をつくることが大事でしたが、これから先は、『今まで見たことがないようなものを考え出す人』や『前例がないものをつくり出すことができる人』をつくり出していく教育をやらないと駄目なのです」
こうした創造性は、「感動を与える」ことと深く関係している。
例えばホテルの接客で考えると、部屋への案内や食事のサービスなどマニュアル化できるサービスはAIに取って代わられるかもしれないが、人間の心の機微を読みとり、愛や思いやりがこもった感動につながるサービスは、人間だからこそ生み出せる付加価値の一つだろう。
人間がAIと共生できる未来を切り拓いていくためのカギは、創造性にあるのかもしれない。(冨野勝寛)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『資本主義の未来』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1353
【関連記事】
2016年3月15日付本欄 人工知能がトップ棋士破る 唯脳論なら「そろそろあなたロボット以下」!?
http://the-liberty.com/article.php?item_id=11057
2015年12月16日付本欄 スマホの「次」に来るもの 人工知能の世界?
http://the-liberty.com/article.php?item_id=10621
ハリウッドでも中国色強まる 日本が発揮すべき「ソフトパワー」
http://the-liberty.com/article.php?item_id=11084
ハリウッド映画で、中国色が強い映画が増えている。
例えば、公開中の映画「オデッセイ」にも中国の影がちらついている。「オデッセイ」は、火星に取り残された宇宙飛行士の奮闘と、彼を救い出そうとする仲間たちを描いたSF映画。中国国家航天局が救助の重要な役割を担い、中国人も数多く登場する。
ある映画評論家は、「まるで米中共同救出作戦のようで、違和感を覚えた。(中略)映画の世界では米中は共闘しており、若干、中国の方が優勢な印象。将来を暗示しているようで、考えてしまう」と語った(22日付産経新聞)。
中国国内でも、映画の興行収入が急伸した。昨年の中国国内の興行収入は、前年比の48.7%増の約7710億円で、日本の約4倍の規模となった。2017年には、アメリカを抜いて世界最大の映画市場になると言われている。
◎思想戦が繰り広げられている「映画業界」
習近平政権は、ソフトパワー強化のため、映画産業に力を入れているが、怖いのは、「中国は世界最強」という価値観が、こうした映画を通じて世界に広がることだ。
中国は、「中国は強く、素晴らしい国」だとするプロパガンダ映画を数多く製作している。中国では、旧日本軍の残虐な行為を描いた「抗日映画・ドラマ」が毎日のように放送され、日本人を侮蔑する中国人も少なくない。
だが実際の中国は、言論・人権弾圧が公然と行われる国だ。映画での宣伝に騙され、世界に「中国はヒーロー」として認める風潮ができることは、阻止しなければならない。
◎日本はもっとソフトパワーを使える
中国に「自由、民主主義、人権、法治」といった価値観を浸透させていくために、日本は自らの持つソフトパワーをもっと上手に使う必要がある。
例えば、優秀な中国人の留学生の受け入れや、若く将来性のある中国人リーダー層との交流だ。日本で「自由や民主主義、法治」といった価値観に触れた若きリーダーがさらに増えれば、その価値観に基づき、政治改革を行う中国人も現れるだろう。
その他にも、日本に観光に来た多数の中国人に、後ろ姿で道徳やマナーの大切さを示すことも重要だ。これも、ソフトパワーの一つと言える。
さらに、中国共産党の精神基盤である唯物論を覆すためには、「あの世」や「霊」、「信仰」を扱う映画が増えることも大切だ。
実際、そうしたことを題材にした邦画も増えている。今年の日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受賞した嵐・二宮和也さんが映画「母と暮せば」で演じたのも、霊だった。19日からは、天使の働きを描いた映画「天使に"アイム・ファイン"」も全国で一斉公開されている。
中国国内にも、中国を「自由」や「民主主義」といった価値観に基づいた国に変える使命を持った"天使"が眠っているはずだ。そうした人々を応援するためにも、日本はソフトパワーに気付き、その力を駆使する必要がある。(山本泉)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『「アイム・ファイン!」になるための7つのヒント』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1616
【関連記事】
2016年3月12日付本欄 北京で全人代が開幕中 習近平氏への権力集中が進む中国
http://the-liberty.com/article.php?item_id=11048
2016年3月3日付本欄 ますます強まる中国のメディア統制 「中国メディアの魂は死んだ」のか
http://the-liberty.com/article.php?item_id=11016
菅官房長官、新聞取材に「消費増税先送り」の可能性
http://the-liberty.com/article.php?item_id=11081
菅義偉官房長官は、22日付読売新聞の取材に対し、2017年4月の消費税増税について、「消費税を引き上げて、減収になるような場合にやるわけではない」と答えた。最終判断は、5月末の伊勢・志摩サミット後になると報じられている。
⇒消費税の引き上げによって企業の収益が減り、経営状態が悪化して法人税が払えない赤字企業が新たに続出することは目に見えている。景気回復に水を差す消費増税は撤回すべきである。
【関連記事】
2016年3月12日付本欄 そもそも解説 消費税ってなんで始まった? 調べたら2000年もさかのぼれた件
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防衛大で「任官拒否」が倍増 自衛官が尊敬される国へ
http://the-liberty.com/article.php?item_id=11082
今春、幹部自衛官を養成する防衛大学校(神奈川県横須賀市)を卒業する419人のうち、11%にあたる47人が「自衛官に任官しない」意向を示していることが分かりました。この数は、昨年の任官拒否者25人のほぼ2倍です。
防衛省は「雇用環境が改善され、民間企業に就職できる可能性が高まったことが主な理由」と述べていますが、防衛省関係者は「安保法制の影響はゼロとは言えない」と述べています(朝日新聞など)。
◎任官拒否する防大生は「税金泥棒」か
防大生は、特別職の国家公務員として、大学の授業料がかからない上に、毎月約11万円(2015年4月時点)の手当や、年2回の期末手当が支給されます。
卒業後は陸海空の自衛官として幹部候補生学校に入校することが期待されているため、任官拒否のニュースが流れると、「税金泥棒」などといった批判が聞こえるのも無理はありません。
一般的に防大生といえば、国防の意識が高いために入学したというイメージがあります。しかし、第一志望の大学に合格できず、しかたなく防大に進学した人も中にはいるようです。このため、潜在的には、自衛官ではなく民間企業に就職することを志望する防大生もいるとみられます。
防大を出ても自衛官になりたがらない学生が増えている原因には、現実的な武器使用の際の法整備が不十分であることなどが挙げられています。
◎自衛官の命を守るためにも武器使用に関する法整備を
集団的自衛権の行使などを含んだ安全保障関連法が29日に施行される予定ですが、自衛隊にとっては、他国軍の後方支援など任務の幅が広がり、リスクが高まると懸念されています。
安倍晋三首相は21日、防衛大学校の卒業式で、新たな安保関連法の施行について、「隊員たちが安全を確保しながら適切に実施できるよう、あらゆる場面を想定して周到に準備しなければならない」と強調しました。
日本の憲法は軍隊としての武器使用を想定していないため、自衛隊員は「正当防衛」「緊急避難」の武器使用しかできませんでした。安保法制によって、武器使用基準が緩和され、正当な防衛力を持てるならば、むしろリスクは減るでしょう。
◎国民は命をかけて国を守る自衛官に尊敬の念を
自衛官の多くは、「有事の際は自分の命を投げ出してでも国を守りたい」という崇高な使命を持って働いています。だからこそ、国民が敬意を払うべき職業だといえます。
高まる北朝鮮や中国の軍事的な脅威を見るにつけても、自衛官が国民から感謝の念を受けながら活躍できる環境を整えることが必要なのではないでしょうか。(真)
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2015年7月17日付本欄 安保法案が衆院通過 宗教が「国防強化」を訴える3つの理由
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2014年7月17日付本欄 「命が大事」なら自衛官を辞めればいい 国を守る自衛隊を臆病者に仕立てるマスコミの愚
https://the-liberty.com/article.php?item_id=8143
2014年7月16日付本欄 「集団的自衛権で徴兵制」は本当か 広がる懸念が勘違いなワケ
http://the-liberty.com/article.php?item_id=8137
産経新聞 【ワシントン=加納宏幸】米大統領選の共和党候補指名争いで先行する不動産王、ドナルド・トランプ氏(69)は21日、米紙ワシントン・ポストの論説委員らとの会合で日本や韓国への米軍駐留が米国の利益になるかと問われ、「個人的にはそうは思わない」と語り、アジア太平洋地域への関与を見直す考えを示した。米国が以前ほど裕福ではなく、その余裕がないとの認識を理由に挙げた。
トランプ氏はこれまでも日本に米軍の日本防衛の代償を払わせると主張してきた。オバマ政権はアジア太平洋の安全保障を重視する「リバランス(再均衡)」政策を進めてきたが、トランプ氏が政権を取れば大きな政策転換を伴いそうだ。
同紙が21日に公表した会議録によると、トランプ氏は米軍駐留経費の日本側負担に関し、「なぜ100%(の負担)ではないのか」と疑問を投げかけた。
中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)に侵攻した場合の対応については、「何をするかは言いたくない」と答えた。オバマ政権下で日米は尖閣諸島に関し、米国による日本防衛義務を定めた日米安保条約5条の適用対象であることを重ねて確認している。
トランプ氏は中国による南シナ海への進出について、中国製品に高関税を課すなど貿易面での圧力で解決を目指す考えを強調。北大西洋条約機構(NATO)に関してもウクライナ問題などで欧州側の加盟国がより多くを負担する必要があるとの認識を示した。
Global News Asia 2016年3月22日、インドネシアと中国との関係が悪化し緊張している。原因は20日未明に、インドネシアの排他的経済水域(EEZ)で、インドネシアの監視船が違法操業の中国漁船を摘発し曳航(えいこう)していたところ、中国海警局の大型の公船が体当たりして妨害した。
インドネシアメディアによると、南シナ海でインドネシアは、中立的な立場をとってきたが、フィリピンやベトナムと同調しそうだ。
インドネシアのスシ海洋・水産大臣は「とても深刻な事件だ。南シナ海の平和を促進しようとしている、我々の長年の努力を侮辱された。
力が正義ではない。自国の領海だと主張しているのは、中国だけ。それを認めている周辺国は一つもない」と述べた。
中国の事情に詳しい専門家は「中国は、国内に多くの不安定要素を抱えており、非を認められない事情があり、常に攻撃的だ。世界中で中国に対する嫌悪感は日々高まっている。謙虚さや外交マナーを習得してもらいたい」と話す。
2019年開業予定で昨年9月にインドネシア政府が中国に発注を決めたジャカルタ―バンドン間・約140Kmの高速鉄道は、3月16日に事業契約書が手交され、月内の着工を目指していたが、両国の関係悪化で建設工事のスタートは暗礁に乗り上げた。
北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の言葉が荒くなっている。公然と韓国を「敵」と呼ぶのはもちろん、「生存不可能な殲滅的な火の洗礼を浴びせろ」(3月10日の弾道ロケット発射訓練参観)とも主張した。
今月初め、新型ロケット砲試験射撃場では「新しく開発した打撃武器を一日も早く実戦配備し、敵が最後の終末を迎える瞬間までわずか一日も、一時も気楽に眠ることができないようにしろ」と強調した。
我々の国民が安らかな日常生活をするのを見ていられないという意地の悪さまで感じられる。
先月7日の北朝鮮の長距離ロケット挑発直後、韓半島(朝鮮半島)には米軍の戦略武器が総出動して武力示威をした。「空の死に神」と呼ばれるB-2スピリットステルス爆撃機と現存最強の戦闘機として知られるF-22ラプターステルス機が平壌(ピョンヤン)の上空まで飛んだ。
身辺に脅威を感じたのか、金正恩は公開活動を中断して地下バンカーに潜伏したという。北朝鮮最高指導者を除去するいわゆる「斬首作戦」にまで言及されている状況のためだと、韓国政府当局は分析している。
今月に入って金正恩第1書記は外部活動を再開した。核武器開発現場を訪問し、軍の訓練を参観するなど活発な動きを見せている。
韓米連合戦力の圧力に隠遁していれば側近のエリートと住民に示しがつかないという判断のためとみられる。労働新聞など官営宣伝メディアはこうした金正恩の姿を大々的に報道している。戦争の危機感を高めて金正恩に対する忠誠を結集させる効果を狙ったようだ。
韓米情報当局は北朝鮮の報道を綿密に分析しているという。北朝鮮軍の新しい武器体系と戦術を把握するのに決定的に役立つ情報が少なからず含まれているからだ。
20日に労働新聞が公開した北朝鮮軍上陸訓練の場面は代表的な事例だ。韓国国防安保フォーラムのヤン・ウク研究委員は「北の揚陸艦が船首部分を上に開いた後、戦車などの装備が出てくる映像は今まで公開されていない場面」と診断した。
北朝鮮はこの訓練に第2航空師団と第7軍団砲兵大隊、第108機械化歩兵師団が参加したと、具体的な作戦内容まで紹介している。
【ソウル聯合ニュース】北朝鮮が実戦配備のため最終発射実験を行ったと主張する口径300ミリの新型長距離ロケット砲が南北軍事境界線付近に配備されれば、韓国中部まで射程圏内に入る。韓国側には有効な迎撃システムがまだないとされる。
北朝鮮の朝鮮中央通信は22日、前日にロケット砲5発を発射したニュースを伝えた上で、「南朝鮮(韓国)作戦地帯内の主要打撃対象を射程圏に置く威力ある大口径放射砲(ロケット砲)の実戦配備を控えた最終試験射撃」と説明した。これを受け、同ロケット砲は近く実戦配備される見通しだ。
昨年10月の軍事パレードで初めて公開された口径300ミリのロケット砲の射程は最大200キロに達する。ロケット砲の弾頭には殺傷能力が高い高性能爆弾と建物の破壊が可能な二重目的弾(DPICM)を装着できる。
口径300ミリのロケット砲は1990年代に中国が開発したWS1Bロケット砲をまねたと推定される。
WS1Bは口径が302ミリ、射程は80~180キロで4~6の発射管を備えている。弾頭に装着される150キロの高性能爆弾は、約2万5000個の破片に散らばり殺傷半径は70メートルに達する。二重目的弾は475個の子爆弾から成り、子爆弾1個の破壊半径は7メートルだ。
北朝鮮は口径300ミリのロケット砲に自制制御・誘導装置を搭載し精度を高めたとみられる。こうした装置は砲弾を最大200キロ先の目標物まで正確に飛行させる。
韓国の首都圏を脅かす従来の口径240ミリのロケット砲(最大射程90キロ)を最前線地域に配備した北朝鮮が口径300ミリのロケット砲を新たに開発したのは、韓国中部の中核施設を狙っているためと分析される。
軍事境界線付近で同ロケット砲を発射した場合、平沢の在韓米軍基地を含む首都圏全域と群山の米軍基地、陸・海・空軍本部がある忠清南道・鶏竜台までが射程圏に入る。
韓国軍には音速の5倍で低空飛行する同ロケット砲を迎撃できる兵器はまだない。北朝鮮のミサイルを破壊する「キルチェーン」を2020年代半ばまでに構築する計画だが、車両に搭載されひそかに機動するこのロケット砲を迎撃するのは容易ではない。
韓国軍の対応兵器システムを強いて挙げるなら、ロケット砲発射基地を事前に無力化する多連装ロケットシステム(MLRS)「チョンム」だ。軍は昨年8月からチョンムを実戦配備し先月初めには実射撃訓練を公開した。だが、チョンムは射程が約80キロにとどまり口径300ミリのロケット砲の射程圏外でこれを攻撃するには限界がある。
また、韓国軍が保有する地対誘導ミサイル「ATACMS」の場合、短距離弾道弾ATACMS「ブロック1A」の射程が300キロだが、命中率に限界があるという指摘がある。
チベットの自由を求めるチベット人の焼身自殺者は2009年2月から昨年4月までの約6年間で143人にも及んでいる。チベット亡命政権の政治的最高指導者、ロブサン・センゲ首相はインタビューに応じ、チベット人対し、僧侶で、一般市民を問わず、社会的にも、政治的にも、経済的にも厳しい差別や弾圧が中国当局によって行われていると語った。ジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。
* * *
具体的にどのような差別や弾圧が加えられているのか。いまや中国内のチベット仏教僧院では毛沢東やトウ小平、江沢民、胡錦濤という歴代の指導者と現指導者である習近平の5人の肖像画が飾られ、毛沢東思想や共産主義思想、さらに現在の習近平による重要講話などの政治学習が強要されている。
しかも、政治学習には地元の共産党幹部が立ち会うなか、チベット語の使用は禁じられ、中国語(漢語)での学習が義務付けられている。従わなければ、僧侶は破門され、僧院を出ていかなければならない。これは即、流浪の民と化すことを意味する。焼身自殺者のなかに、元僧侶が多く含まれているのは、このためでもある。
このようなチベット語の使用禁止令はすでにチベット人居住区全体に拡大している。米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア」によると、今年1月初旬、青海省黄南チベット族自治州同仁県のホテルで、従業員がチベット語を使ったら500元(約9000円)の罰金を科すとの貼り紙が出されたという。
2014年の青海省やチベット自治区の労働者の平均月収は1900元(約3万4200円)であり、罰金は月収の4分の1以上にも当たる。
センゲ氏によると、チベット自治区ラサのある新聞社でも編集幹部14人中、チベット人は11人で、漢族(中国人)はわずか3人しかいないのに、会議は中国語で行われ、企画書などの公文書もすべて中国語で書かないと受け付けてもらえないという。
チベット内の大学でも中国人の幹部が党委員会のトップを務めており、教育カリキュラムも中国人中心で、チベット固有の文化などの講座は廃止している。
また、在京チベット筋が明かしたところでは、チベット住民が集まって、中国に対する抗議行動を起こさないように、近隣の5世帯の住民を一つの組織とする「隣組制度」がつくられ、住民同士が互いに監視し合う「スパイ網」が形成されている。
住民は隣町に行くにも当局の許可が必要だ。住民が許可なく移動しても、すぐに居場所が分かるように、中国政府は個人の生体認証チップをはめ込んだ身分証を発行し、24時間携帯するよう命令。どこにいるかは常に把握しているなど、監視体制は厳重だ。
さらに中国政府はチベット自治区の管理強化のため、中国人の流入政策を推進。2000年の人口統計では、チベット高原の人口約1000万人のうち、半数以上の540万人がチベット人だったが、現在ではチベット人600万人に対し、中国人は750万人と、中国人とチベット人の人口の逆転が起こっている。
中国政府はチベット人と中国人の結婚を奨励する「混血政策」を打ち出した。この政策は徐々に功を奏しており、2008年末に、同自治区における異民族カップルは666組だったものが、2013年末には4795組と急増している。
同筋は「チベット族と漢族のカップルには優先的に希望通りの職業が斡旋され、医療保険や子供の教育上の優遇策など手厚く保護されることも無視できない。異民族間の結婚によって、チベット独自の文化が失われる可能性が強い」と指摘する。
これ以外でも、チベット人に対する政治、経済などあらゆる部門での差別と抑圧が実施され、「中国はチベットを完全に破壊しようとしている」とセンゲ氏は中国の非道ぶりを強く訴える。
※SAPIO2016年4月号
毎日新聞◇34人死亡
【ブリュッセル斎藤義彦、カイロ秋山信一】ベルギーの首都ブリュッセルで22日、空港と地下鉄駅で連続して爆発が起きた。AFP通信によると、2度の爆発が起きた空港では14人、地下鉄駅で20人が死亡、計200人以上が負傷した。
過激派組織「イスラム国」(IS)関連のニュースサイト「アーマク通信」がISの関与を報じた。事実上の犯行声明といえる。ベルギーのミシェル首相は「卑劣なテロ」と強く非難。ベルギー内務省は対テロ警戒水準を4段階の最高レベルに引き上げた。
アーマク通信は「ISの戦士がブリュッセルの空港と中心部の地下鉄駅を狙って爆弾攻撃を実行した」と報じた。空港襲撃の実行犯は複数の模様で「何人かが爆発物を仕込んだベルトを爆発させる前に銃撃を行った」と説明。地下鉄駅では「別の殉教者が爆発物を仕込んだベルトを爆発させた」と伝えた。ISは通常、同通信の報道後に正式な犯行声明を出している。
地元メディアなどによると、ブリュッセル北郊の国際空港では22日午前8時(日本時間午後4時)ごろ、1階の出発ロビーで連続して爆発が起きた。
最初の爆発は米アメリカン航空のカウンター付近で発生。2回目の爆発は人々が逃げようとした出口近くの米系コーヒーチェーン「スターバックス」周辺で起きた。
検察当局はこのうち1回は自爆テロとの見方を示した。爆発前には銃撃音とアラビア語の叫び声が聞こえたという。AP通信によると、米当局者はスーツケース爆弾が爆発したと語った。
地元メディアは空港の防犯カメラが撮影した容疑者とみられる男性の写真を報道。それによると、2人の男が黒いセーターを着て、荷物用の手押し車を押している。
午前9時10分(同午後5時10分)ごろには、市中心部の地下鉄マールベーク駅から動き始めた列車内で爆発が起きた。同駅は欧州連合(EU)本部に近いシューマン駅の西隣。
空港や市内の地下鉄駅はすべて閉鎖された。ベルギー当局は国内の原子力発電所の警備態勢を強化。ロイター通信によると、ベルギー東部のティアンジュ原発では最低限の要員を残して職員が避難した。
オランド仏大統領は「欧州に対する戦争だ。欧州全体と世界が標的になった」と強く非難した。訪問先のキューバで演説したオバマ米大統領も「世界の人々の安全を脅かす者を打ち負かす」と述べた。
ロンドンとパリ、ブリュッセルを結ぶ高速鉄道「ユーロスター」も運行を取りやめた。ドイツ鉄道は同国西部アーヘンとブリュッセル間の運行を停止した。英独やオランダ、デンマークなど欧州各国が空港の警備や管理を強化した
毎日新聞 【ブリュッセル賀有勇】「がれきの中を逃げた。戦場のようだった」。欧州連合(EU)が本部を置く「欧州の首都」の空港や地下鉄を狙った同時テロ。
空港で爆発に遭遇した人々は、黒煙を上げ、窓ガラスが大破したビルを背に険しい表情で走って逃げた。通勤時間帯を襲った惨事に、ブリュッセル市内は厳戒態勢に包まれている。
「2度目の大きな爆発で天井が崩落した。あちこちが血だらけになり、けが人が倒れ、荷物が散乱した」。
爆発10分前にスイス・ジュネーブからブリュッセル国際空港に到着したという男性は、仏テレビ局に爆発直後の様子を語った。
爆発があった出発ロビーには、爆風ではがれ落ちた天井材や窓ガラスが散乱。床にはけが人から流れる血と、爆発で破損した配管から出た水が混ざっていたという。
爆発当時、空港内にいた英スカイニュースの記者は「すさまじい音がして、建物が揺れるのを感じ、煙と粉じんがわき上がった。人々はショックで放心状態になっていた」と語った。空港で荷物の預かり担当をしていた男性は独メディアに「多くの人が爆発で足を失っていた。
両手を失った人もいた。ベルギーに何の罪があるというのか」と怒りをあらわにした。
ソーシャルメディアに投稿された動画には、窓ガラスが大破し、黒煙が上がる空港ビルから必死で逃げる人たちの姿が映っていた。
空港では、すべての便の発着が停止され、バスで搭乗口まで移動していた乗客らはバスから滑走路上に降ろされ、不安な表情を浮かべていた。いち早く混乱の現場から逃げ出そうと、高速道路上を歩く人もいた。
一方、別の現場である地下鉄マールベーク駅周辺は、発生から8時間近くがたっても一般車両の立ち入りは禁止されたまま。
警察や銃を手にした治安部隊が周囲に目を光らせる中、近くのEU本部周辺から生中継する報道陣以外の人影はまばらだ。ジョン・セバスチャンさん(25)は「実際に身の回りで起きて恐ろしいが、テロは警戒しても防ぎようがない」と力なく話した。
地下鉄の爆発現場では、駅間で停止した電車内から煙が充満するトンネル内を徒歩で逃げ出す人の悲鳴や慌てた様子の動画が独メディアなどに投稿された。
駅近くにいた女性はベルギー紙に「全身大やけどで血まみれの人を目にした。本当におぞましい光景だった」と話した。別の男性(32)はAP通信に対し、「列車が駅を出た直後に大きな爆発音がした。駅には多くの人たちがいたので、周囲はパニックになった」と顔についた血をぬぐいながら語った。