事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

極私的大河ドラマ史PART30 武田信玄

2018-09-30 | 大河ドラマ

その29「独眼竜政宗その2」はこちら

さてバブル真っ盛りの88年(事実上の昭和最後の年だ)、またしても大河ドラマは大ヒット。原作新田次郎、脚本田向正健による「武田信玄」だ。ウィキペディアでは興味深いエピソードがたいそう紹介されている。

・主役のファーストチョイスは松平健あるいは役所広司。中井貴一は上杉謙信役候補だった。

・脚本の田向と中井貴一の間には何らかの確執があったようで「演技を否定されるのならば自分の努力でなんとかやりようもあるが、人間的に否定されるようなところがあって、撮影中ずっと悩み続けた」と中井は述懐している。

・そのためか、家臣を演じた菅原文太は「これはお前の番組だ。どんなわがままをいってもいいんだ。」と中井を応援した。

……ふむ。何があったんだろう。そんな裏があるのも、いかにも策を弄する武田信玄に似つかわしいとも言えそう。

ただやはりわたしは武田信玄役に中井貴一は不向きではなかったかと思う。スクエアなルックスで、まじめな役が多かった彼に、だからこそ不幸が次々に襲ってくることで苦悩する姿を演じさせたかったという意図はわかるのだが。

「影武者」(黒澤明)で仲代達矢が身代わりの悲哀をシェイクスピア劇のように演じ、「笛吹川」(木下恵介)では領民からすべてを奪う悪鬼のように描かれた男を演ずるには、何かが……

伊達政宗と違い、信玄には天下を取る能力と機会はあふれるほどあった。武田勢の強さは戦国随一の評価、ライバルの上杉謙信(柴田恭兵)はファナティックな人物で、天下を狙うつもりがさらさらなかったのだし。

しかも部下に恵まれていた(葛藤もあった)。宍戸錠児玉清、菅原文太、本郷功次郞、そして上条恒彦が並んだ評定の場は、このドラマを象徴していた。女優の豪華さや若尾文子

「今宵ははここまでに致しとうござりまする」

というナレーションでコーティングされているものの、やっぱりこの大河は男のドラマだったろう。最高視聴率49.2%、平均視聴率39.2%。この数字はやっぱりすごい。

その31「春日局」につづく

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ブラタモリ 酒田

2018-09-29 | まち歩き

自分の住む町に、有名人が訪れたらそれはやはりうれしい。これまでにも酒田には

・JRの企画で吉永小百合

・刑事ドラマとかで大杉漣

・そして泉谷しげる&近藤真彦

・なんとハリウッド映画で役所広司

・いろんな事情でミスチルの桜井

・そうですか勤務校のすぐそばにTOKIO

……など、いろんなパターン。わたしが東京に住んでいたときよりはるかにありがたい感じ。でもさすがに今回の「タモリがやってくる」のは最強だろう。よく考えてよみなさん、向こうからタモリが歩いてくるんだよ。

というのも、ブラタモリの企画で来ているのに、マニアな酒田市民は「タモリ倶楽部」のマニアックな企画で来ているのではないかとも思えるからだ。あの番組をYouTubeで延々と見ているわたしにとっては最高の贈り物。しかもすんげー面白い。今回は空耳アワーないんですか。ないわな(笑)。安斎さん酒田に来てよー。

この本間家の本邸でおれはおじさんおばさんの結婚披露宴でおちょめちょ(説明するのもめんどくさい)をやったんだよなとか、兼務していた飛島がこんなにフューチャーされるとは思わなかったとか、おいおい山居倉庫の中って見せることもあるんだとか、妻と見ながら、しみじみする。

「また飛島に行きたくなったでしょ」

……ちょっとだけね(笑)

「このアナウンサーってあなたの好みでしょ。えーと、えーと、あの人に似てる」

「吉高由里子?」

「そう!」いいからそういうのは。好きだけど。

NHKに依頼されたのか知らないけれど、案内人の酒田市職員の力みが消えていくあたりがうれしい。とてもいい感じでしたよ。宣伝効果を考えれば数億円(この発想はいかがなものかと)。また来てねタモリ。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

うまい店ピンポイント2018年秋 馬場

2018-09-29 | 食・レシピ

華煌篇はこちら

あきほ町に移ってしまった馬場。職場から遠くなってしまって哀しい哀しい。

でも鵜渡幸(うどこう)の跡に居抜きで入った戦略は大成功みたい。お客さんでいっぱいだ。客層もバラエティに富んでいるので強い。

いただいたのは富士見町にいたときと同じようににく中華。妻は普通の中華そば。カウンター。

お勘定を妻にお願いして<(_ _)>、先に外に出て一服。妻は

「おいしかったわあ」

「だよね」

「あたしがここを今日は選んだのよね」

そういうことを言わなくていいですよ(^_^;)

「いち」篇につづく

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ウインド・リバー」Wind River (2017 ワインスタイン・カンパニー)

2018-09-28 | 洋画

ボーダーライン」で切れ味鋭い脚本を披露したテイラー・シェリダン監督作。主演はジェレミー・レナーとエリザベス・オルセンのアベンジャーズ組(ホークアイとスカーレット・ウィッチ)。

ウインド・リバーと呼ばれるワイオミング州のネイティブ・アメリカン保留地(わたしの世代だと「インディアン居留地」のほうが耳になじむ)で、少女の死体が発見される。彼女はレイプされていた。見つけたのはハンターのランバート(レナー)。

ネイティブ・アメリカンの友人の娘の無惨な死は、同じ経験をもつランバートの悲しみを呼び起こす。FBI捜査官ジェーン(オルセン)は、この土地の暴力的な自然に追いつめられながら捜査を進める……

まず、画面が常に白い。厳寒のワイオミングにおいて、人が圧倒的に無力であることを雪が象徴している。そして、そんな不毛の地にネイティブ・アメリカンは追いつめられ、怠惰に暮らしている。この事件はそんな歴史的背景をそのまま絵解きするものだった。

マイナス20℃のなかで人が走ると、肺が破裂して喀血するあたりの描写がオープニングとラストにセットされている。周到な作劇。

広大な土地(地下核実験場でもある)に警察官はわずか6人。つまり、犯罪捜査など行われなくても仕方がないと見放されているのだ。今回の被害者やランバートの娘以外にも行方不明の少女は多いが、その数すら把握されていない。

土地も、人も国家から見放されている状況を、ネイティブ・アメリカンでありながら死に化粧の仕方すらわからない(歴史を受け継ぐ機会すらなかった)父親の嘆きで描ききる。

かつて能天気に“インディアン”“騎兵隊”“退治”した西部劇から幾星霜。馬はスノーモービルに替わり、しかし銃はまだこの国で幅をきかせている。

ラストの復讐のあり方もふくめて、ひたすら考えさせる傑作。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

検察側の罪人ふたたび。

2018-09-27 | 邦画

PART1はこちら

たとえばこの映画にはふたりの容疑者が登場する。大倉孝二がうまいのは当然としても、もうひとりの酒向芳(さこうよし)ってご存じですか。

思わず「驚異の新人!」と言いたくなるけれども芸歴は長い。殺人に淫してしまった過去へのコンプレックスとプライド。実は犯行を語りたくて仕方がないマザコン中年男を演じてまさに絶品。あの「んぱっ!」(観た人しかわからなくてすみません)は演技として正しい。この役は第一候補がキャンセルされたので彼に回ったのだとか。このチャンスは生かしてほしい。

他にも、事件を担当する刑事(谷田歩)、うだつのあがらない弁護士(八嶋智人)にいらだつ事務員兼妻(赤間麻里子)、上役にかみつく女性検事(黒澤はるか)など、いるところにはいるんだなあと感服。

もちろん、主要キャストもすばらしい。「関ヶ原」以降、原田作品のレギュラーになっていくであろう平岳大、ファンの反発を承知で二宮和也を翻弄する吉高由里子、いかにも崩れた感じでありながら、木村への傾倒を隠そうともしない松重豊など、いい感じだ。

そして二宮和也。容疑者への罵倒シーンにおいて「んぱっ!」を返したのはみごとな演出だと思ったらなんとアドリブ。自分がどう演じたかをすっかり忘れているというのめり込みようは、さすがジャニーズのなかで抜きん出た演技力を誇るだけのことはある。

が、やはりこの映画は木村拓哉のものだ。彼の検察官役といえばもちろん「HERO」があり、もちろんその前提がこの企画を成立させたのだろうとは思う。今回は中卒どころか、酔狂にも子連れの年上女(公式サイトにも女優名がない!)と結婚し、しかもその家庭が破綻しているという恋愛要素ゼロのストーリーで、しかもそれが破綻を見せていない。 

冗談まじりで原尞の沢崎を彼にやってほしいと昔リクエストしたけれども、あの役がすっかり似合う俳優になりおおせている。もちろんそれは、近年の事務所がらみのごたごたが彼を成長させたのかもしれず、あるいはまわりがそういう目で彼を見ることによるのかもしれない。

いいじゃん。スターってそういうものでしょ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「検察側の罪人」(2018 東宝)

2018-09-26 | 邦画

むかしからの読者ならご存じのように、わたしは木村拓哉に夢中だ

二宮和也についても、若手の中では稀有なほどの演技力だと感服しています。このふたりが共演し(ジャニーズとしては重い決断だったと思う。世が世ならSMAPと嵐を共演させるメリットなどどこにもないし、今回はテレビ局の資金も当てにしていないのだ)、あろうことか脚本と監督が原田眞人だという。

駆込み女と駆出し男」「日本のいちばん長い日」でマイベストのワンツーを独占したあの人。となれば、嘘だろう観なければ「検察側の罪人」。

でもわたしはほとんどスルーしかけていた。理由がある。以前、雫井脩介の原作を読んでいた途中で

「あ、これはいかん」

と放り出してしまっていたのだ。粘着質のわたしにしてはめずらしい。雫井は「犯人に告ぐ」がすばらしかったし、同じ大学同じ学部の後輩なので(笑)応援しているのに。

それは、主人公の検事が“ある行動”をとるからで、さすがにこれは無茶だろうとギブ。作品のキャッチフレーズのように、明らかに一線を越えている。映画でも検事役の木村拓哉は、容疑者の家宅捜索の際に“それ”を行う。にとどまらず彼は……

権力者であり、体制そのものである検察官が、正義から逸脱するというなら、よほどの仕掛けを用意してくれないと。しかし結果的に、この映画はそこんところに意識的でした。

冒頭、検察の暴走が何を生むかについて、当の木村拓哉を教官役に、新人(二宮和也)たちに叩きこむ場面からスタート。このシーンがあるから、誰が「検察側の罪人」なのか、なにゆえに罪人に落ちるのかを観客にはっきりと示している。それが必然だというのではなく(このあたりで評判が悪いらしい)。

演出のシャープさに恐れ入る。息子(原田遊人)の編集の冴えもあってか、画面が弾む弾む。くわえて、原田監督作品でいつも不思議に思うのは、日本の役者層ってこんなに厚かったっけ?と思い知らされることだ。以下次号

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

うまい店ピンポイント2018年秋 華煌(げっこう)

2018-09-26 | 食・レシピ

まるぶん篇はこちら

実は妻といま、でかい買い物をしています。物理的にはちっちゃいんだけど。

たくさんのカタログを押しつけられ、じゃあどこで検討しよう。ちょいと町をはなれた華煌。

妻は華煌式中華そば、わたしは煮干しラーメン。

「あら」

妻がなにごとか気づいた。

「このチャーシュー、鶏肉じゃない?」

でええええええ。わたしはチキンが食べられないのに。あ、煮干しの方は豚もも肉でした。そうか、心してここに来るようにしよう。やっぱりおいしい。

馬場篇につづく

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「エロス+虐殺」(1970 ATG)

2018-09-25 | 邦画

菊とギロチン」につづいて今年二本目のアナーキストを描いた映画。タイトルがきちんと対応していますね。「菊~」が瀬々敬久作品らしくエモーショナルだったのにくらべ、こちらは吉田喜重監督らしく、そして1969年に撮られた映画らしく、徹底したディスカッションドラマになっている。

つくりは二層になっていて、のちに関東大震災後の戒厳令下に、甘粕大尉によって絞殺された大杉栄と伊藤野枝の大正五年のパートと、人生に目的を得られずに享楽的な生活を送る若者たちの1969年に分かれ、数十年たって、恋愛が自由なものとなっても、しかし生きていくのは不自由であることに変わりはないと主張……しているのかしら。確信なし。

妻、愛人、新しい愛人の三人の女に、平等に愛を与えると豪語する大杉栄。演ずるのは細川俊之。美貌と美声で女たちを翻弄する。

伊藤野枝を演じたのは監督夫人でもある岡田茉莉子。すでに大女優の貫禄なので、若さにまかせて夫と子どもを捨てて大杉に走る設定は少しきつかったかも。

その点、大杉に経済的援助を与えてきた女性記者(のちに社会党から衆議院議員を5期つとめた神近市子がモデル)をきつい顔で演じた楠侑子という女優が激しく魅力的。

わたし、こういうタイプに弱いんだよな……どんな人なんだろう……えええええっ、別役実の奥さんなのっ!ということはあのわたしが大ファンであるべつやくれいのお母さん?母娘ともに素晴らしい容姿。まあ、わたしの女性の趣味は変わっているらしいのであまり大声では言えませんが。

現代のパートと大正はうっすらと重なってはいるんだけど、原田大二郎のいかにも虚無的なおしゃべりはやはり時代というものかしら。

それが映画というメディアを、日本映画という存在を芸術的にイノベートした(それはだれも否定できないはずだ)ATG(アートシアターギルド)の映画というものかしら。

でもロングバージョンの216分を一気に見せる強さはあるんだよな。それが、あの時代の強さでもあるんでしょう。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

極私的大河ドラマ史PART29 独眼竜正宗その2

2018-09-24 | 大河ドラマ

その1はこちら

伊達政宗の生涯を、ジェームズ三木は“天下をとるには若すぎる世代だった”と総括しているようだった。

彼が東北をまとめあげる過程で、秀吉が天下を掌握し、つづいて家康が幕府を開くまで、政宗がつけいる隙がなかったと。秀吉や家康とは、確かに一世代違っている。戦国の世は政宗を待ってはくれなかったわけだ。

キャストでそのあたりは強調されている。政宗はまだメジャーとはいえなかった渡辺謙。秀吉は大河唯一の出演となった勝新太郎(小田原攻めの回まで、彼らは一度も会わないように勝新が提案し、それは実現した)、家康が津川雅彦ではまだまだ役者の格から言っても勝負にならなかったように印象づけられている。

そこで登場したのが最上義光(よしあき)。政宗の生母、義姫(岩下志麻)の兄であり、演じているのは原田芳雄。彼と政宗の権謀術数がドラマの芯になっていた。

ファーストチョイスが松田優作だったという話は、実現したら面白かったろうが年齢的にどうだろう。松田優作が岩下志麻の兄?(笑)

原田芳雄は渋くて素敵だった。彼は山形の武将として近ごろ評価が高いのだけれど、子を(豊臣秀次の切腹に連座するなどして)失い、彼の死後に家中がもめてやがて滅亡に向かうなど、悲劇の人ではある。

伊達の家臣たちはいい味をだしていた。特に素晴らしかったのが西郷輝彦が演じた片倉小十郎。実在の人物だけどすばらしい名前ですよね「かたくらこじゅうろう」。このドラマにおいて、政宗をしっかりサポートしていた。名参謀。他にも三浦友和、いかりや長介など、名優ぞろい。

女優陣も豪華。桜田淳子が本妻愛姫(めごひめ)で、その少女時代が後藤久美子。側室が秋吉久美子で娘の五郎八(いろは)が沢口靖子なのはジェームズ三木と「澪つくし」つながり。

誰もが知っている戦国時代に、伊達政宗というエッセンスを加え、重鎮的俳優(父親役は北大路欣也でした)を配して新人俳優をもり立て……結果的に大成功。そしてこの方程式は翌年に継承された。「武田信玄」である。

コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

うまい店ピンポイント2018年秋 まるぶん

2018-09-24 | 食・レシピ

龍横健鶴岡店篇はこちら

どうしてこの時期に山形まで行ったのか、われながら不思議。というか教えられない。

どうしてお昼時に行ったのに正面の駐車場がすべてあいていたのかわからない(すぐに全部埋まりました)。

やっぱりおいしいのでしたまるぶんラーメン。疑問なし。

華煌篇につづく

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする