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道義的観点と美的観点

2008年11月23日 01時49分33秒 | Weblog
 なぜ、道徳的に善いことをすべきなのか?というのは古くからある哲学的問いである。道義的価値と道義以外の価値がかち合うときに問題が生じる。例えば、極端に言えば、無性に人を殺したくなっちゃった、という利己的な衝動があった場合、道義的観点から、説得的な理由によって、それは抑止できるか?

 捕まると死刑になっちゃう、というのは、自己利益を考えた計算によるもので、道義的観点ではない。捕まらなくてはやるべきだ、捕まって死刑になってもよいなら、やるべきだ、という結論になるが、しかし、道徳的観点からはよろしくない。なぜ、よろしくないのか?ーーーといったような議論である。

 道義的であるべきなのは、それが人生を意味あるものにするからだとか、理性的であるべきものなら従うべき道しるべだとか、言う人もいるが、道義と関係ないところに人生の意味を見いだす人もいれば、理性的でかつ利己的であることもあり得る。
 結局、
Reason by itself does not require us to be moralWhy should we care about justice?(←リバタリアンのサイトであるが、面白そう)

 理性が道義を命じるわけではない、というのが的を得ているのかもしれない。
 
 いや、別におれが反道徳的な行為をしたい、というわけではない。利己的に考えても不道徳は不利益が多いし、そもそも、歳のせいか、反道徳的なことにとくに魅力も感じない。善人でもないが、反道徳的な悪行をする気もしない。

 この前の紹介したに面白い引用があったんだ。
Why should we be good?" he replied, because it's so beautiful.
page 353 Walter Pater

「なぜ、善い人であるべきか?だって、美しいじゃないか?」
ーーーおもしろい。
善い行いをすべき理由に美をおく。
しかし、善を美に服従させてしまうと、実は、
There were moments when he looked on evil simply as amode through which he could realize his conception of the beautiful.
page 336 Oscar Wild

悪も美を実現する様態として許容されるようになる。悪ーーーこれも美しい!!!とかなんとか・・・

思い出すのが、芥川の地獄変、
美の追究のために、地獄絵を描くために、娘が焼かれるのを目前にして、
その火の柱を前にして、凝り固まつたやうに立つてゐる良秀は、――何と云ふ不思議な事でございませう。あのさつきまで地獄の責苦(せめく)に悩んでゐたやうな良秀は、今は云ひやうのない輝きを、さながら恍惚とした法悦の輝きを、皺だらけな満面に浮べながら、大殿様の御前も忘れたのか、両腕をしつかり胸に組んで、佇(たゝず)んでゐるではございませんか。それがどうもあの男の眼の中には、娘の悶え死ぬ有様が映つてゐないやうなのでございます。唯美しい火焔の色と、その中に苦しむ女人の姿とが、限りなく心を悦ばせる――さう云ふ景色に見えました。

誰でもあの屏風を見るものは、如何に日頃良秀を憎く思つてゐるにせよ、不思議に厳(おごそ)かな心もちに打たれて、炎熱地獄の大苦艱(だいくげん)を如実に感じるからでもございませうか

ところが、
それも屏風の出来上つた次の夜に、自分の部屋の梁(はり)へ縄をかけて、縊(くび)れ死んだのでございます。一人娘を先立てたあの男は、恐らく安閑として生きながらへるのに堪へなかつたのでございませう。地獄変

というように、やはり、道義的良心に屈服(?)した。

 屈服しなかったというよりは、笑いとばしのは、宮沢賢治の毒もみのすきな署長さん、人を毒殺しておいて、ばれて処刑にあうとき、
いよいよ巨(おお)きな曲った刀で、首を落されるとき、署長さんは笑って云いました。
「ああ、面白かった。おれはもう、毒もみのことときたら、全く夢中(むちゅう)なんだ。いよいよこんどは、地獄(じごく)で毒もみをやるかな。」
 みんなはすっかり感服しました毒もみのすきな署長さん


 その含意するところを考えれば、子供に読ませていいものか、どうか?
(*似たような問題意識はドストエフスキーやマルキドサドにもあるだろう。)

 しかも、道義に外れた行為を喜んでやってのけた二人に対して、大衆は「不思議に厳(おごそ)かな心もちに打たれ」また、「みんなはすっかり感服しました」という。道義に縛られた生活をしている大衆の心の何を動かしたのだろうか?

(なお、毒もみの話は永井均氏がどこかで引用していたように思う。)

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