脂肪肝とは、肝臓に脂肪が大量に蓄積した状態をいいます。肝臓の周りにたくさんの
脂肪がついている状態を想像する人が多いのですが、実はそうではありません。
脂肪肝とは、肝細胞の一つひとつに脂がたまってしまっている状態です。
脂肪肝とは、肝臓の周りではなく、肝臓の中に脂肪がたまっている状態を
いうのです。
脂肪肝になっても、自覚症状はありません。しかし、放っておくと、肝機能は低下
していきます。健康な人でも肝臓には3%の脂肪がたまっていますが30%以上
脂肪がたまると脂肪肝と診断されます。
とはいえ、自覚症状がないので、ほとんどの人が健康診断で初めて、自分が脂肪肝で
あることに気づかされるというのが実状です。しかも、脂肪肝は、血液検査の数値
だけ見ても判断できません。脂肪肝かどうかを診断するには、腹部超音波(エコー)
検査を行う必要があります。エコーの画像を見れば一目瞭然。本来であれば、
肝臓はグレーに映りますが、脂肪肝の場合は明らかに白く見えるからです。
現在、日本では、健康診断を受けた人の20%は脂肪肝であるという統計データが
出ています。実に、受診者の5人に1人は脂肪肝ということになります。
男女別で見ると、男性が40歳前後、女性は40歳以降で、3:1で男性のほうが多く
みられます。つまり、脂肪肝になるリスクが最も高いのは、“働き盛りの中年男性”
といえるのです。
三大原因は肥満、酒、ダイエット
お酒を飲まない人の脂肪肝も増加中!
脂肪肝の原因は大きく分けて3つあります。
まず1つめが、食べ過ぎと運動不足が原因の「過栄養性脂肪肝」。
最も多いのがこのタイプで、とくに、肥満傾向にある人は要注意です。
運動もせずに暴飲暴食の食生活を続けていると、肝臓にどんどん脂肪がたまって
いき、約3ヵ月もすれば脂肪肝になってしまいます。
また、このタイプの脂肪肝には、糖尿病が潜んでいる可能性もあるので、病院などで
チェックすることをおすすめします。
2つめは、お酒の飲み過ぎが原因の「アルコール性脂肪肝」です。
アルコールは度数にかかわらず、飲み過ぎると肝臓に大きな負担をかけます。
体内で完全にアルコールを分解するのにかかる時間は、清酒2合なら7時間以上、
ビール1本でも最低4時間が必要といわれています。また、「日本酒を毎日3合以上
飲み続けると、1~2年で脂肪肝になる」というデータもあるように、お酒は脂肪肝の
大きなリスクファクターなのです。
ちなみに、節度ある1日の飲酒量をご紹介すると、ビールならば中ビン1本(500ml)、
ワインならばグラス2杯(200ml)、清酒ならば1合(180ml)、25%の焼酎ならば
0.5合(90ml)、ブランデーやウイスキーはダブル1杯(60ml)とされています。
この範囲ならばアルコールによる肝障害のリスクは低いと言えます。
ただ、アルコール代謝には個人差があるので、もともとアルコール代謝が弱い人は、
缶ビール1本でも飲み過ぎという場合もあります。そのため、どれだけ飲んだかを
気にするよりは、二日酔いになるまで飲んでしまう生活を続けないことが大切です。
二日酔いは、肝臓がアルコールを処理しきれずに、悲鳴を上げている状態であるこ
とを覚えておいてください。
3つめは、意外に思うかもしれませんが、ダイエットが原因の「ダイエット脂肪肝」
です。実は、太っている人だけが脂肪肝と診断されるとは限りません。
極端にカロリーを抑えた食事を続けている場合も、肝臓に脂肪がたまっていき、
脂肪肝になってしまうのです。とくに、1日に菓子パン1個だけ、卵だけ、フルーツ
だけなど、一つの食品ばかり食べ、過度なダイエットをしている人は要注意。
栄養バランスのとれた食事に切り替えないと、痩せているのに脂肪肝になってしまう
危険性があります。無理な食事制限を行うダイエットはしないように心がけましょう。
◆アルコールを飲んでいない人でも脂肪肝になるケース
このケースは、エコー検査をしても、見た目は全く脂肪肝と同じ。しかし、これは
単なる脂肪肝でなく、実は肝炎が潜んでいる病気なのです。
アルコールを飲んでいないのに肝臓に脂肪がたまってくるので、「非アルコール性
脂肪性肝炎」(ナッシュ、NASH=Non-alcoholic steatohepatitis)と呼ばれて
います。
さらに「NASH」が問題なのは、発がんリスクをともなう肝炎であるという点です。
B型肝炎でもC型肝炎でもなく、アルコールを飲んでいない人でも、「NASH」に
なると肝がんが発生するリスクが高まってくるのです。
残念ながら、「NASH」の明確な要因はわかっていないのが現状です。
食事も飲酒も減らせないあなたに…
ウォーキングで改善&予防できる!
食事や飲酒の量は、それほど制限しなくても、ちゃんと運動さえしていれば脂肪肝に
なることはないのです。
とくにおすすめなのが、ウォーキングなどの有酸素運動です。
有酸素運動は、脂肪肝を予防するだけでなく、脂肪肝になってしまった人でも
肝臓を元に戻す効果があるからです。有酸素運動を続けていると、脂肪が燃焼して
体重が落ちるとともに、肝臓の中にたまっていた脂肪も抜けていきます。
そして、その脂肪が抜けたスペースには、隣の肝細胞が分裂して、新しい肝細胞が
入ってくれるのです。つまり、脂肪肝から卒業できるというわけです。
(2014年12月18日 DIAMOND on line)
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