もしかして!?慢性疲労症候群
●慢性疲労症候群とは?
慢性疲労症候群の疲労は、休息をとって頑張れば何とかなるものではなく、
全身が鉛のように重く、座っているだけでも強烈な疲労を感じたりするなど、
日常生活に破たんをきたすほどの激しい疲労を感じる病気です。
1980年代にアメリカで報告された病気で、20~50歳代の働き盛りの世代に
多く、約2対1の割合で女性に多いとされています。
疲労のほかにも微熱や頭痛、のどの痛み、筋力低下、筋肉痛、関節痛、
睡眠障害、思考・集中力低下、首のリンパ節の腫れなどさまざまな症状が
現れます。
疲労感や思考・集中力の低下などはうつ病にもみられる症状のため、
診断が難しい病気です。
●感染症やストレスが関係
日本では慢性疲労症候群の約3割が、インフルエンザウイルスやヘルペスウイ
ルスなどのウイルス感染をきっかけに発症しています。
感染後に発症した患者さんについては、海外では筋痛性脳脊髄炎(ME)と
診断して治療が行われていますが、日本では感染後慢性疲労症候群と診断
されています。
また、過重労働、人間関係、建材や騒音などの生活環境ストレスが発症に関係
していることもあります。こうしたストレスが続くと免疫の働きが低下し、体内に
潜んでふだんは活動が抑えられているウイルスの再活性化が起こります。
そのため、体内では免疫物質が異常に作り出され、これが脳に悪影響を与え
たり、神経・内分泌・免疫の働きのバランスを崩したりします。
その結果として脳の機能に異変が起こり、激しい疲労やさまざまな症状が引き
起こされます。
●診断と治療
内科や心療内科、精神科を受診しても疲労の原因になる病気が見つから
なかった場合は、慢性疲労症候群の可能性があります。
一般的な血液検査や尿検査などでは判定できないため、総合診療科や慢性
疲労症候群の専門外来を受診するとよいでしょう。
確定診断のために、まず問診で疲労感・微熱などの10項目の症状と期間を
チェックします。5項目以上が6か月以上続いているときは、自律神経の機能、
睡眠リズム、血液中の活性酸素などを調べる検査が行われます。
慢性疲労症候群の治療では、免疫の働きや抗酸化力を上げ、脳の機能の
改善を目指します。漢方薬の補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を服用し、
ビタミンCを多く摂ります。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使わ
れることもあります。規則正しい生活や十分な睡眠も大切です。
慢性疲労症候群は、専門医の医師が少なく診断が難しい病気です。
医療関係者の間でもこの病気があまり理解されていないのが現状です。
患者さんのなかにはいくつもの病院を回って、ようやく「慢性疲労症候群」の
診断を受ける場合があります。
現在のところ、慢性疲労症候群は一度かかると治すのが難しい病気であり、
なかには"怠けているだけ"と思われて孤立し、病状が悪化している場合も
ありますので、家族や周囲の人の理解が非常に大切です。
1年中寝たきりの状態で介護が必要な方もおられる程です。
この病気の社会的な理解が求められています。
(2012年2月15日放送 NHKきょうの健康)