事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

今月の名言 2017年1月号PART2 FAKE

2017-01-31 | 国際・政治

PART1「CHANGE」はこちら

「お前の組織は最低だ」

「黙れ」

「フェイク=FAKE(偽)ニュースだ」

ドナルド・トランプ米大統領が就任前にCNNの記者に向かって。就任後には、保守派メディアであるFOXニュースを持ち上げ、そのあからさまな態度は選挙戦のときとなにも変わらない。

部下も部下で

「トランプは就任演説でアメリカ史上最多の聴衆を集めた」

と報道担当官ショーン・スパイサーはコメントしたが、どう見ても嘘。

「就任式の観衆の人数が少なく見えるのは、芝生保護のための白いシートのせいだ」

これが全世界に配信されたのである。

もちろん政治家というのは嘘をつくものだ。ではあるだろうが、もうちょっとうまい嘘がつけないものだろうか……と極東の地方公務員は思う。

しかし、このことはトランプへの本当の逆風にはなっていない。それはそうだろう。投票日前にセックスや脱税などのスキャンダルをあふれるほど報じられながら、それでも当選した人なのだ。多少の誤謬など気にするはずはない。

それどころか、メキシコに国境に壁を作らせると豪語し、向こうが作らないならこちらで作って請求書を送りつけるとした人だ。財源はメキシコへの関税で賄えるともつぶやいている。

もちろん、ちょっと考えれば無理なことを言っているのは誰だってわかる。

でも彼は吠えつづける。いや吠え続けなければならないのだ。悪評よりも無視されることの方がよほどダメージが大きいことを彼は十分に承知しているに違いないし(あまり買いかぶるのもよくないが)、マーケットに道徳は存在しないので、アナウンス効果で株価が上昇し、短期的にでも失業率が下がれば、しばらくは安泰なのかもしれない。めぐまれた人。しかし、長期的に見ればつけはアメリカ国民に確実に回ってくる。そのときに、この人物が責任をとるとでも?

なにより、この男が核兵器のスイッチを押すパスワードを持っていることが怖くないですか。

PART3「保護なめんな」につづく

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今月の名言 2017年1月号 CHANGE

2017-01-30 | 国際・政治

2016年12月号「真珠湾経由靖国」はこちら

「みなさんがチェンジそのものだ」

Yes, we did.

オバマ最後の演説。彼を“前”大統領としなければならない時代になった。彼の8年間について、さまざまな評価はあるだろう。たとえば読売は社説でこう論評している。

「高邁な理想と清廉さは秀でていたが、米社会の分断と世界秩序の動揺を招いた責任は免れまい」

「国民皆保険を目指す医療保険改革(オバマケア)は賛否が真っ二つに割れ、国民の分裂をもたらした」

……そう来るか。逆にわたしは、賛否が真っ二つに割れるオバマケアを最初に持ってきた戦略はみごとだと思う。就任当時は、もっと穏やかな政策からとりかかればいいのにと思っていたけれど、支持率の高いうちにもっとも困難なことをやり遂げたかったのだと今なら理解できる。同じことを旧民主党の鳩山党首は米軍基地問題でやってしまい、ご存知のとおり木端微塵になってしまったのだが。

その、歴史に残るかに思われた政策を、新大統領は反故にしようとしている。彼については次号にゆずるとして、オバマの治世には安心感のようなものがあった。先ほどの読売の社説を翻訳すれば

「きれいごとばかり並べやがって」

ということだろうが、きれいごとを並べるにふさわしい品格というものは感じられたではないか。考えてもみてほしい。オバマについて、黒人大統領だと(善くも悪しくも)意識しなくなったのってすごい。そういうことを云々するレベルではなかったということだ。

なにより、演説の巧みさは群を抜いていた。これは誰も否定できないはずだ。よき家庭人であり(少なくともそう見せる知恵があった)、理想的な大統領の資質をもっていた彼に計算違いがあったとすれば、国民が上品な健康食品に飽きて、ジャンクフードを食べたくなる欲求をかきたててしまったことだろうか。

そのジャンクフードの登場によって、先進国の首脳で信頼できるのはメルケルひとりになってしまった……。

PART2「FAKE」につづく

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おんな城主直虎 第4回「女子にこそあれ次郎法師」

2017-01-29 | 大河ドラマ

第3回「おとわ危機一髪」はこちら

前回の視聴率は、裏のDASH島スペシャルの影響もあってか14.3%と降下。ようやく調子が出てきたのにな。

なにはともあれ、こまっしゃくれた子役(と乳母も?)とは今週でお別れ。なにしろ彼女は“大好評”だそうだから、回想シーンでは何度も登場するでしょうが。うううわかんない。

出家して厳しい禅の修行の過程で、鼻っ柱を折られつづけるのには、南渓和尚(小林薫)とは違う意味でよかったよかったと安堵。市原隼人よ、もっとぶん投げろ!(学校事務職員にあるまじき発言)。あの調子で一年間突っ走られたのではかなわんし。

もっとも、剃髪したおとわは、四週目にしてちょっと可愛くも思えてくる。

「こうやって髪をおろすと、確かに柴咲コウに見えて来ますね」

「あたしには世良公則としか」

うちの女性陣は言いたいことを。

「この子の頭は、わさびを摺りおろすあれに似てるね」

わたしがいちばんひどい。

森下脚本は、人情噺を語らせたら並ぶものなし。しかもセリフに二重の意味をたっぷり仕込むものだから聞き逃せない。寺から逃げ帰ったおとわに母親(財前直見)が、心ならずも叱りつけて追い返すルーティンの直後に、本音を建て前に見せて夫を罵倒するあたりはいかにも森下流。

くわえて、筆頭家老の専横に、彼を仇討ちしようとする武士があらわれたことを利用しようと色めき立つ家臣をよそに、井伊直盛(杉本哲太)は花を活けながら考えこむ。

「殿、花をそろそろ替えなければなりませんな」

「うむ。替えなければな」

彼の心をシンボライズする、“花を替える”こととは……

大河ドラマで男が生け花をするシーンは「太平記」の佐々木道誉以来だろうか。豪放磊落な道誉の花、優しげな直盛の花……近ごろわたしもチャレンジしているんだけど、どうしても根性の曲がった花になってしまいます。花は人なり。

柴咲コウ登場の来週に期待して、今回は15%台復帰と読みました。

第5回「亀之丞帰る」につづく

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ぼくのわたしの2016 洋画興行成績篇

2017-01-28 | 洋画

邦画篇はこちら

つづいて洋画興行篇。

第1位 「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(ディズニー) 116.3(億円)

第2位 「ズートピア」(ディズニー) 76.3

第3位 「ファインディング・ドリー」(ディズニー) 68.3

第4位 「ペット」(東宝東和) 42.4

第5位 「オデッセイ」(FOX) 35.4

第6位 「007 スペクター」(SONY) 29.6

第7位 「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」(ディズニー) 27.8

第8位 「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」(FOX) 26.6

第9位 「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」(ディズニー) 26.3

第10位 「ジャングル・ブック」(ディズニー) 22.1

……ディズニー強しっ!これは北米でも同じ(まもなく特集します)。ところが作品がだいぶ違っているのだ。というのも、日本では(北米では圧倒的に強い)マーベルがらみに客がなかなか入ってくれない。シビル・ウォーがインデペンデンス・デイの下にいるなど、向こうの人からすれば信じられないのではないか。「デッドプール」や「ジャスティスの誕生」「スーサイド・スクワッド」が軒並みトップテン圏外なのも特徴だ。

でもそれ以外では、日本では続編やシリーズものが有利な傾向が見て取れる。というかね、ハリウッドの企画が貧困だというより、やはり日本の観客は保守化しているんだと思う。

わたしが高校生のころに邦画のシェアを洋画が逆転して以降、基本的に洋画優位だったこの国が、2016年は興収において邦画63.1%、洋画36.9%となっている。去年10億以上稼いだ作品が邦画43本に対して洋画19本という数字もあからさま。

いやそれ以上に、若い世代はもっと極端で、

洋画を見る人→オタク

という図式まで成立しつつあるとか。もちろんハリウッド映画に席巻されていていいのかという理屈はあるけれども、こんなところからも日本のガラパゴス化がうかがえるではないですか。

北米興行成績篇につづく

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「築地ワンダーランド」 (2016 松竹メディア事業部)

2017-01-27 | 食・レシピ

築地市場が豊洲に移転する問題がニュースにならない日はない。いったいなんで?とわたしなどは不思議に思う。都知事の人気取り(&元知事への意趣返し)に利用されているに違いないし、“たかが”魚市場の話じゃないか。まあ、確かに規模は他の市場に比べれば圧倒的なんだろうけれども。

……不明を恥じます。他と比べて圧倒的な魚が集まってくるということは、それだけ情報も集積がすすみ、独自の文化といえるものが出現するということだったのだ。

この映画で主に描かれるのは、仲卸(なかおろし)と呼ばれる、卸と小売りを取り持つ業者の特異さだ。目利きである以上に、消費者の動向を常に考えた商売をしている。長期間にわたったロケのなかで、彼らの使命感のようなものが伝わってくる。和食を、魚文化を守るのは築地だと。

カメラが回っていないときは、ひょっとしたら怒鳴り声の応酬があるのかもしれないが、築地の人たちが知的で意識的なのに驚く。おまけにきれいな東京弁。さすが中央区(笑)。

そんな海千山千の連中が、こと学校給食に関しては、ガキどもにこそ本物を食べさせたいとみんな一斉に協力的になるあたり、ありがたくて涙が出る。

日本橋の河岸から築地に移って80年。その市場の終焉を前につくられたドキュメンタリー。そして賛同者がクラウドで出資する。おかげで空撮やドローンなどを使い、すきやばし次郎の小野さんをはじめとした高名な職人が数多く出演するなど、まことにぜいたくなつくり。カット数はジェイソン・ボーンのシリーズより多いんじゃないか。とにかく面白い。

「男子厨房に入るべからず」とか「黙って食え」とされる日本。でも食について語ること、食に意識的になることがいかにだいじなことかも教えてくれる。

移転問題のせいで築地への注目度が増し、ヒットしているという状況はこの作品にとって幸せなんだかどうだか。とりあえずわたしはこの映画を見てお腹がすいてすいて……帰りにマックに寄ってしまいましたとさ。

きっとマクドナルドにはマクドナルドの矜持があるはず。ハンバーガーにぱくつきながら、しみじみとした夜。

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ぼくのわたしの2016 邦画興行成績篇

2017-01-26 | 邦画

2015年版はこちら

1月下旬恒例、映連(日本映画製作者連盟)が前年の興行収入を発表したので特集します。今回は邦画篇。

第1位 「君の名は。」(東宝) 235.6(億円)

第2位 「シン・ゴジラ」(東宝) 82.5

第3位 「名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」(東宝) 63.3

第4位 「映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!」(東宝)55.3

第5位 「ONE PIECE FILM GOLD」(東映) 51.8

第6位 「信長協奏曲」(東宝) 46.1

第7位 「映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生」(東宝) 41.2

第8位 「暗殺教室~卒業編~」(東宝) 35.2

第9位 「orange ~オレンジ~」(東宝) 32.5

第10位 「映画 聲の形」(松竹) 23.0

……以下「植物図鑑」「デスノート」「ポケモン」「クレしん」と続く。一瞥してわかるのは、またしても東宝の強さが圧倒的だったことと、「君の名は。」をはじめとしたアニメの隆盛だ。

にしても東宝は盤石。若年層をねらった、いわゆるキラキラ映画とアニメでコンスタントに稼ぎ、わずかなすき間で冒険もしてみせる。こけてしまった作品もないではないが、冒険の最たるものが「君の名は。」だったわけで、結果的に公開後二十数週間たったというのに興行収入のトップワンに返り咲いたりしているのは立派というしかない。ジブリも細田守作品もない、実は東宝にとってしんどいはずだった2016年が、あれよあれよという間に……

同じことが「シン・ゴジラ」にも言えて、あの膨大な脚本にGOを出したあたり、余裕のある会社にしかできない芸当かも。

わたしがわからないのはここに来て「名探偵コナン」の興収がのびていることと、「信長協奏曲」の意外な大ヒット。わたしの知らない世界がここでは展開されているようだ。

次回は洋画篇

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ぼくのわたしの2016 海外ミステリ篇

2017-01-25 | ミステリ

国内篇はこちら

ミステリランキングの、今度は海外編。宝島社の「このミス」上位でわたしが読んだのは

第1位 「熊と踊れ(上・下)」アンデシュ・ルースベンド、ステファン・トゥンベリ著 ハヤカワ・ミステリ文庫

第6位 「傷だらけのカミーユ」ピエール・ルメートル著 文春文庫

ランク外で「ジャック・リッチーのびっくりパレード」(ハヤカワ・ミステリ)、「アックスマンのジャズ」(レイ・セレスティン著 ハヤカワ・ミステリ)。

毎年毎年読んでなくて恐縮。これではいかんとランキングが発表されてすぐに「熊と踊れ」を読んで格好をつけた次第です(笑)。

週刊文春のほうでは

第1位 「傷だらけのカミーユ」

第2位 「熊と踊れ」

第19位 「ジャック・リッチーのびっくりパレード」ジャック・リッチー著

海外編はこのミスと文春のあいだに大きな差はない。例によって自社発行物が高位にくるのは文春のお家芸ですけど。

近年のミステリは、北欧インベージョンと言っていいほど、寒い国からやってきた作品が席巻している。「熊と踊れ」はその極北。

異常なほど高圧的な父親に育てられた兄弟が、冷静な長兄をリーダーに次々に銀行を襲っていく。方法はシンプル。圧倒的な火器で行員と客を委縮させ、スピード勝負で金をかっさらって行く。もちろんそこから先は工夫満載なんだけど、何にびっくりしたと言って、これがほとんど実話で、兄弟のひとり(彼は強盗に加担していない)が共作者になっていることだ。

翻訳ミステリの不調が伝えられる昨今、世界を見渡せばまだこんな作品が転がっているのか。エージェントと出版社のせめぎ合いは、ワールドワイドになっているんだろうなあ。

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ぼくのわたしの2016 国内ミステリ篇

2017-01-24 | ミステリ

このミス2016はこちら

年末に各種ミステリベストテンが発表されたので例によって紹介。今回は国内篇。わたしが読んでいるのだけね。

まずは宝島社の「このミステリーがすごい!2017」から……

第3位 「真実の10メートル手前」 米澤穂信 東京創元社

第9位 「希望荘」 宮部みゆき 小学館

第12位 「挑戦者たち」 法月綸太郎 新潮社

……うわあ今年も読んでないな(笑)。

まあ、第1位が暗号ミステリの傑作と評判の「涙香迷宮」(竹本健治)なのは本格志向のこのミスらしい。かつて「匣の中の失楽」に熱狂した身としては(なにしろわたし、あの作品の初出である幻のミステリ雑誌「幻影城」の読者だったのが自慢ですから)素直にうれしいですけどね。

法月綸太郎の「挑戦者たち」は、本格をつきつめるとこうなるという作品集で、ここまで来るといっそ立派だと思いました。

他には「去就」今野敏、「Dの殺人事件、まことに恐ろしきは」(歌野晶午)、「サブマリン」(伊坂幸太郎)など。江戸川乱歩のパスティーシュに挑んだ歌野のは、このミス好みでもっと上位に来るかと思ったのに。



続いて、週刊文春のベストテンでは

第2位 「真実の10メートル手前」

第4位 「希望荘」

第8位 「屋上の道化たち」 島田荘司 講談社

第16位 「挑戦者たち」

 こちらの第1位は「罪の声」塩田武士。グリコ森永事件が題材にとられていて、なるほど面白そうだ。いやしかしあの「屋上の~」がランクインですか(笑)。

ちなみに、本の雑誌のベストワンは、地元作家柚月裕子の「慈雨」でした。

海外編につづく

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追悼松方弘樹

2017-01-23 | 芸能ネタ

左のポッケに入れているスマホが鳴り放題。何だよいったい。

松方弘樹が死に、江角マキコが引退とか。明日発売の雑誌で不倫がらみの報道がなされるという江角はともかく(わたしは正直、残念でならない。女優が不倫しなくてどうすんだ?)、松方の訃報はショック。

彼は近衛十四郎の息子として、京都の危ない水をたっぷり飲んで育った。滋賀で日教組全国事務研があった二十代のときに雄琴で(くどいようだけどエッチはしてないです)

「このお店は近衛さんがやってました」

とタクシードライバーにソープを紹介されたのはいい思い出。

日本映画の発祥の地として京都は今でも燦然と輝いている。津川雅彦(マキノ家の直系)と松方は、だから血筋としてザ・芸能界なのだ。不肖の息子とかがしゃしゃり出てくるだろうけれども、松方の退場はやはり哀しい。現役のヤクザたちから、その奇矯なファッションで賞賛されたキャラは、やはり得難いものだった。代表作は70年代後期の

「沖縄やくざ戦争」

「暴動島根刑務所」

「北陸代理戦争」

あたりだろうか。どれも脇役に食われているあたりが本家本元という気がする。

高倉健、菅原文太、若山富三郎、池部良、そして松方と、任侠や実録もので“おしゃれ”だった役者たちが消えていく。さみしい。

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「蜜蜂と遠雷」 恩田陸著 幻冬舎

2017-01-23 | 本と雑誌

評判は聞いていた。もんのすごい傑作だと。でもこっちは貧乏だからどうせ図書館待ち。いつ読めるものだか……なんとうちの学校の図書主任が購入してくれてました!これは生徒のためにも先に読んでおかなくては(笑)。学校事務職員でほんとうによかった。

しかも読んでいるさなかに直木賞受賞。おまけに本屋大賞にもノミネート。快進撃はつづく。

舞台はある都市(浜松がモデル)のピアノコンクール。四人の若者が優勝をめざして競う、ストーリーはそれだけ。なのに二段組み500ページ超を一気に読ませる。なにしろキャラの設定が泣けるのだ。明らかに少女マンガの方法論を利用している。

・養蜂家の息子で、コンクールに入賞すると“ピアノを買ってもらえる”(!!)という野生児のような天才(彼の名は風間塵……よく考えたらカンサスの「すべては風の中に」Dust in The Windのもじりです)。

・天才少女の名をほしいままにしながら、庇護者だった母親の死によってピアノから逃げた過去を持つ音大生。

・ジュリアードで英才教育を受け、現代音楽を革新しようとまで考える美男の若者。優勝候補筆頭。

・楽器店に勤務しながら、年齢制限ぎりぎりでコンクールに挑む常識人。彼の視点が、天才たちの異様さをあらわにしていく。マンガでいえばメガネくんキャラ。

……章立てはすべて古今東西の名曲のタイトル。「仁義なき戦いのテーマ」まであります(この章、泣けるんだ)。コンクールの結果もよく考えてある。

ピアノ演奏を小説で描くというアクロバットを成功させ、肌合いとしては「宮本武蔵」などの剣豪小説に近い。上には上がいるという展開とか。あるいはドラゴンボールの天下一武道会か。

とにかくむやみやたらに面白く、感動も保証する。直木賞納得。きっと本屋大賞もこれだ。恩田陸おそるべし。必読。買いなさい今すぐ(わたしだけは言っちゃいけない)。

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