事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

今月の名言2011年4月号~伊集院静

2011-04-30 | 社会・経済

Ijuinimg01_2 先月号「震災のあとに」にもちょっと登場した伊集院静。

仙台在住の彼は、東日本大震災について積極的に発言をつづけている。含羞の人でもあったはずの彼が、この時期に初めて夏目雅子の死について、みずからを地獄から救った阿佐田哲也(色川武大)という存在について「いねむり先生」で著述したのも偶然だろうか。

「僕はね、色川さんに出会って(小説は)逆に『書けない』って思った。才能云々じゃなく、世の中には『書くべくして生まれている人』がいるんだ。そして僕はそうじゃないって。でも色川さんが亡くなってから、いろんな編集者に『伊集院をよろしく頼む』と言ってくれていたことが分かったのです。ただ編集者は僕にそれを言わなかった。当時の僕は先生の仕事を邪魔している愚図で、僕が書けるなんて誰も信じてなかったから(苦笑)」

「受け月」に入っている「夕空晴れて」という短篇をぜひ読んでみてほしい。試合に出られなくても、少年野球に通い続ける少年。野球が大好きだった亡き父親の想い出を共有する母子のキャッチボールに泣けない人はいないはず。あんなすばらしい小説が書ける人に伊集院は変貌したのであり、阿佐田哲也はそれを予知していたのだ(あるいは、少なくとも本人だけは書くことで救われると知っていたか)。

でも伊集院静には別の面も。先月酒田にやってきた居酒屋大全の太田和彦(久村ではみごとに酔ってたんですって)と大沢在昌の対談では……

大沢:「5人くらいいっぺんに殺したいんだけど、 やっぱり毒物かな」とか、質問してくる同業者はいますけど、電話で。

太田:すごい(笑)。

大沢:伊集院静さんですけどね。

……さすが伊集院

5月号~英才教育につづく

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「新宿遊牧民」 椎名誠著 講談社

2011-04-28 | 本と雑誌

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新宿遊牧民
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2009-10-09
わたしたちの世代にとって、椎名誠とはいったいなんだろう。

「哀愁の町に霧が降るのだ」に始まった著作は(一部のSFを含めても)すべて彼の自伝と言ってよかった。究極の私小説作家なのかも。

「新宿~」はその極北。構成をわざと粗くしてどんなネタもぶちこめるようにし、ストーリーも起伏を生じないようにしている。つまり、わざと“完結”しないようにしているのだ。

その背景には、彼の知人が次々に亡くなっていることもあるだろうか。「哀愁の~」の頃にはこんな展開になるとは思いもしなかった。椎名誠も、読者であるわたしも若かったのかな。

それにしてもおなじみ目黒孝二、沢野ひとし、そして椎名の私生活は破綻しまくっている。団塊の世代の代表でもある彼らにとって、家族ってなんだ。

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「街場の大学論 ウチダ式教育再生」 内田樹著 角川文庫

2011-04-27 | 受験・学校

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街場の大学論  ウチダ式教育再生 (角川文庫)
価格:¥ 660(税込)
発売日:2010-12-25
少子化の世において、大学の生き残る道は統合よりもダウンサイジングではないか、という主張に(むずかしいことだろうが)賛成。

特に地方において、その大学がなくなってしまうことの影響は考えるだにおそろしい。

酒田から公益大が、鶴岡から山大農学部が、そして米沢から同工学部がなくなったら?

ほぼ十年間にわたる原稿の集積であるため、内田の教員評価への姿勢がどんどん否定的になっているあたりが……たのもしい(笑)

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日本の警察~その39「函館水上警察」 高城高 東京創元社

2011-04-26 | 日本の警察

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函館水上警察 (創元推理文庫) 函館水上警察 (創元推理文庫)
価格:¥ 798(税込)
発売日:2011-06-29
その38「相棒 劇場版Ⅱ」はこちら

噂の、高城高(こうじょうこう)。ハードボイルドの書き手として嘱望されながら、新聞記者としての、職業人としての生活を優先させた人。定年後に新たなスタート……なんか、すごいですね。こんな人もいたんだあ。だからこの作品は高城にとって37年ぶりの新作。

明治の警察が、捕物帖の世界とにじんでいるあたりの味がいい。そんな捕物帖に、アイヌ(差別用語なんですかいまは)たちのラッコ猟がからんで……誰も目をつけなかった世界。かろうじて「ゴーリキー・パーク」における貂を想起させるかな。

登場人物のひとりが庄内弁をしゃべるんだけどこれがすばらしくネイティブ。知り合いでもいたのかしら。

現代より、もっと英語が必要とされた時代における日本人の順応性もうかがえてすばらしい。明治ものって、いいなあ。久しぶりに山田風太郎を読み返そうかしら。

その40「若様組まいる」につづく

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「Rのつく月には気をつけよう」 石持浅海著 祥伝社

2011-04-25 | ミステリ

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Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)
価格:¥ 600(税込)
発売日:2010-08-31
大学時代の飲み仲間である男女三人が、それぞれの知り合いをゲストに迎えて推理合戦。石持らしい“人を人とも思わない”強引な論理展開はあまり表に出ず、洒脱な恋愛ストーリーがちゃーんと成立しています。

それぞれの作品に、ストーリーにからんだお酒とおつまみが登場。こういうしばりはミステリらしくていい。シングルモルトで食べる生牡蠣なんてほんとにうまそうだなあ。Rのつかない月に食べる牡蠣がおいしいのが庄内ってとこなんですけどね。

実は最後の最後に「あー、あいかわらずやってるなあ」という叙述トリックまであって満足。お幸せに、おふたりさん

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「少年メリケンサック」(2009 東映)

2011-04-24 | 邦画

Punkaoiimg01 おそらく監督の宮藤官九郎にとって不本意であろうけれども、これって脚本をそのまま読んだ方が面白いんじゃないか?

峯田和伸(銀杏BOYZ)や遠藤ミチロウ(スターリン)など、山形県人としてはうれしいキャスティングありつつ(どんだけパンクな県なんだ)、佐藤浩市と宮崎あおいという、日本でこれ以上うまい役者はいないふたりを使いながら、どうももう一歩。

しかしセリフの面白さは例によって超一流だし、往年のパンクバンドをよみがえらせるのが、宮崎あおいの“ある行動”であるあたりのしかけもおみごと。でももう一歩。

この脚本で傑作にもっていくためには、もっとゆるやかな展開、もっと静かな瞬間を用意するべきだったと思う。それだとパンクにならない?そりゃそうだけどさあ。

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「つばくろ越え」 志水辰夫著 新潮社

2011-04-23 | 本と雑誌

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つばくろ越え
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2009-08-22
これはもう設定が抜群。

幕末、経済の変容によって“特別の品”を請け負うことを生業とする飛脚が登場。伝達することなく、緊急に、通しで顧客の元へ(Amazonのお急ぎ便みたいなもの?)。

となればその品はゲンナマであることが多く、だとすれば高度な職業倫理と、身を守る技、そしてなによりも健脚をもっていなければならない……

もちろん大嘘の設定だとは思う。でも、職業柄わけありな飛脚たちが登場し、シミタツらしいクールな筆致もあって泣かせるエンディングまで突っ走る。

そうなの。この飛脚たちにしても、「青に候と同様に卑しい街を行く孤高の騎士、私立探偵の時代劇版なのだ。やせ我慢のしかたなど、にくい。

なにより、運ばれた品を受け取った客の“それからの人生”が、飛脚たちに影響を与えずにいられないあたり、うなった。

続編を、すぐに本屋に発注しました。Amazonじゃないけど。

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「ヌードの夜」 (1993 ヘラルド・エース=日本ヘラルド)

2011-04-22 | 邦画

51adobiv2xl_2   石井隆の永遠のヒロイン、土屋名美の物語であると同時に、なんでも代行屋である紅次郎の初登場作。

紅次郎ものの17年ぶりの新作「愛は惜しみなく奪う」はまだ観ていないので予習の意味で。

わたしがこれまで観てきた名美役は

「天使のはらわた 赤い教室」(曽根中生)の水原ゆう紀

「赤い淫画」の泉じゅん

死んでもいいの大竹しのぶ

「夜がまた来る」の夏川結衣など。

この映画の余貴美子はそのどれにも負けていない。なにしろ盛大に脱いでくれていてうれしい。でまた身体がきれいなんだー。

シャブをやっている根津甚八のもとへ金を届けに来る名美は、ゲイである椎名桔平がそばにいるにもかかわらず足を開き、根津を受け入れる。その関係性がドラマの縦糸。ここに代行屋の竹中直人がからんできて……

ミステリとしても魅力たっぷり。ある人物がどの時点で死んだか、が妙味。意外なほど純愛の物語でもある。あ、名美の物語はいつもそうだったか。

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明細書を見ろ!2011年4月号~出勤簿のルール

2011-04-21 | 明細書を見ろ!(事務だより)

20110421img01 2011年3月号「危険な話」はこちら

新年度しょっぱなのネタは出勤簿。いまさらかよ、と思わずにきいてください。どんな日に押印すればいいのか、まだ確信をもてないでいる人もいるようなので。

わかりやすく言えば、山形県の考える出勤簿のコンセプトは以下のように表現できます。

【勤務を割り振られた日の勤務開始時刻に忽然とあらわれ、一瞬にして消えてしまう存在】

つまり、ウチの学校でいえば8時15分ジャストにしか職員室にないのが建前だとお考えください(ほんとに金庫にしまっちゃう学校もあるらしいのがおそろしい)。

ですから、朝一時間の年休をとる場合は押印しないし(8時15分にはいないので)、午前中は学校勤務で午後に出張だった場合はもちろん押印。

つまり何日か押すのをさぼって「あれ?この日はハンコを押していい日だっけ?」と思ったら、8時15分にどこにいたかを考えればいいのです。っていうか、とりあえず押せよ毎日

そう言いつつ、モチベーションを下げるようで恐縮ですが、出勤簿なんてレトロな存在はもう小中学校にしかありません。知事部局はとっくに端末処理に移行済み。まだまだ小中学校は昭和な状態がつづいています。

画像は「蛇にピアス」
原作:金原ひとみ 監督:蜷川幸雄
主演:吉高由里子、高良健吾

仕事の話だけだと(わたしが)息が詰まるので、毎月映画なども紹介します。なぜ今月この壮絶な作品を選んだかというと、事務室の新任である○○○さんが“出演”しているからです(エキストラで)。他にも「相棒」とかに出ているそうなので、興味のある方はきいてみるといいかも。

演出の蜷川は、世評とはぜんぜん違って灰皿を投げることもなく、いたって穏やかなおじさんだったとか。ちょっと残念。

2011年5月号~昇給のルールにつづく

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「青に候」 志水辰夫著 新潮社

2011-04-20 | 本と雑誌

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青に候 (新潮文庫) 青に候 (新潮文庫)
価格:¥ 660(税込)
発売日:2009-09-29
シミタツの時代劇第一弾。

なるほどー、もう完全にハードボイルドミステリなのだ。読者の半歩先を歩む(しかし若さが隠せない)主人公が探偵。ひんぱんな衣装替え、弱点としての船酔い、へらず口の数々……名探偵の資質十分。

敵対する藩内の派閥の間を、誰を信用していいのかわからないために慎重に動き回り、みずからの潔白を証明しようとする。しかしその動き自体が藩をゆるがすために……

ラストのどんでん返しもミステリとしての魅力がたっぷりつまっている。ハメットっぽい。
女性たちがこの主人公の青さを含めて愛してくれるあたり、みごとな孤高の騎士ぶり。いやはや堪能した。今年はシミタツをたっぷり楽しむとしよう。

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