落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

チャイニーズ・ナイト

2006年10月25日 | movie
『Crazy Stone』中国語公式HP

もーーー爆笑。おもしろかったですー。
偶然が偶然を呼んで転がっていくコメディ、というギミックは寧浩(ニン・ハオ)の前作『モンゴリアン・ピンポン』と同じなんだけど、エンターテインメント映画としての完成度にはものすごい飛躍があった。とにか?ュスカッと笑えて、共感できて、驚きもある、老若男女誰が観てもどこへ出しても通用する娯楽作品として、非常によく出来てると思う。
この映画は日本での一般公開が決まってるそーです。すばらしー。
上映後にティーチインがあり、登壇者は主演の郭涛(グォ・タオ)と音楽担当のファンキー末吉。音楽すんげーよかったですよ。ハイ。
「低予算で監督も含めスタッフがみんなとても若く、自由な雰囲気の現場で仕事が非常にやりやすかった」
「最初にもらった台本もすばらしかったが、読みあわせを経て俳優の意見なども踏まえてセリフが変更された部分もある」
「ナイトシーンが多く、撮影中ほとんど寝るヒマがなかった(撮影スケジュールを指して『アメリカ時間』といったそうだ)」
「男ばかりでほとんど女性のいない現場だったので、しょっちゅうみんなで飲みにいった」
「乱闘シーンではほんとうに殴りあっている(!!)のでよく怪我をした」
「主人公はいわゆる“正義の味方”だが、教育程度も生活水準も低いし頭のめぐりもよくない、既存の中国映画の完全無欠な英雄よりもずっと共感しやすいキャラクター。そういうところが中国の観客にウケたのではないか」
「(郭涛演じる)包世宏と同名のプロデューサーは、映画の包世宏と同じく前立腺炎を患っており、映画の包世宏は最後には無事おしっこが出るようになるのだが、偶然プロデューサーも映画の完成後に全快したという」
「監督との打合せはまず言葉ではなく、こちらがつくった音楽を聴いてもらって音楽でやりとりをするところから始めた。メインテーマは同じメロディだが、主人公/香港の怪盗/盗賊3人組で使用する楽器を変えてある。主人公は琵琶などの伝統楽器、怪盗は電子楽器、盗賊はギターなど」
とかなんとか。

斜陽日記

2006年10月25日 | movie
『おばさんのポストモダン生活』中国語公式HP

うーむ。さすが許鞍華(アン・ホイ)。さすが巨匠です。
もうコレに比べたら他の出品作なんかみーんな「青いわね」の一言でかたづいてしまいそうだ。それくらい完成度が高い。ストーリー展開に落着きがあり、演技に説得力があり、メッセージに含蓄がある。「酸いも甘いも噛みわけた」映画、というのがあるとすれば、まさにこういうのをいうのだろう。
斯琴高娃(スーチン・ガオワー)演じる葉女史のキャラクター造形、彼女の辿る運命そのものには奇抜なところは何もない。どこにでもいるごくふつうのおばさんだし、都会に暮す独居女性のドラマといえば誰にでも簡単にオチが読めてしまうようなありきたりの悲喜劇の連続。
それでもこの映画がおもしろいのは、彼女も含めた登場人物の感情が実に緻密に丁寧に、誠実さを極めて描写されているからだと思う。だから、彼女たちが求める「豊かさ」や「快適さ」といった現代的な価値観の虚しさと、それでも富を求める人情のリアルさが、あたたかく、愛おしく懐かしく感じられるのだろう。
周潤發(チョウ・ユンファ)の超うさんくさい二枚目役がまたサイコー(笑)。この人が画面に映ってるだけでおかしくておかしくてしょうがなかったです。しかしかっこいい。やっぱ男は中年だわ(爆)。
音楽が久石譲だったので、かなりの場面でつい北野武映画やジブリ映画を反射的に連想してしまった。この人の書く音楽はもう全部いっしょに聞こえるさアタシは(滝汗)。