脳梗塞や心筋梗塞など重大な血管の病気は、主に血管内に生じる血栓によって動脈が
詰まって発症する。血管が詰まらないようにタマネギや納豆などの“血液サラサラ”食材を
積極的に食べているという人もいるだろう。だが、池谷医院の池谷敏郎院長によれば、
「血管事故を防ぐのに最も大切なのは、血管の壁に動脈硬化のコブができないようにする
ことと、そのコブが傷つきにくい状態にすること。いくらサラサラ食材を食べても、ひとたび
動脈のコブが傷つけば、そこに血栓が生じる。ただし、魚に多く含まれるEPAには、動脈硬化
の進行を防ぎ、コブを傷から守って血栓を生じにくくする働きがあることがわかっている」。
脚の血管がボコッと盛り上がってきた、くもの巣のように透けて見える…。そんな症状に
心当たりがあったら、下肢静脈瘤かもしれない。命にかかわる病気ではないが、見た目の
問題に加えて、ひどいむくみや痛みを伴うことがある。放置するのは禁物だ。
なぜ、下肢静脈瘤になってしまうのか。血管には、心臓からの血液を送り出す「動脈」と、
使い終わった血液を心臓に戻す「静脈」の2種類がある。脚の静脈は重力に逆らって、
血液を心臓に送り返している。そのため、逆流を防ぐ「ハ」の字形の弁がいくつもついている。
ところが、立ちっぱなしだったり、運動不足で筋肉の収縮によるポンプ作用が不十分だと、
血液が静脈によどんで、弁にかかる圧力が増す。その状態が長時間続くと、弁が壊れて
静脈に血液がたまり、その結果、瘤(こぶ)のように盛り上がってしまう。それが下肢静脈瘤。
主なタイプは、「伏在(ふくざい)静脈瘤」「陰部静脈瘤」「網目・クモの巣状静脈瘤」などだ。
お茶の水血管外科クリニックの広川雅之院長によると、「30~40代の女性によく見られる
のは、陰部静脈瘤」という。「瘤ができるのは、卵巣や子宮周辺から脚の付け根を通って
太もも裏に走る静脈で、目立たない。そのため気づかないことも多いが、月経のたびに
太もも裏側の痛みや脚のむくみが強い場合は、陰部静脈瘤の可能性がある」(広川院長)。
悪化させないためにはセルフケアが重要。お薦めはつま先を上げ下げする「足首起こし」や
背伸びをしながらの深呼吸。「椅子に座って、かかとを床につけたまま、つま先を持ち上げる。
トントンと、リズミカルに10回持ち上げたら、背伸びをして深呼吸を。これを1時間おきに行う
だけで静脈の血流が改善する」(広川院長)。
また、弾性ストッキングは脚をほどよく圧迫して、血液の逆流を抑える。むくみがつらい人は
試してみて。セルフケアで症状が改善されない場合は、医師に相談を。
健康保険で受けられる血管内レーザー治療もある。
(2015年1月11日 日本経済新聞)