事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

追悼大瀧詠一 長すぎる休暇に。

2013-12-31 | 音楽

Alongvacationimg01 フェイスブックで知りました。呆然。

今年最後の更新がこんな記事になるなんて。

山下達郎との新春放談の復活も見果てぬ夢になったのか……

わたしの世代(60年生まれ)にとって、はっぴいえんどをリアルタイムで聴いているマニアは少なかったし、サイダーと音頭の人だった大瀧がグイッと前面に出てきたのはなんといっても「A Long Vacation」

オールナイトニッポンを聴いていたら、どうやらソニーは彼を大プッシュすることを決めたらしく、CMのつるべうち。使われていたのはもちろんA面の1曲目「君は天然色」。速攻でレコード屋に走りましたよ。

衝撃的なアルバム。曲の完成度が高いのはもちろん、トリッキーなアレンジに目がくらむ。

日本海(日本のウエストコーストです)で青春するのが常だった悪ガキたちは

「あれやっぜ、『スピーチバルーン』」

「?」

「ほら、♪暗い海に向かって」

「ヘッドライトのパッシング♪がっ」

「待て待て。そんなことすると北鮮のスパイど思わいっぞ」

こんなコントをくり広げていた。つまり、みんなあのアルバムを聴いていたのだ。

真の意味で、日本のミュージシャンは大瀧詠一がいることに安心しきっている部分はあったろう。特に達郎、佐野元春、伊藤銀次たちはそう思っていたはず。

重鎮の死によって、彼らは、そしてわたしたちは『大瀧詠一がいない世界』を生きていかなければならなくなった。しんどいなあ。

天国では、植木等とさっそくセッションしているだろうか。きっと叱られてるんだろうな「休むには早いよあんた」って。早すぎる、ほんとに。

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「永遠の0」 (2013 東宝=ROBOT)

2013-12-30 | 邦画

131127_eien0_main うーん、「永遠の0」かあ。どうも映画館に向かうのに二の足を踏む。いろいろと要因はある。

・特攻ものは苦手。「ホタル」のように題材の極端さにドラマが負けることが多いし。

・国粋的であることは必然だから、サヨクとしてはどうも……

・そのくせ泣き虫だから感動してしまうに決まっているのがくやしい

・原作者が現総理と“お友だち”だから、素直に観ることができないだろうし……

しかししかし、考えてみれば

・山崎貴の映画は(われながら呆れるほど)全部見ている

・東宝特撮の最新レベルがチェックできる

・予告篇の出来がすごい

……ということでブツブツ言いながらも見てきました。

山崎はなにしろ「三丁目の夕日」の人だし、それ以上に「Space Battleship YAMATO」の人なのだから、ベタな展開なのは予想通り(ドラえもんの新作期待してます)。

しかし今回は抑制がきいている。それは、ストーリーに『年長者が年少者に戦争を物語ることは義務』という基本線がしっかりしているからだろう。橋爪功田中泯、夏八木勲、山本學らと、その若いころを演じる俳優陣(新井浩文、三浦貴大、濱田岳、染谷将太……さあ線で結んでみよう)の縦糸がいい感じだ。

特に、ネタバレになるけれど、新井浩文“出演しなかったシーン”で泣かせて見せたし、日本映画界に濱田岳がいなかったら、と慄然とする思い(偉大なるしゅららぼん、期待してます)。佐藤直紀の音楽もすばらしい。

特撮、というかCGもすごい。戦艦赤城があそこまでリアルに描かれたのは初めてだろうし、

『飛行機にとって弱点である下方視界がないことを克服するために背面飛行が多いことで侮られる小隊長』

なんて微妙な存在まで描けるようになったのだ。おみごと。

ただしやっぱりどこかに薄ら寒いものは残る。映画を観た翌日、“お友だち”は靖国に参拝し、ヒロイックな気分を味わっている。自国民をふたたび戦争にひきずりこむリスクを高めた行動こそ、英霊に、むしろ失礼ではないのか。

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「アルゴ」 Argo (2012 WB)

2013-12-29 | 国際・政治

Argo640 ホメイニの登場は、そしてそのカリスマ的人気は他国にとって計算違いのものだったらしい。そんな事情をわたしは矢作俊彦+大友克洋の「気分はもう戦争」で知ったのだけれど(笑)、その影響もあってか、イランのアメリカ大使館籠城事件は千日手のごとく膠着した。

そこでCIAが持ち出したのが「アルゴ」作戦。架空のSF映画を撮影するためという理由でエージェント(ベン・アフレック)は潜入し、大使館員を救出しようとする。

アラブ人の表情がよくわからないため(他民族を蛮族扱いするのはハリウッドの得意技)、画面に異様な緊張感がただよう。

特にしんどいのが空港の場面。わたしはもう金輪際海外旅行などするものかと思いました。

この映画がすばらしいのは、くだらないB級映画に血道をあげる映画界や、他国に実は迷惑もかけているアメリカという存在への韜晦があることだ。

あまりにもばかばかしい作戦なのでいかにもアメリカならやりそう、というあたりを、そのハリウッド自身がやっているあたり、泣かせる。特に、自分の仕事がそんなことに役立つのかと最後まで半信半疑だったアラン・アーキンがいい感じ。

実際にこの作戦にたずさわったエージェントを意識したか、ベン・アフレックはほとんど表情を変えない。しかし、リスクの大きな作戦でも、交渉人として人質を絶対に見捨てないという職業的誇りが感じられてすばらしい。肝心なところでいつもポカをするのがCIA、という定番すら利用したストーリーがなによりも取り柄。ほんとにこんなことやってたとはなあ。

さて、この映画にはもうひとつ言いたいことがある。アメリカの公文書は25年経つと公開されるという大原則がある。

「機密情報は、原則として、原機密指定から25 年経過した年の12月31 日までには機密解除されなければならない」(大統領令3.3 条(a)項)

アルゴ作戦については、手柄話だからその前に公開されたけれども、失敗したとしてもいずれ国民に知れる。

それをなんですか日本の特定秘密保護法案とかいうやつは。秘密にする内容は事実上不特定だし、公開は60年後?

民主主義が根付いていない、やはりこの国は蛮族の地なのかも。

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今月の名言2013年12月号~失望している。

2013-12-28 | 国際・政治

2013年11月号~「弱っている犬」はこちら

「失望している」

日本の首相が靖国神社を参拝したことに対するアメリカ国務省の“公式”コメント。

「え?」

と思っただろう。参拝した当人も政府も自民党も。安倍政権をプッシュしているマスコミ(読売とか産経とか)も、まさかこんなことにとうろたえている。なんでアメリカがここまで踏み込んだ発言をするのか。これまではなんだかんだ言って(言わないことで)しょうがないなーとしてきてくれたではないか。

「しめた!」

と思っている国があることを、そしてその国がむかしとはけた違いに存在感を増していることがアメリカの懸念につながっているのだろう。その国とはもちろん中国。仮想敵をつくりだすことで国内の不満をねじふせようとしていることが歴然としているあの国に(同じ手法を日本も使っているわけだけど)、かっこうの言い訳をわざわざその仮想敵が用意してくれたのだ。なんと間抜けな。

片岡義男的に、アメリカの発言にきちんとした邦訳をやってみましょう。一応英文出身だし。失望したなんて訳はぬるい。あの国が本当に言いたいのはこうだ。
「調子こいてんじゃねーぞ」

「親切な人だと思いました」
都議会での知事の発言。

一気に学級会レベル。にしても、徳洲会問題にいちばん激烈な批判をくり広げたのが自民党だったのは、なんだかなあと思わざるをえない。石原→猪瀬の、王朝ともいえる体制を用意したのは自民党だったはず。なにかわたしなどにはうかがえない事情でもあったのかと、かえって考えこんでしまいましてよ。

2014年1月号~NHK三連発につづく

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日本の警察~その64「刑事のまなざし」

2013-12-25 | 日本の警察

20130906005546dd3 その63「人質」はこちら

テレビドラマをDVDレンタルで楽しむ悪徳にはまっているうちの奥さん。現在熱中しているのは「大都会」(日テレ)。石原プロ制作のこの刑事ドラマは、PARTⅡ以降は(松田優作を投入させるなどして)軽いアクションが売りだった。でも、PARTⅠはひたすらに暗い。メインライターは倉本聰

まことに上質なドラマなのに、ひとつ大きな欠点があった。若手の新聞記者を演じる男優が、拙劣とかそういうレベルを超えてひどかったのだ。おかげで、彼が登場すると画面のボルテージが一気に下がり、渡哲也×石原裕次郎の競演をもってしても救われずにいた。

そのころ読んでいた雑誌では「“あいつ”さえいなければなー」と編集者が嘆じていたものだっけ。あいつ……新人当時の神田正輝という人です。

さて「刑事のまなざし」のお話は、法務技官出身の夏目刑事という特異なキャラクターが売り。法務技官?わたしも知らなかったのだけれど、鑑別所や刑務所において更生を助ける職のようだ。

ある事情があって、犯罪者を狩る立場に転職した夏目は、しかし法務技官当時の優しいまなざしを失っていない。薬丸岳の原作は、こんなストーリーから予想もできないほど残虐なものを秘めていて、TBSはそこんところをうまく調理できたのだろうか。

特に、ドラマでは森口瑶子が演じたらしい看護師の“真の動機”をどう処理したのかなあ。「水戸黄門」でおなじみの時間帯。お年寄りたちは怒らなかった?

という具合にとても面白い原作。ドラマの評判もいい。さーてちょっと様子を見てみましょう。ほー、夏目役は椎名桔平か。燃費の悪い車に乗って「はいはいはいはい」とかましていたフジのドラマの正反対の性格。なかなかいいじゃないですか。他にも松重豊、北村有起哉などの「八重の桜」組もいい感じ。

ところが、ところがところが、女性刑事役の小野ゆり子という女優がすべてを台無しにしている。妙に演技をため、いかにも直情ですよと主張しつづけるその感じがいやでいやで。え?大森南朋の奥さんなの?ちゃんと演技指導してやってよ大森ぃ……。

その65「代官山コールドケース」につづく

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「謎解きはディナーのあとで」(2011 フジテレビ)

2013-12-24 | ミステリ

20111114002c9092 文教都市のはずなのに、なぜか毎週のように殺人事件が起こる恐怖の町、国立。

そのくせ世界有数の富豪の邸宅も存在し、そこでは絶滅危惧種とも言うべき執事が令嬢の世話を焼いている。その令嬢の仕事は警視庁国立署の刑事……

大嘘の設定はいかにも火曜9時のフジの枠にふさわしい。原作よりも令嬢と執事のラブコメ度はもちろんアップし、上司のファンキーぶりも大増量中。けっこうなことだ。

危惧されたのはキャスティング。原作のイメージだと

・宝生麗子(令嬢)→ 沢尻エリカか深田恭子

・影山(執事)→オダギリジョーか向井理

・風祭(いけすかない上司)→明石家さんま

……あまりにもベタですか(笑)。でもフジと共同テレビは意外なキャスティングを行った。

・宝生麗子→北川景子

・風祭→椎名桔平

はともかく(特に椎名のはじけっぷりはすごい)

・影山→櫻井翔

は違うだろー!と原作を読んだ人なら思ったはず。あんなに人のよさそうな影山でいいのかと。

しかし、慣れてみるとなかなかいいです櫻井。意外なことに頬のあたりがシャープになっているし、知性派であることは知られているしね。

ジャニーズの人気者を、ただの安楽椅子探偵にしておくわけにはいかないので、ドラマでは“お嬢様を守るために(というのは建前で実は事件に関与したくて)名のとおり影のように付き従う”アレンジが行われている。事情聴取を早送りで済ませるなど、展開を速めているのも正解だ。嵐と倖田來未のテーマソングもいい。

でも。でも、いかんせん演出がぬるくてぬるくて。間(ま)の取り方など、もっとなんとかならなかったのか。コメディだからこそ、もっとソリッドな演出が求められるというのに……

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4月1日生まれPART6

2013-12-23 | 公務員

Alimacgrawstyleiconfamain PART5はこちら

さあ、またしても必携をめくると「市町村立学校職員給与負担法に規定する学校職員の定年等に関する条例」にはこうある。

第2条 学校職員は、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の3月31日に退職する。

第3条 学校職員の定年は、年齢60年とする。

……リフレッシュ特休のときと似ているのに気づくと思う。

年齢60年とは要するに60才なのであろう。とすれば、Aくんは(もういい年齢だから君でもないわけだが)例の民法をひっぱりだせば2074年3月31日午後12時に60才になっており、だから定年退職日はその日“以後”の最初の3月31日。つまりその日ということになるのだろう。4月1日生まれが同級生たちと同じ日に退職するのはこういう理由だったわけだ。

Bくんはもちろん翌年の3月31日に退職。どちらも勤続期間は42年間。なるほど。

さて、それでは年金受給において4月1日生まれはどうなるのか、だ。およそ現在のルールがAくん世代まで生き残っているとは考えにくいけれども、とりあえずあてはめておくと、昭和36年4月2日以降に生まれた人間の年金受給は65才からだ。ほら、例の経過措置は学齢が基準になっていることがわかる。

ここで影響してくるのはこの大原則だ。つまり

『退職は年度で行われるが年金支給は誕生日が基準』

Bくんはわかりやすい。2075年3月31日に退職し、4年後の2079年4月に受給開始だろうから無年金期間は丸4年。

ではAくんは?年金支給は誕生日によって開始される。とくればAくんとBくんの誕生日は一日しか違わないのだ。となればAくんも2079年4月からの支給?だから無年金期間はAくんの方が一年長い!どれだけ早生まれは不利なんだ!

この結論が正しいかどうかはよくわからない。だれか教えて。おれはもう書類をひっくり返すのがめんどくさい(笑)。

本日の4月1日生まれはアリ・マックグロー。往時の彼女には、なにものにも奪えない輝きが確かに存在した。そしてその輝きによってハリウッドはふりまわされたわけだ。

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「殉愛-原節子と小津安二郎」 西村雄一郎著 新潮社

2013-12-22 | 港座

T02200305_0400055412771718070 「お嬢さん乾杯」(昭和24年 松竹)にはたまげた。画面に主演女優が出てきた途端に、なんというか、映画館の温度が上昇したような気さえした。映画という媒体にもっとも愛された女優とは、原節子なのだと思い知った。それほどの美貌。

監督したのが、女性を愛することの少なかった木下恵介だったのは皮肉だけれど、彼の映画的センスが、原節子をおれがいちばん美しく撮ってやる!と主張しているかのようだった。

この映画では、没落した上流階級の娘が、亡き婚約者の思い出を抱きながら、成金ではあるけれども気のいい若手経営者(佐野周二)を愛せるかが語られる。脚本は新藤兼人。

原はこの映画で、彼女の後半生を予感させるような、“気持ちが隠遁している”女性を演じている。その真逆の存在がバーのマダムを演じた村瀬幸子(この人って昔からおばあちゃんだったわけじゃないんですね)。マダムは原に向かってこうからむ。

「愛してます?そんなお上品な言葉で……」

対して原がラストで語るセリフがふるっているのだが、しかし私生活で原節子が“惚れた”相手は誰だったのか。「殉愛-原節子と小津安二郎」には、三人の男性が登場する。

一人目は姉の夫である熊谷久虎。映画監督として、そして実はファシズムに傾倒していた彼のことは一度ふれましたね?

二人目はもちろん小津安二郎。日本映画界において、黒澤明&三船敏郎、溝口健二&田中絹代とともに語られる監督&俳優のベストマッチ。

三人目については初耳だった。東宝の藤本真澄プロデューサー。この高名な製作者が、完全に隠遁した原節子の生活をフォローしていたのだ。

いまも鎌倉の寺の片隅で、一世を風靡した女優は静かに暮らしている。93才になった彼女は、いまどんな思い出を胸に抱いて生きているのだろう。

殉愛: 原節子と小津安二郎 殉愛: 原節子と小津安二郎
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あぶさん終了。

2013-12-20 | アニメ・コミック・ゲーム

Abusanimg01 あ、終わっちゃうんだ。

といっても、オリジナルの読者であることをとうにやめているし、あぶさんの展開が三冠王になっていたりすることで(そうでもなかったら四十年も連載は続かないのは承知しています)、酒仙な男が業界のすれすれの線を渡り歩く基本が薄れていたこともあって縁遠いものになっていた。

でも、過去形になる前に言っておかなければ。パ・リーグは絶対に水島新司の貢献を忘れてはいけないと。景浦安武という架空の存在が、どれだけ巨人中心のプロ野球をひっくり返して見せたかと。

これはもう、巨人ファンのわたしだからこそ声高に言う。もう過去の話になっているから大声で言う。パ・リーグにドラフトで指名されることは新人にとってなかなか微妙だった。いろんな有望選手が「在京セ」を志望したのは、“マイナーな存在”であるパに行きたくないというのとほぼ同義だったのだ。

だけど今は福岡があり、北海道があり、仙台があるパの方が健康な状態にある。それを後押ししたのは明らかに新潟県人である水島新司。そんな彼が、ドカベンをセ・リーグに所属させるはずもなかったわけだ。

水島と野村の確執の事情はよくわからない。でも、初期のあぶさんにおいて、現役だった野村が審判に「あんさん外角が渋くなったな」と“つぶやく”あたりの味は得難いものがあった。いま野村にこのことをインタビューする根性のあるメディアはあるのかな。

スーパースターでありながら、最後まで陽性な部分を見せなかったヒーロー。それは水島が本気で求めたヒーロー像であったはず。サチ子が初めて安武を独占できる瞬間の到来だ。あ、麻衣子さんはどう思ってるのかな(マニア向け)

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「かぐや姫の物語」 (2013 ジブリ)

2013-12-19 | アニメ・コミック・ゲーム

Kaguyaimg03 わたしはいまだにわからないのだけれど、高畑勲の前作「ホーホケキョとなりの山田くん」は、どうしてあんなに酷評されて、しかも大コケしてしまったのだろう。

水彩のような、あまりにアニメ絵と違った画調だったから?四コマ漫画の映画化が期待できなかったから?声優をほとんど使わないジブリ方式が警戒された?

わたしは満足した。というか感動までしてしまった。ミヤコ蝶々のセリフは滋味深く、妻と見ていて「いいなー、これ」と。しかしまさか「かぐや姫の物語」がつくられるまで、史上最高のセル画枚数だったとは知りませんでした。

つまり高畑勲にとって、アニメとは、映画とは“そういうもの”なのだろう。作り手が必ず遭遇する「妥協するポイント、妥協するレベル」が違うというか。

「かぐや姫の物語」も、その姿勢のせいで製作は例によって順調に遅れ、「風立ちぬ」との同日公開は回避された。正直にいえば、商売的には正解。相乗効果は減じても、どちらも大人の観客が目当てなので、食い合ってしまったろうから。

それにしてもまんまかぐや姫のお話。日本昔ばなしだってもう少しアレンジするのではないか(笑)。まあそれは冗談にしても、竹取物語を“履修”した気分にもなった。最後の、月からの訪問者が“あの姿”なのは、当時の宗教観が出ているのかな。

かぐや姫の性格が、露骨にもののけ姫なのは賛同してもらえると思う。サンが誰も幸せにしなかったように、かぐやもまた、地球人の誰も救わない。

逆に(ここからネタバレですけど)、唯一の救いだった捨丸にいちゃんとの逃避が成功したとすれば、彼女は捨丸の家庭を破綻させることになる。つまりは地球のどこにも彼女の居場所はなかったわけで、そのあたりの苦みはやはり大人向けなのでした。ストレートな階級闘争に見せて、それをひっくり返す脚本がいい。

俳優に先に演技させ、あとから絵をそれに合わせる流儀なので、例によって配役は豪華。かぐや姫に求婚する連中がほとんどそっくりショーなのはご愛嬌(橋爪功、伊集院光など)。帝を無邪気な女たらしにあそこまで描いてクレームは来ないのかとまで(笑)。

最高に笑わせたのは田畑智子の女童。ある意味、かぐや姫を“救った”のはパタリロなルックスの彼女なのでした。

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