ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

島マース

2015年10月23日 | 飲食:加工品・薬草・他

 命の元

 2014年7月18日付ガジ丸通信『テキトーな科学』で塩について語った。その中から少し抜粋すると、「先日、「塩は体に必要な物、精製塩は良くないが、海水から採れた塩は血圧を上げるものでは無い」といった内容のことがラジオから流れた。・・・Iさんから塩に関する本、食に関する本を数冊借りた。」ということで、その本を読んで、「塩は体に必要な物、自然塩は他のミネラルもたっぷり含まれている」ことを確認した。

 専売公社というのが私が若い頃にはあった。いつ頃まであったのか広辞苑を引く。
 専売公社の正式名称は日本専売公社で、「もと煙草・塩など国の専売事業の実施に当たった公共企業体。従来の政府直営事業を引き継ぎ1949年設立。85年4月、日本たばこ産業株式会社に改組。」とのこと。日本たばこ産業ってJTのことだ。
 JTは「国内における煙草の独占製造権」を持っているが、私が若い頃の専売公社はタバコだけでなく、塩も専売していた。塩の専売はいつ頃まで?と調べると、「97年まで塩も同社が専売」と広辞苑にあった。何故、専売していたか?は不明。たぶん、国の安定的財源確保のための専売。勝手に作られたら税金が取れないから。
 今回調べて知ったことだが、塩課という言葉がある。「中国で、塩に対する専売税。古くから行われ、国家の重要な財源であった」(広辞苑)のこと。塩税という言葉もあり、これは「塩の消費に対する租税。最も古い間接税といわれる」(〃)のこと。これらからも解る通り、塩は税金が取りやすいのだ。塩は人が生きるに必要なもの、つまり、塩を使わない国民はいないので安定的財源となるわけだ。
 もう一つついでに、「敵に塩を送る」という言い回しがある。「(上杉謙信が、塩不足に悩む宿敵武田信玄に塩を送って助けたという故事から)苦境にある敵を助ける」(〃)のこと。塩が無いと人は生きていけない、敵国だが、塩が無くて民衆が死んでしまってはあまりにも哀れと謙信さんは思ったのかもしれない。塩は命の元だ。
     
 東京暮らしをしていた大学時代の5年間(1年留年)は、たぶん専売公社の販売する精製塩(ほとんど塩化ナトリウムだけの塩)を私は使っていたが、それ以前、母や祖母が使う塩は島マース(マースは塩の沖縄語)であったと記憶している。大学を卒業して沖縄に帰ってからも概ね島マース、一人暮らしをするようになって私が買う塩は全て島マース、塩製造の自由化以降はあれこれ美味しい塩が増えて、私もあれこれ買っていた。
 母や祖母が使う島マースは、その銘柄がたいてい決まっていた。「ヨネマース」という名前。ビニール袋に入ったその表には赤色でヨネマースと書かれてある。懐かしさを感じるそのデザインは、おそらく昔から変わっていないのかもしれない。
 ヨネは与根と書き地名。沖縄島南部にある海(東シナ海)沿いの町、私もだいたいの場所は知っている。与根の塩田が『沖縄大百科』にあり、豊見城村(現在は市)与根は明治の初め頃から塩作りをしていたようだ。沖縄の伝統的塩と言える。
     
 先日、友人のOから借りた本『医者に殺されない47の心得』に「自然塩より精製塩の方が安心」とあったが、私なりに解釈すると、自然塩には不純物が多く含まれている。不純物とはミネラルなど体に良いものもあるが、海洋汚染の進んでいる昨今は体に悪い物質もある。なので、精製塩の方が安心。ということではないだろうか。
 「自然塩より精製塩の方が安心」と正直者の医者が言う。それでも私は、「うんにゃ、塩は命の元だ、命は自然の摂理で動いている、よって、自然塩が良い」と思い、今日も畑から収穫したオクラとシシトウにヨネマースを振って、焼いて酒の肴にした。
     

 記:2015.10.17 ガジ丸 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行