熱帯アジア動物記―フィールド野生動物学入門 (フィールドの生物学) 価格:¥ 2,100(税込) 発売日:2009-11 |
平凡社の今はなきアニマを読んで、熱帯雨林への思いを募らせた世代。廃刊になったのは90年代だったと思うから、もう知らない「若者」も多いだろう。ぼくも一度だけ、ペンギンについて写真と文章を書かせてもらったことがあったっけ。
さて、本書は東海大学出版会の「フィールドの生物学」シリーズ第一弾で、それだけに、なかなか気合いの入った内容になっている。そして、なんとなく、アニマを読んで得たあの興奮を、彷彿させるものを、感じさせてくれる好著だ。
メインの話題は、ボルネオのヒメマメジカで、著者の研究により、従来夜行性だったと思われていたのが、昼行性であったこと、また、夜行性だと誤解された原因、昼間の行動パターンなどが明らかにされていくのはスリリング。こういうことが分かると、研究やっているぜー、という気分になるだろうなあ。
しかしそれよりも、なんのツテもなくボルネオに入り、ゼロから調査地をみつけていったくだりが、本当に身につまされてよい。
若い頃の苦労は買ってでもしろ、というのは、ぼくは眉唾に感じていて、若い人にわざわざ苦労しろとは言わない。自分も苦労したくない。しかし、この著者の若い頃の苦労は、しっかり結実し、研究面でも、その他の面でも(たぶん)たわわな実をならしいてるようだ。
その点で、読むと勇気が湧いてくる。
うん本当にいいシリーズだ。引き続き別のも読んでいこう。お奨め。