ちゃん

2007年02月06日 | 健康・病気
今日、久しぶりに山本周五郎の小説を読んだ。
この何週間かおれはすごく落ち込んでいます。
それで手に取ったのが、
人は負けながら勝つのがいい」山本周五郎(学陽書房)という本だった。
おれの数少ない蔵書(なんか大袈裟な言葉だな)の1冊で、
その本の最初にあるのが「ちゃん」という小説です。

重吉というおれみたいな呑兵衛が、
毎月の14日と晦日(みそか)にくだをまきながら長屋に帰ってくる。
この日は勘定日で、職人たちが賃銀を貰う日であり、
またかれらの家族たちが賃銀を持ってくるあるじを待っている日でもある。
夜遅く、長屋がひっそりしているときに、
重吉はよろめいて帰ってきて、戸口のところでへたりこんでしまう。
「銭なんかない、よ」
「みんな飲んじまった、よ」
すると雨戸をそっとあけて、長男の良吉か、かみさんのお直が呼びかける。
「はいってくれよ、おまえさん」
「ご近所へ迷惑だからさ、大きな声ださないではいっておくれよ」
喉をころしてお直がいう。
「ちゃん、はいんなよ」と良吉なら云う。
「そんなところへ坐っちまっちゃだめだよ。こっちへはいんなったらさ、ちゃん」
たいていの場合、お直と良吉で、重吉の片はつく。
しかし、それでも動かないときには、3つになる末娘のお芳が登場だ。
「たん」もちろん父(ちゃん)の意味である。
「へんなって云ってゆでしょ、へんな、たん」

重吉のまわりで、冬は足踏みをしていた。(いい文章だな~)
ある晩、重吉が昏(く)れがたの街を歩いていると女が呼びかけた。
そしてそのお蝶の店で飲む。
中にはいってみると新助がいた。
日本橋両替町の店は、五桐火鉢という物を作っている。
重吉と新助はその店の子飼いの職人だ。
新助はそこで働いていたのだが、五桐火鉢が売れなくなりはじめた頃、
かれは店を出て独立し、流行りの火鉢を作って景気よくなっていた。
売り上げの悪くなった店に残った重吉は、相変わらず貧乏だった。
新助は重吉に店を出て独り立ちすることを勧めた。

こんなふうに書いていくと、終わりまでいきそうだ。
短い小説だから読んでない人にはぜひ読んでもらいたい。
新潮文庫ではどれに載ってるのかな。

おれは、はからずにも読んでいて涙を流してしまった。
過去に何度か読んでいたのにです。
やっぱり周五郎はいい。
コメント (2)
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