私たちの鼻のあなの内部には、縦横数センチ、複雑な形状をした鼻腔(びくう)
が広がっている。この鼻腔の粘膜が、吸い込む空気に適度な温度と湿度を
与えると同時に、そこから異物を除く。
鼻づまりの正体は、私たちの体が防衛機能として備えている鼻腔の粘膜の腫れ。
外界から異物が入ったことを鼻腔の粘膜が感知すると、まずはクシャミで
異物を排出。次に、多量の鼻水を分泌して洗い流し。さらに、粘膜を腫らす
ことで鼻腔をふさぎ(鼻づまり)異物から体を守ろうとする。
鼻づまり自体は誰にでも起こる現象だが、鼻風邪であれば1週間ほどで、
花粉症なら花粉の飛散が終了すれば回復する。しかし、鼻づまりは慢性化
すると、治りきらない状態が本人も気づかぬうちに続いてしまう。
■集中力損ねる
日中はそれほど鼻づまりを意識しない人でも、夜眠っている間に口呼吸を
しがちになり、眠りが浅くなったり、大きなイビキをかいたりするように
なる。鼻づまりが睡眠時無呼吸の一因になり、日中の眠気をもたらすことも
ある。日中にも頻繁に強い鼻づまりを感じるようになると、仕事の集中力を
著しく損ねることになる。
慢性的な鼻づまりを解消するには、耳鼻咽喉科の専門医に相談し、自分の
鼻づまりの原因を明らかにすることが大切だ。
鼻中隔わん曲症はうまれつきの疾患だ。鼻腔には内部を左右に分けている
鼻中隔という軟骨組織がある。成長とともに軟骨も大きくなるが、その途中で
大きくわん曲してしまい、鼻の左右のどちらかを圧迫し、空気の通りを悪く
する。強い鼻づまりを起こす病気として知られているのは副鼻腔炎だ。
顔面の骨にはいくつかの空洞があり、空気の出入り口は鼻腔にある。
この副鼻腔に細菌などによる慢性的な炎症が起こったものが副鼻腔炎だ。
症状が進むと黄色い鼻水が常に出る、顔面が痛い、匂いが分からないと
いった症状も現れる。さらに副鼻腔の出入り口に鼻ポリープ(鼻たけ)が
できると、鼻腔をふさぎ重い鼻づまりを起こす。
専門家の診断で自分の鼻の状態がはっきりすれば、どんな治療があるか、
どう生活を改善すればいいかが分かる。
鼻づまりを起こす粘膜の腫れに対して、まず用いられるのはステロイド
鼻噴霧薬だ。また、「鼻うがい」ともよばれる鼻洗浄方法を指導し経過を
みることもある。
「鼻うがい」とは、鼻腔を刺激しないような温度の生理食塩水を鼻に注入し、
内部を清潔に保つというもの。注入容器などは薬局、薬店などでも購入
することができる。
■こまめに掃除
慢性鼻炎の原因となるハウスダストなどのアレルギー物質になるべく触れ
ないことも重要だ。こまめに住居を掃除し、強く乾燥した環境での作業は
マスクをする。
(2014年5月24日 日本経済新聞)