映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

凶悪

2014年05月04日 | 映画(か行)
放出された“毒”にやられた・・・



* * * * * * * * * *

ベストセラー、ノンフィクションを映画化したものです。
東京拘置所の死刑囚である須藤(ピエール瀧)が、
ある雑誌社に告発文を送ってきました。
担当となったジャーナリスト藤井(山田孝之)が、
須藤の元へ面会に行き、話を聞きます。
須藤は言う。
彼は死刑判決を受けた事件の他に、3つの殺人に関与しており、
そのすべては「先生」と呼ばれる男が首謀者だ、と。
藤井は裏付けのため調査を進めますが、
次第に恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていくのです。



いやあ、なんというかノンフィクションというので余計に胸にズシンと来まして、
その強烈な“毒”にやられたように、
見終わった頃にはすっかり具合が悪くなってしまいました。
須藤もさることながら、
この“先生”こと木村(リリー・フランキー)の残忍さが、
怖いというか、やはり胸クソが悪くなるという感じ。
札びらを切り、人の命の重さなど全く考えもしない。
遊びのように人を殺す。
おそるべし、ピエール瀧&リリー・フランキー。
(字面だけ見ると、国籍不明ですね・・・)



特にリリー・フランキーが、こんなに人相悪く悪人になれるなんて、信じられない。
こんな風に、何の罪悪感も抱かずに人を痛めつけ殺すことができてしまうヒトが居る
というのが最大の衝撃でした・・・。



本作でこの“毒”に当てられた最大の被害者が、藤井であります。
彼はこの事件の捜査に熱中するあまり、
家庭を省みず、ついには妻から離婚をつきつけられてしまいます。
妻は認知症の藤井の母の世話をたった一人で引き受け、疲れ果てていたのです。

「隠された殺人事件を暴くことが、家族のことより大事なの?
あなたは、事件に逃げているのよ。」



いや、全くその通り。
事件を暴いても、実は誰も報われない。
被害者の家族すらも・・・。
でも、藤井はもう抜けられないのです。
この恐るべき“毒”にすっかり魅入られていて・・・。
藤井にとって使命感であったはずのものが、
終盤はほとんど狂気と言っていいくらいのようになっていたのでした。

凶悪 [DVD]
山田孝之,ピエール瀧,リリー・フランキー,池脇千鶴,白川和子
Happinet(SB)(D)


2013年/日本/128分
監督:白石和彌
出演:山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴、白川和子

凶悪度★★★★★
満足度★★☆☆☆
(すごい作品であることは間違いがありませんが、やはり好みではない、ということでご容赦を・・・)

ある過去の行方

2014年05月02日 | 映画(あ行)
封印された過去が動き出す



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イランに住むアーマドは
妻マリーと正式に離婚の手続きをするために、パリを訪れます。
しかしかつて彼も共に住んでいた家に、
既に結婚予定のサミールとその連れ子が暮らしていた。
そんなことはアーマドには一言も告げられていなかったのですが・・・。



そんなところがちょっと不思議です。
なぜマリーはわざわざこんな気まずい状況を作るのか。
不可思議な人の愛と心理
・・・そんなことの発端が、始まってすぐにから提示されますね。



さて、この家にはマリーのアーマド以前の夫との間の女の子が二人います。
しかし長女リュシーが最近母マリーとうまくいっていない。
マリーはアーマドにリュシーと話をするよう頼むのです。
血の繋がらないアーマドとリュシーは
不思議に気持ちが通じ合う。
多情でヒステリックなマリーに悩まされる「同士」であるかのようです。
問題は自殺未遂のため現在植物状態で眠り続けるサミールの妻のことでした。
彼女はそもそもなぜ自殺をしようとしたのか。



ベールを一枚一枚剥ぐように、真相が現れていきます。
それぞれが抱え込んでいた過去の行為や本心が、少しづつ明らかにされていくのです。
サスペンスのように描かれる家族や夫婦の愛。
それは確かに、謎めいていてスリルに富んでいます。
蓋をしていた過去が、アーマドの登場によって一気に放たれる。
そんなことをも知らず、ひたすら眠り続ける女性は、
果たして懐かしい香りで眼を開くのか・・・。
いやあ、このまま眠り続けたほうが幸せのように思いますけれど・・・
こんなにも真摯なアーマドが、なぜマリーと別れなければならないような事になったのか、
そちらでももう一本映画ができそうな感じでした・・・。
2度の離婚というのは、どうもマリーに問題がありそうな気がしてしまうのですが・・・。



「ある過去の行方」
2013年/フランス・イタリア/130分
監督・脚本:アスガー・ファルハディ
出演:ベレニス・ベジョ、タハール・ラヒム、アリ・モッサファ、ポリーヌ・ビュルレ、ジャンヌ・ジェスタン

真相の追求度★★★★☆
満足度★★★☆☆

ポスター犬 22

2014年05月01日 | 工房『たんぽぽ』
さらば、ヒーローたち



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おなじみの、スパイダーマン。
アメイジング・スパーダーマン2が現在公開中。

私も、以前は見ていたのですが・・・
最近こういうのを全然観る気がしなくなってしまいました。

 

きっかけは、もしかするとこのあいだの「アベンジャーズ」?
いえ、それは本当に単にきっかけであって
そろそろ本当に嫌になりつつあったのかもしれません。
アメコミのヒーロー物・・・
あるいはそれに類したもの・・・
シラケたというか、バカバカしくなったというか・・・
それはこちらの子供心が失われた老化現象かも知れないし、
逆に言えば、ようやく大人になったのかも知れないし。

まあ、よほど暇な時にレンタル視聴はあるかもしれませんが
少なくとも劇場で見ることはないかも。

自分自身の心境の変化が
チョッピリ寂しくもある、私でした。




写真は、久しぶりにコーギー。
なんだかうちに以前いた愛犬に似てしまった。